書籍文化の未来――電子本か印刷本か (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708737

作品紹介・あらすじ

電子化に翻弄される出版界。グーテンベルク以来の革命の正体とは何か。なぜアメリカで本の電子化が急速に進み、日本やヨーロッパではなかなか進まないのか。世界の出版状況を俯瞰し、「読む」とは何かを深く考え、書籍文化のあるべき姿を提言する。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルにあるように電子書籍と印刷本(紙の本)の行く末を考察した本。書籍文化の未来としては、一方が他方を押しのけるといった関係ではなくて、「双方しのぎを削る対決の果てに成り立つ、変動して已まないトレード・オフとしての共存」と筆者は主張している。

    筆者の議論の展開としては双方の利点と欠点を整理し、その中で重要だと思われるいくつかの論点について言及している。電子書籍の利点は検索容易性、相互参照可能性、更新可能性などであり、欠点は所在間の希薄さとリーダーの寿命である。一方、紙の本の利点は読みやすさの工夫(紙質、活字の余白、大きさ、行間など)、保存に適しているなどであり、欠点は販売のコストが高い(実店舗や倉庫が必要)などがある。
    筆者は、個人単位では利点と欠点を秤にかけ、使い方に対する思い入れの違いから、評価が異なると見解を示す一方で、社会での評価はトレードオフの関係が鍵を握るという。特に、価格という要素が書籍と読者の在り方を変化させていく。

    パピルスが本の主流だったときに羊皮紙が誕生したが、短期間で一気に取って代わられることなく、両者が共存した時代があった。その時代では、普段のちょっとしたメモなどには安価なパピルスを使い、重要な文書には高価な羊皮紙を使うなど使い分けが行われていた。しかし、全ての事象が共存するわけではない。例えば、活版印刷技術の発明によって、本を読むことができる人々が増え、本の種類も増えた。そうして大量出版を確立し、本の製造は手書きから印刷へとって代わられた。現在は、紙の本と電子の本が存在する時代。用途によって使い分けられるのかあるいは、新たな形態に移行するのか。本書は、そんなことを考える材料を提供してくれると思う。

  • 難解。電子書籍と印刷本はトレードオフとしての共存であると言う。そうなのか。言えることは、電子書籍は現段階においては印刷本と比して、決して便利なわけでも価値あるわけでもないと言うこと。それを前提として電子書籍の価値を拡大させていけるのか。ストックには印刷本、フローには電子書籍が適していると言うのはまさにそうなのでしょう。

  • サブタイトルに電子本か印刷本か、とあるように、その二軸に重きが置かれている、かと思いきや冒頭は海外出版事情であり、それを日本に投影してみると、日本の知的後退みたいなものが見えて、結構ブルー。
    amazonの登場も含めて、本をどう売るか。ミリオンセラーは、いわゆるステマがしかけられないと作れない、とか、ベストセラーは出版社を潤すが、中身次第で文化のあり方を変えるおそれがある、と。昨今のベストセラーを見ていると、ホント、そんな感じですね。
    後半は電子書籍リーダーの欠点をあげながらも、両者共存して進化しよう、みたいな。僕も電子的画面を「流し読み」しない派だったのです。どうも電子派は流し読みするからレベルが低い的に読めてしまう。短い文ですが、消化不良。

  • 電子本について
    <利点>
    ①入手の容易さ
    ②可搬性
    ③更新可能性
    ④規模
    ⑤検索容易性
    ⑥相互参照可能性
    ⑦多様な表現媒体の組み合わせが可能
    <欠点>
    ①熟読向きではないという社会的評価
    ②リーダーの非永久性

    使い分ければいいってことかしらね。

  • 外国の出版事情がよくわかる
    国籍とか!持ち株とか!意味わからなかったものー

  • 2013 9/15読了。Amazonで購入。
    タイトルから買わないとなあ、と思い買ったもののそのままになっていた本。
    電子書籍まわりの議論について、ほとんどは既知の内容ではありつつある程度まとまってはいるので、事実を書いた部分を確認するには使えるかも。

  • 「俺は電子書籍きらい」って感じが伝わる。
    ・電子書籍は紙媒体に比べ80パーセントの速度でしか読めない
    →単に慣れの問題。どの年代で調査したのか?デジタルネイティブにとってはスクロールで読む方が速いかもしれない

    アメリカの話や学術書の話など、話が飛び、何を言いたいのかわからない。数字だけ並べられても困る。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/789918

