社会を結びなおす――教育・仕事・家族の連携へ (岩波ブックレット)

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レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (56ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708997

作品紹介・あらすじ

日本社会に露呈している"ほころび"とはどのようなものか。どうやって軌道修正をしていけばよいのか。教育・仕事・家族という三つの領域がきわめて強固で一方向的な矢印で結合し、循環していた従来の日本的社会モデルが破綻するまでのプロセスと要因を分析し、その理解に基づいて新しい社会像を具体的に描きだす。

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず熱い本田先生による憂国の書。
    「社会の維持さえ難しくなるような危機はもう目の前に迫っている(p4)」で始まり、「多くの人々が「このままではだめだ」という感覚を生々しく抱く度合いが高まっている(p52)」で終わっている。熱いけれど分析は冷静で極めてわかりやすい。
    戦後日本の3区分で「戦後日本型循環モデル」がいかに成立・普及し、破綻したか、2つの図と4つの環境要因で明快に説明されている。そして「新たな社会モデル」では従来モデルにはない逆向きの矢印や仕事・教育・家族の3領域を覆う「布団」が示されている。
    「このままではだめだ」と思う1人として、それぞれの領域での関わりを意識していきたい。

  • 高度成長を促進した要因がもう日本ではなくなったとの指摘

  • 戦後の日本を、短い文章で論理的にわかりやすく解説されている。共感を抱きながらも、これまでの戦後型循環モデルの頑健さは感じながら、新しい日本モデルは理想論的過ぎた。きっと、これは新しいモデルを皆で考えるべきという余地を与えたものだという解釈をした。

  • 非常に薄い本でありながら、戦後日本の社会情勢をわかりやすくまとめてある本。
    戦後、教育・仕事・家族の3領域で役割ができあがり、それを基に、日本は発展してきた。

    戦後からオイルショックとバブルを境目として、①高度成長期、②安定成長期、③低成長期に分けられる。団塊世代は①に生まれ、団塊ジュニア世代は②の直前で生まれ、経済が回っていた時代だった。

    著者がいう、「戦後日本型循環モデル」とは仕事で男性が賃金を稼ぎ、それを家庭に入れ女性がやりくりして生活し、女性が教育意欲をもち、教育に投資し、子供は学校で教育を受け、卒業すると入社し、仕事で賃金を稼ぐ・・・というもの。
    様々な要因が重なり、3領域の近代化が同時に起きた。

    日本が成長している時期は、可能であったモデルだが、現在ではそれが低成長期では崩れている。賃金の格差、それによる教育投資の格差、大学を卒業しても安定した職につけない。政府としても財源不足という理由からセーフティネットを切り下げる状態にある。

    これからの新たな社会モデルとして、著者は「双方向性」の連携を提唱している。
    性別分業をやめ、仕事と家庭の両立であるワークライフバランスを考えることや、教育から家庭に、子供の背景や家族のサポートをすること、仕事から教育へのリカレント教育等である。

    財源の問題は常にあるが、やはり高所得者から低所得者に、再配分することが原則としている。

  • 361.6-ホン  300379583

  • 教育・仕事・家族のそれぞれのフィールドでの議論は活発ですが、その大切な3つの場を「結びなおす」というのは、世界中で求められている課題かなと思います。ただ、その実現にはどこから手をつけていけばいいのか?自分でも考え、小さなところから動いてていきたいポイントです。

  • 問題へのシステムシンキング適用が必須の課題。
    財源ばかりの政策では無駄ばかりが増えていく。
    家庭・教育機関・企業を三位一体とし立て直す。
    一方通行のスパイラルアップ方式は好調が基盤。
    ひとつでも不調感染すれば立ち上がれなくなる。
    三つが相互に補助し調整し合う理論に基づいた、
    タイムラグのない、新たなパラダイムでの施策。
    変わることへの恐れよりも希望を抱かせるもの。
    共有協同による「溜め」を持つ自律のシステム。
    いつも万民に都合のよい社会はありえなくとも、
    まとまりとつながりのある社会に生きていたい。

  • 短期的には、著者が結論として示した社会モデルの実現は、相場的に厳しいと感じた。現状より少しでもマシな社会生活を実感できるよう、日々を実直に生きることくらいしか当座の方策が思いつかなかった。

    大学改革については、(モデルの図における)「その矢印の方が自己目的化してしまい、三つの社会領域それぞれの本質的な存在理由が空洞化」(p.22)しているのではないかと真っ先に思った。

    モデルの図は以下にもあり。
    http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~c-kodoka/symp100911/symp20100911%20s3%20honda.pdf

  • 戦後日本社会のモデル化は的確。目指すべき社会像も共感できる。

    しかし、そのための処方箋がリベラルに過ぎる。持てるものに、痛みを強いるのは至難だからだ。持てざるものの存在は、持てるものの保守化を促すだけで、より社会的な視点で動くようにはできないからだ。

  • 久々にコストパフォーマンスの高い岩波ブックレットに出合うことができました。

    寸鉄人を刺すが如く、戦後日本の社会変動を端的にモデリングしてその問題点を描く手法は見事。

    最後半には苛烈な前世代批判まで飛び出していて、これが新世代のエトスとなることに若干の不安を感じつつも、でもそれこそがリアルだなという思いもありました。

    日本について何かを議論するなら、作者の意見に賛同するかどうかは問わずとも、まずここであぶり出された問題系に向き合うしかない。それだけは言えるんだろうと思います。

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プロフィール

東京大学大学院教育学研究科教授

本田由紀の作品

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