「定常経済」は可能だ! (岩波ブックレット)

制作 : 枝廣 淳子 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 40
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709147

作品紹介・あらすじ

枯渇する資源、激変し悪化する環境、格差や貧困の拡大…。「成長」崇拝は私たちに持続不可能な社会をもたらした。いま人類は、「経済のあるべき姿」の再考を迫られている。なぜ現在の「成長経済」ではダメなのか、「定常経済」とは何か、どのように移行していけばよいのか。2014年の「ブループラネット賞」受賞者でもある環境経済学の大家が、日本の環境ジャーナリストの問いに平易に答える、第一級の「定常経済」入門。

感想・レビュー・書評

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  • 付箋をペタペタ貼りながら、そうだよねーそうだよそうだよ、と共感を持って読み進めていたが、Ⅲ章になって少々違和感が発生。広告を「『必要ないものを、持ってもいないお金で、知りもしない人に対する見栄のために買う』のがよいと人々を説得するための」支出とするのは、どうなのか。その定義がまず違うのでは?人口数を安定させるのに「出生数+移入者数=死亡者数+移出者数」とするって、そりゃそうかもしれないけど、出生数や死亡数を管理するの?どうやって?結局移民を制限するってこと?…などなど、どうもね、最終的には腑に落ちずに終わった。

  • ウルトラセブンの言葉を借りれば、血を吐きながら続ける悲しいマラソンに終止符を打とう、ということか。
    無闇な成長で自らの首を絞めるよりは、発展や成熟に変えて行くべき。

  • ジョン・スチュアート・ミル
    「資本や人口が定常状態にあってもそれが人間の進歩
     向上をも停止状態におくことを意味しないのは言う
     までもない。あらゆる種類の精神的教養や道徳的
     社会的進歩の余地は従来と変わらず大いにあり
     「生活の技術」を改善する余地は大きい。
     したがって人類の心が経済的成功の術策の熱中する
     ことがなくなればいっそう向上するだろう」

  • 我々の世界が「空いている世界」から「いっぱいの世界」にシフトした今、経済拡大に頼った問題解決は不可能。

    「効率を上げて総量を減らす」ではなく、「総量を減らし、効率改善する」というのがエネルギーや温暖化に関する政策の設計原則。

    限界費用と限界便益が等しくなる時点でGDPの成長を止めるべき。

    幸福度の自己評価は、一人あたりのGDPが年二万ドルまでは一人あたりGDPと共に上昇し、そこで止まる。幸福度にとって、実質所得の絶対額は充足ラインまでは重要だが、それを超えると自分自身のアイデンティティを構成する人間関係の質の影響が大きくなる。

    量的な増加ではなく、質的な向上へ。成長(Growth)から発展(development)。

    今の我々のエコロジカルフットプリントは 1.5。つまり地球が1.5個必要。これを1以下に下げる事。

    持続可能性の3条件
    1. 「再生可能な資源」の持続可能な利用速度は、その資源の再生速度を超えてはならない。
    2. 「再生不可能な資源」の持続可能な利用速度は、再生可能な資源を持続可能なペースで利用する事で代用できる速度を超えてはならない。
    3. 「汚染物質」の持続可能な排出速度は、環境がその汚染物質を循環し、吸収し、無害化できる速度を上回ってはならない。

    未来世代にとっての「必要なもの」は、現世代の「ぜいたくなもの」よりも上位に来るべき。

    「社会が手段(経済成長と個々の利益の追求)ではなく、目的(幸福)に注力できる日はそれほど遠くない。」John Maynard Keynes

    効率改善の限界に達した後も経済を成長させようとするならば、エネルギーを含む自然資本の使用量を増やすしかない。そして、自然資本には限りがある。

    働く人が自ら出資し、運営し、働くワーカーズコレクティブが増えている。

    これからは、人手をかけても資源の消費量を減らす事、つまり、労働生産性よりも資源生産性を重視する時代になる。

    経済は、「独立して交換可能な業界がゆるやかに集合しているもの」としてではなく、「統合された全体」として成長する。

    経済成長が失敗する2つの理由。
    1.「いっぱいの世界」でプラスの成長が不経済になる。
    2. 物理的な限界を超えて膨らんだ金融バブルの崩壊によるマイナス成長がじきに自己破壊的になる。