  • 電子本と印刷本の違いが分かった。

  • 日本でも2012年にAMAZONからキンドルが発売され話題になりましたがアメリカでは2007年に世界で最初に販売され電子書籍が書籍販売に占める割合はアメリカ・イギリスが13%、ドイツが1%、日本はデータ無し(2011年)という状況で2013年の現在もそんなに事情が変わっていないのでは無いでしょうか、電子書籍は携帯性に優れており確かに便利ですがリーダーの性能と価格やソフト(本)の流通量と価格がまだまだ成熟しておらず爆発的な普及には程遠い気がします。また感覚の問題として所有感が無い事も読書家に受け入れられない点と思われます。

     消費超大国であるアメリカの状況次第ですが現在同国の出版大手の殆どはドイツ・イギリス・オーストリア・フランスの大手メディア会社に買収されており低益率の冊子体販売に同国経営陣は見切りを付けている状況下で欧州のメディア会社は最大のマーケット、アメリカでの電子書籍の販売戦略をどう考えているのか興味の湧くところですが、アメリカの年間書籍販売額の約51%はAMAZON社が販売しており電子書籍の今後は同社と出版大手の取り組み次第との分析です。

     紙の本は読みやすく愛着があり蔵書するという満足感が得られますが一方で購入即時性や携帯性と保管場所等を考えると電子書籍のメリットも無視出来ません。私は紙派ですが出張時や旅行等にはキンドルも持参しますがデータを所有しているのは実感が無く気に入った本はやはり冊子体を購入してしまいます。

  • 著者の赤木昭夫は、1932,年生まれ。本ブックレットは、2013/06/05出版。

    p.8に、「(ランダムハウスの ; 引用者注)大幅な増収増益は、(中略)ヴィンテージが出した、『フィフティ・シェィズ・オブ・グレー(グレーは人名)』という「イラチカ(erotica)」が、世界で400万部も売れたためです。」とある。

    日本語訳は、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」だが、表記が異なるのはやむを得ないのか。早川書房による翻訳は、2012/11/01であり、岩波書店の校正ミスである。

    「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」は、BDSMを題材としていることや、同意という法的概念をかなり執念深く描写していることに全く触れていない。著者(赤木昭夫)は、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を全く読んでいないのではないかとの疑問が残る。

    電子本において、買いやすい為か、イラチカ(erotica)がよく売れるとの記述・分析はない。エロビデオが、ビデオ普及の原動力となったように、エロは新技術を普及されるとの観点を著者は持っていないのだろう。

    著者の考える、価値の低い書籍が大量に売れた事例として挙げたのだろうが、(読者にとってよりわかりやすい)日本国内の事例を挙げない点は、腰が引けていると言えよう。

  • 出版界の動きについて海外の動向も含めた情報が掲載されています。最終章は書名の副題にある電子本と印刷本の意義について、著者の体験も含め、示唆に富んだ内容が書かれています。最後だけはちょっと難しい話になっています。

  • 【由来】
    ・図書館の岩波アラート

    【期待したもの】
    ・「「読む」とは何かを深く考え」という部分に惹かれた。

    【要約】


    【ノート】

  • 書籍について数冊借りたうちのひとつ
    0 総記 (情報学、図書)
    岩波ブックレット 873
    63ページの薄さ


    メモ

    ・フランクフルトブックフェアについて
    出版、マルチメディアの国際見本市である。
    売買、技術交換が行われる交流の場。

    2009年中国はゲストオブオナーであった。
    中国の展示数はアジアで1位。
    習近平の文化戦略、貿易拡大。
    イギリスの本作りは中国が積極的に受注。
    中国は英語圏の翻訳も多い。

    ・書籍単体だと収益性が低い
    63ヶ国で展開するドイツの複合企業ベルテルスマンの例など。ミックスして売ると収益性は上がるが、、、寡占は問題あり。



  • * 購入日20170414
    * Amazonで購入した。

  • グローバル化の波が押し寄せる現代において、出版業界もまた、例に漏れず海外からの影響を受けてきた。いまでは日本でも一般的となったアメリカの通販サイト「アマゾン」が1995年に本のネット販売を開始したことに始まり、現代の書籍文化は様々な変容を遂げてきた。最大の変革とも言えるのが、本の電子化である。出版不況とも言われる世の中で、冊子体と電子書籍はこの先共存していけるのか。書店と出版社が生き残るにはどうすればいいのか。本書は、書籍文化の未来について、問題を提起し、問いかけている。ふだんネットで本を注文している人、電子書籍を読んでいる人、本を愛する全ての人にぜひ読んでもらいたい一冊。小冊子となっており、空き時間に手軽に読める分量であることも魅力。

  • 4〜5

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