非正規公務員という問題――問われる公共サービスのあり方 (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708690

作品紹介・あらすじ

市町村合併による合理化、労働規制緩和の波のなか「働かない」と叩かれ「サービスが悪い」と批判され、しかし担うべき仕事は増えるばかりの公務員。なかでも非正規・有期の公務員は「官製ワーキングプア」と言われる。その実態とは?公務員法でも労働法でも守られないまま、国を地方を支える人びとの姿を追う。

感想・レビュー・書評

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  • 官製ワーキングプアとも呼ばれる非正規公務員の問題。
    人件費が減らされる一方で(特に生活支援の)仕事は増える。
    質を落とさず経費を減らすには「安い人」を雇いましょう。というのは民間企業に限ったことではなく、今や地方公務員の1/3以上は非正規だという。
    公務員バッシングで矢面に立たされるのは窓口の非正規なんだよね…。

    担任を持ち部活の顧問もつとめる在職14年の先生が半年契約の「臨時」教員だなんて誰が想像するだろう。
    ハローワークの職員が雇い止めされて明日は職探しだなんて、なんのブラックジョークだろう。
    図書館や看護師や保育士や「婦人相談員」(ケースワーカー)など、「女の仕事」が安く買いたたかれているのは言わずもがな。

    公立小中学校では、2004年から教職員給与の国庫負担が1/2から1/3になって、経済負担の増えた市町村が非正規の職員で乗り切ろうとする動きが加速したらしい。
    これもう子供にお金掛ける気はないってことでOK?
    子供の貧困をひどくさせる要因は、直接家庭にわたる金額の多寡だけじゃない。
    産めよ殖やせよの前に育てさせろよ。

    でも実はこの問題は不況の昨今にはじまったことではなく(加速してはいるけれど)、なんと1961年にはすでに「仕事内容は同じなのに待遇が非正規の公務員がいっぱいいるのはおかしい」という国会質問がなされているという。
    群発自殺のたびにとりざたされる「いじめ」対策なんかもそうだけど、こんなに何十年も変わらないのは変える気がないからだと思わざるを得ない。

    荒川区の、非正規の処遇を改善し、非正規の能力を活用するというのはわかるようなわからないような。
    非常勤にもポストを与えるとか、能力を評価するとか。
    西村太一郎区長は「人間はプライドを傷つけられたときに最も生産性が落ちます、だから私は非正規という不平等なネーミングを好まない」というけれど、不平等なのは名前じゃなくて待遇だ。
    非常勤の有能な人がいるのであらたなポジションをつくって「部長にも等しい係長だ」と伝えたら喜んでましたよとか言ってるけど、そんなに買ってるなら正規の部長にすればいい。
    非正規を「選んだ」人が評価もされるならまだしも、正規雇用してもらえない人を形だけ持ちあげたって正当な評価とはいえない。
    これは「妻が別れてくれないから結婚はできないけど本当に愛しているのは君なんだ」的な詭弁に見える。

  • 問題だなぁと思う。確かに。
    ただいつも思うのは、現場で非正規公務員とともに仕事をしている正規公務員は、どうしたらいいのかなぁ、ということ。
    なんとも言えない申し訳なさを抱えながら働いていくのかぁみたいな。

  • 前半に書かれた非正規公務員の実態は、不安定雇用であって正規職員と同じ責任を負わされる苦しみが具体的に語られていて、自分が考えていた以上に深刻な問題だと感じた。
    しかし、どのように解決するかという点では主張が弱く感じたし、荒川区長のインタビューが解決策を語っているようで結局は非正規職員の不安定雇用の改善に言及しておらず腑に落ちなかった。具体的にどのように行動すればよいかという展望が、この本を手にとった読者(非正規公務員当事者かもしれない、ともに働く正規職員、主婦、学生かもしれない)に見える結論であって欲しかった。

  • 荒川区の取り組み 西川太一郎荒川区長インタビュー
    福岡市立図書館の嘱託職員の雇い止めについてp59

  • 同じ著者の『非正規公務員』より具体例が多い普及バージョン。とっつきやすい。

  • 63ページしかない薄っぺらい本で、タイトルどおり、非正規公務員について述べている。第一章で述べられている教員の例では、企業で働くのと同様に、非正規と正規で同じような仕事をしていながら、給与等で差がある問題について書かれている。他の章も興味深い話。

  • 上林陽治『非正規公務員という問題 問われる公共サービスのあり方』岩波ブックレット、読了。その陣容が無駄の象徴と指摘されるものの安定した職種というイメージの地方公務員。しかしその内実は3人に1人が非正規の職員だという。本書は、市民の日常を支える雇用現場の不安定な実態を報告する。

    非正規雇用増大の背景は、地方財政の逼迫と行政サービスの増大。正規公務員を減員し、非正規で補っている。仕事内容は正規と同じ(若しくは以上)にもかかわらず、任用は1年以内でフルタイムで働いても年収200万に届かないのが殆どという。

    例えば、、、
    クラス担任を持ち、サッカー部の顧問ベテラン「臨時教員」。勤務経験も長く、学校から見れば安心で手放せない存在だし、生徒・保護者からすれば臨時/正規の差はない。しかし給与は正規教員の半分に満たないし、次年度任用決定は新年度が始まってから。

    人が足りないことが充分な公共サービス提供を阻害し、制度自身の信頼性を損なわせている。それは、公共サービスに対する不信が、公務員の信頼喪失に連動する負のスパイラルとなっている。本書の報告はこと公務員に限定される問題ではない。

  • 公務員にこんなに非正規が増えていたとは驚いたが、非正規を正規雇用に変えたらいいだけの話、非正規/正規という枠組みで考えたら解決する問題なのだろうか?荒川区の一般非常勤・主任非常勤・総括非常勤の試みは注目をあびるが、それでいいのだろうか。いったいぜんたい、何が問題なのだろうか?なにかが腑に落ちない。

  • 非正規職員の意欲を損なわず、能力を発揮できるように。

    多様な働き方。

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プロフィール

地方自治総合研究所研究員

「2015年 『非正規公務員の現在 深化する格差』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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