    定常経済にシフトする為の10政策
    基本的な資源に対して「キャップアンドトレード」の仕組みを設ける。
    環境税の課税基盤を「労働と資本」から「廃棄物」へとシフトする。
    最低所得と最高所得の格差を制限する。(米国の行政、軍、大学での格差は、20:1。企業では500:1。日本は15:1。他先進国は25:1。豊かな人々と貧しい人々は殆ど別の生物種であるかのように、共通の経験や関心がなくなる。)
    就業日、週、年の長さを縛らず、パートや個人の仕事の選択肢を増やす。
    国際貿易を規制し、自由貿易、自由な資本の移動性、グローバル化を制限する。
    WTO、世銀、IMFを降格させる
    民間銀行が中央銀行に預け入れる準備預金の準備率を100%に引き上げる。
    希少なものを希少でないかのように、希少ではないものを希少であるかのように扱うのをやめる。
    人口を安定させ、「出生数+移入者数」=「死亡者数+移出者数」にする。
    GDPを「費用勘定」と「便益勘定」に分ける。

    我々一人一人が「成長しない地球に暮らしている」事を再認識し、未来世代も含めて、持続可能で本当に幸せな暮らしとは?経済とは?社会とは?をじっくり考える事。

  • 不毛な「成長」神話をつきすすむ一資本主義人として読む。読み終えてなお、スループットの減少のために自らが何をすればいいのか浮かばず、改めて自分の21世紀性に感じ入る。新幹線に乗りながら。

    この読後感には『里山資本主義』を読み終えたときと似たものがある。果たしてこの世界は来たり得るのであろうか。遠すぎて見えない、霞の向こうの話と聞こえる。

    いかに自らに引き付けていくか、これからの身体活動が必要になってこよう。

  • 経済の、経済による、経済のための発展なのか。
    どこまでも成長しようとするのは勝負事の考え。
    「定常」とは冷えも沸騰もない恒温を意味する。
    そこで人ははじめて互いにまともに生きられる。
    恐竜の如く成長が止まらないならば繁栄は無理。
    要はバランスを保つ力とエネルギーの循環再生。

  • 確かに「いっぱいの世界」になってしまっている。それを前提に成果指標を見直すことは大切。まだまだ人間の知恵で解決していけることはある。

  • 元世銀のエコノミストで、経済学者のハーマン・デイリー氏が主張する「定常経済」について、枝廣淳子氏がインタビューしたのをブックレットにしたもの。
    定常経済とは、成長に必要な自然資本の利用が限界に達しつつある現在、人類の持続可能性のためには、成長神話ではなく、現状に見合った仕組みに変更すべきであるといったもの。
    経済成長にも損益分岐点のようなものがあり、一定の限界を超えると、成長のためのコスト(自然資本の消費)が成長のメリットを超えてしまい、不経済な成長となってしまう。先進国では、現在その状態にある。
    そこで、可能な限り低いレベルのコストで維持できるシステムに変えていかないといけない。
    例えば、地球は閉じたシステムなので、そこから得られる物質もエネルギーにも限度がある。それらの資源を再生産が可能な状態で利用するためには、キャップアンドトレードのような仕組みを活用する必要がある。また他にも、ワークシェアリングや、民間銀行の準備預金の準備率を100%にして公共財の投資を増やす、最高所得と最低所得の幅を制限する、など、ちょっと現実味に欠ける向きもあるが、いくつかの政策も提示している。氏によると、限界が露呈している中で、成長神話にしがみついてこの先行くことを考えると、十分あり得る代替案だとのこと。
    少子高齢化や失われた20年といわれるように、ここで話題になっている成長の限界については、日本が先頭に立っているのかもしれない。そこで、日本がどのように、これらの問題にうまく対応し、解決できるかは、ある意味日本のチャンスとして存在しているのかもしれない。そのためには、客観的な現状認識と、多くの人の考え方が変わる必要があると感じた。

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