福島から問う教育と命 (岩波ブックレット)

  • 岩波書店 (2013年8月3日発売)
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  • レビュー :5
  • Amazon.co.jp ・本 (72ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708799

作品紹介・あらすじ

東京電力福島第一原発の事故は、福島県の学校や子どもたちに深刻な影響を及ぼした。学校の臨時移転・休業、生徒たちの避難や転校、放射能への不安と向き合う日常…。こうした状況を子どもたちはどう受け止めているのか。そして、いま教育は何をすべきか。『朝日新聞』「声」などへの投稿で話題を呼んだ福島の高校教諭と、丹念に現地調査を続ける教育学者が根本から問いかける。

福島から問う教育と命 (岩波ブックレット)の感想・レビュー・書評

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  • この本は二部構成になっており、第一部は福島県内の高校教師であり俳人の中村先生、第二部は震災に関わる具体的なデータをもとに教育学者の大森先生が執筆している。
    臨場感あふれる中村先生の文章と、客観的なデータをあわせて読むことによって、テレビやネットからでは知ることのできなかった震災後の福島の教育現場のことを、非常に立体的に知ることができた。
    避難時の混乱、放射線量について大人たちが不安を抱く一方で砂埃をあげて屋外の部活を楽しむ子供達の無邪気さ、「震災について何も言わない方がいい」という文芸部の生徒たちの暗黙の認識、「もう一回(原発が)ドカンとなっちまった方がすっきりする」という生徒の叫び。どれも、息をのむような事実だった。

    震災にまつわる出来事から作られた中村先生の短歌がいくつか載っている。
    限定された文字数だからこそ、その中に込められた想いや現状がはち切れそうなほどで、胸に迫った。
    また、このような一生に一度あるかないかの大惨事に巻き込まれ、やはりこれを文学として表さないわけにはいけないのではないか、という中村先生の考えは力強いものだった。文学だけでなく芸術も含めて、何かを生み出す者の性を感じた。

    ときに迷いながらも生徒とともに歩んでいこうとするこのような先生が自分の周りにいてくれたらとても嬉しいだろうと思う。

  • 東日本大震災から教育のあり方を問い直すものだが、政府の震災への対応や原発被害への対応の不備を教育者視点から知ることができた。
    また、教育のあり方として考える力、批判する力、自粛という名の思考停止に対して疑問を投げかけているのが特徴的だった。
    これを読んで自粛ムードというものに対して懐疑的になった。ある程度は必要だけど、それを超えるとただの思考停止やなんの思いやりにもなっていないことになる。その見極めをどう見るか。何ヶ月経ったら自粛ムードを辞めるといった明確な基準を作れるようなものではないから皆手探りになる。最初にそこから外れた人はまず批判にさらされるんだろう。

  • 福島からの、声。
    高校の先生の立場から、高校生の子どもたちの声を拾い上げて、伝えてくださっている一冊。

    声にならない声や、声にできない声は、今もなおあられるだろうと想像します。

    福島に住む方々の心の平穏を祈らずにはいられなくなる内容でした。

  • あの日、2011年5月27日、モスバーガーのモーニングを食べながら、たまたま見かけた朝日新聞の声欄に載っていた投稿に思う処があり、その数日後に全文と感想を入れてブログに書いたところ、何処かのSNSで拡散されたらしく、私のブログ史上最大のアクセス(約7万アクセス、そしてコメント数も95に上った)が来たことがあった。それが「福島の高校生の絶望聞いて」だった。

    ブログでは投稿者の名前は公開しなかったが、新聞には本名も定時制高校教師であることも載っている以上、その後の中村晋さんの進退に何か影響があるのではないか、とその反響の大きさを見て先ず思った(何のおとがめも無かったようだが、そのあと直ぐあとに予定していた全日制に移動したようだ)。その次には、謂れのない攻撃があるのではないかと怖れた。しかし、そのこともこの本には全く触れられていない。そのことを知りたくて、この本を手にとったのだが、少し拍子抜けしてしまった。

    その代わり、中村さんが単なる思いつきで投稿したのではなく、しっかり生徒に向き合った結果の投稿だったことを知り、嬉しくなった。

    先のブログでも書いたが、高校生の問いかけは物事の本質を突いており、さらに言えば未だなんの解決も見ていないと、私は思う。中村さんも「生徒たちよりも、大人たちの方がより深刻な失語状態だったと思う」(19p)と書いている。

    しかし、物事はまだら模様に進む。全日制の生徒の反応は鈍い。顧問をしていた文芸部の生徒は震災を表現したくないというのだ。ある生徒は云う。「わざわざ、他人の傷口を広げるようなことをして何になるんですか?」中村さんは(おそらく)ぐっと堪えて、今も一人ひとりの生徒に寄り添いながら成長の手助けをし、お互い分かち合えるような学びの場を作っているのだろう。

    ブックレットは、もう半分は大学の教育学准教授の大森直樹氏のデータによる、放射能の生徒に与える影響の考察である。SPEEDI活用の問題点や、除染の実態、被曝基準の問題点、等々を列挙している。しかし、この小さな冊子では十分ではないような気がした。

    ともかく、あの時の投稿の背景と、その後の推移が分かって良かった。

    2016年2月16日読了

  • 「福島の放射線量が高いのに避難区域にされない理由は、高速道路や新幹線が止まって経済が立ち行かなくなるからでしょう?」という一言を「定時制高校の生徒の言葉」として取り上げ、再三強調しているあたりに悪意を感じる。

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