われ反抗す、ゆえにわれら在り――カミュ『ペスト』を読む (岩波ブックレット)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (72ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709017

作品紹介・あらすじ

アルベール・カミュの『ペスト』(1947年)は、「不条理に人間としてどう立ち向かうか」を描いた小説として、時代を越えて読み継がれている。特に、3.11を経験し、戦後民主主義を否定する政治的な動きが広がる現在の日本社会において、この作品を読む意義は大きい。不条理に反抗する力とは。人間の可能性とは。カミュの思想も紹介しながら、根源から読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 徹底的に、でも注意深く、信仰の世界から人生を切り離して見つめたカミュ。

    不条理な災いが圧倒的な力を持って社会を襲う時、無力な人間は神の沈黙を意識せざるを得ない。

    そしてその沈黙を認識できる人にとって、キリスト教的な救済などなんの役にも立たなくなってしまう。

    わたしも信仰を持っている。でもわかる。今よりもっと封建的で、雁字搦めのカトリックの世界で、信仰を持つこと自体が記号化し実体を保てなくなっていたことを。

    不条理が目の前に立ちはだかる時、神だけを盲目的に頼る信仰は破綻する。実際に多くの疫病は人間の手による努力無しに解決できたのではない。
    日本では信仰を持った上でカミュを読むなんてなかなかないかもしれないけど、わたしはとても個人的な深い興味とともに彼の作品や研究書を読んでいる。

  • <学生コメント>

  • 最後の第4章のみ、かろうじて読むに値する。『 ペスト』ではなく、ここではカミュとボンヘッファーの親近性を論じる。

    ・手の届く隣人が超越的なものなのだ。:ボンヘッファー
    ・反抗においては、人間は他人のなかへ、自己を超越させる:カミュ
    ・われ反抗す、ゆえにわれら在り:カミュ

  • 1949年著の「ペスト」が、今、実に現代性を備えている。東日本大震災、エボラ熱災害、戦争下の悲惨な事態が起こっており、その中での人間性の追究した作品は、今世界で起こっている現実かも知れない。前半は「ペスト」の紹介。リウー、タル-、パヌルー神父、ランベールなど主要人物の生き方は現在の人たちと重なる。1940年代の北アフリカを舞台とし、虚構の世界であることが、思想的な書物としての完成度を高めているように思う。「この世の不条理、神の沈黙」を認めるのかというテーマは「カラマーゾフ」と同じだ。その中で不可知論者であるリウーの使命感・行動力がどこから出てくるのか。その解題に興味を惹かれる。後半ではボンヘッファー牧師の実に魅力的な言葉が引用されている。「神はすべてのものから、最悪のものからさえも、善きものを生まれさせることができ、またそれを望まれるということを私は信じる。そのため神は、すべてのことを自らにとって益となるように役立たせる人間を必要とされる。」神の存在を巡って立場を異にする立場のカミュとボンヘッファーの中に「行動=抵抗」という共通点があることを著者は示している。

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著者プロフィール

1928年高知県生まれ。東京大学法学部卒業。東北大学名誉教授。主な著書は『西ドイツの精神構造』(学士院賞)、『政治と宗教倫理』『ナチ・ドイツの精神構造』『現代日本の民主主義』(吉野作造賞)、『非武装国民抵抗の思想』『キリスト教と笑い』、『ナチ・ドイツと言語』『聖書の信仰』全7巻、『国家と宗教』『カール・バルト』『ボンヘッファー』(以上、岩波書店)、『宮田光雄思想史論集』全8巻(創文社)、『十字架とハーケンクロイツ』『権威と服従』『《放蕩息子》の精神史』(新教出版社)ほか多数。

「2022年 『良き力に不思議に守られて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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