〈男文化〉よ、さらば――植民地、戦争、原発を語る (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708829

作品紹介・あらすじ

「震災を機に社会のあり方が見直されるだろうと思ったのに、こだわっている人はおかしいという風になってきた」「なら私たちはおかしい人だね」。旧日本植民地に育った91歳・反骨の画家と、旧植民地の末裔である在日三世が、歩んだ道、不良品たる古今の"男文化"の罪悪、3・11以降の社会の空気について縦横に語り合う。

感想・レビュー・書評

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  • 境界を越え、視点を変えることの重要性が語られる。1921年生まれの画家、富山妙子さんの人生が興味深い対談集。

  •  在日三世で人材育成コンサルタントして活躍する辛淑玉(シン・スゴ)氏と、戦時中の少女時代を大連・ハルビンで過ごし、戦後は画家として炭鉱や鉱山労働の状況、「慰安婦」問題、自分の戦争体験、3.11震災などについての作品(絵画)を発表している富山妙子(とやま・たえこ)氏との対談本で、富山氏に対し、辛氏が一つ一つ質問するという形式で話が展開されています。
     特に自分は幼少時代、神戸から大連に行くために列車へ乗った際、間違えて乗ってきた底辺の中国人労働者である苦力に対し、車内にいた日本人小学生に「くさい」と言われて部屋から追い出された状況に驚いたことや、また日中戦争後(193年)の女学校時代には学校内の教師らもリベラル派と戦争協力派に別れ、協力派の教師はモノが無くなるとすぐに朝鮮人女学生たちを残らせたちをしていたということが心に残っています。その一方で中学校の教員、満鉄調査部、新聞社、図書館の職員の中には軍国主義やファシズムに抵抗する者たちが存在したと言うという話は興味深かったです。その中で、女学校時代に朝鮮人学生の学力が下がらないように課外授業をしていたというリベラル派の国語教師の話は心に残っています。
     また、家庭科の先生から「植民地育ちのみなさまは、自由に育っていらっしゃる。これじゃあ、内地の殿方はお嫁にもらってはくださいませんよ」と言われて憤慨した話や、ノーベル文学賞作家で宣教師の子どもとして中国で育ったパールバックの自伝を読み、白人なのに中国人の側に立つ彼女の姿勢に共鳴する一方、植民者である日本人を憎むようになったという話は勉強になりました。正直、一握りだと思いますが、富山氏の体験から日本国内よりも「満州国」・大陸の方が自由な状況であったということを改めて感じました。戦後に韓国で起きた光州事件や日本の東日本大震災の状況についてどう思ったかなど、戦争体験以外の話も勉強になりました。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。在日3世(韓国籍)人材育成コンサルタント。
 1985年、人材育成会社「香科舎」を設立。1995年、人材育成技術研究所開設。企業内研修、インストラクターの養成、マニュアル制作などを行うかたわら、webを使ったe-ラーニング「管理職検定」をプロデュース。NTVの『世界一受けたい授業』やNHKの『時論公論』などに出演し、執筆、講演も多数こなす。明治大学政治経済学部客員教授、カリフォルニア州立サンディエゴ校客員研究員、新聞労連検証会議委員、東京都企画政策室委員、かながわ人権推進懇話会委員などをつとめる。2003年、第15回多田謡子反権力人権賞受賞。
 主な著書に「怒りの方法」「悪あがきのすすめ」(岩波新書)「差別と日本人」(角川oneテーマ21)「せっちゃんのごちそう」(NHK出版)「鬼哭啾啾」(解放出版)「辛淑玉のアングル」(ちいさいなかま)「辛淑玉的現代にっぽん考──たんこぶ事始め」「辛淑玉的危ういニッポン考──たんこぶ事始めⅡ」(七つ森書館)「放射の時代を生きる3つのアクション」(伴英幸監修、七つ森書館)他多数。

「2013年 『その一言が言えない、このニッポン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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