いま、「靖国」を問う意味 (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709291

作品紹介・あらすじ

「私は戦争に行きたくないし、靖国神社に祀られたくない」。安倍首相の靖国参拝を問う訴訟の原告になった20代の若者は、法廷でそう陳述した。「戦争のできる国」へと突き進む安倍政権のもと、靖国神社に対する社会の意識が問われている。なぜ国家は戦死者を追悼しようとするのか。「尊い犠牲」とは何か。死者や遺族らの自己決定権は。国家による追悼に抗う人びとを追いながら、「靖国」の問題性を根源から考える。

感想・レビュー・書評

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  • 靖国合祀を拒否する遺族による違憲訴訟、首相の参拝を違憲とする訴訟。これに異議を唱えることが日本では反国民のような批判の目で見られる。訴訟に関わる多くの方々へのインタビューにより熱い声を集めたもの。キリスト教徒だけではなく、仏教徒・僧侶なども同じ気持ちの人が多いということは励まされた。数々の問題提起は地裁レベルでは何度も違憲とされてきたが・・・。集団自衛権を正当化する安倍政権の下で、戦後初めて生まれるであろう「戦死者」を顕彰する「靖国」の位置づけを急ぐ意図が働くのは当然だろう。自民党・佐藤正久参議員の言葉が引用されている。沖縄の摩文仁丘の「平和の礎」は理想的な環境だと思ったが、やはり加害者と被害者が同居しているとの批判があるらしい。井上ひさしの現憲法への感想が愉快。「世界の奇跡みたいな時間の十字路のところでぽろっと出た理想の強制力」イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」が紹介されている。

  • 集団的自衛権の行使容認とそれに付随する安保法案の是非が問われている今、「靖国」へと目を向ける。
    全体で約80ページほどであり、靖国問題への導入としては良い一冊。

    戦死者が靖国に祀られることについて、快く思わない遺族たちについて主に書かれている。彼らは戦死した家族が、望まぬ出兵をしたかもしれないし、時には不本意な死に方をしたにもかかわらず、国には「尊い犠牲」として扱われていることに苦しいんでいるという。
    遺族たちのこういう気持ちには賛同する。日本は最早お国のために死ぬことを良いと信じこませ強いるような極端な国粋主義国家では無いのだから、こういった反発はもっともだろう。合祀取り下げに応じるべきというのは賛成できる。

    ただし、筆者はこれらの事例を根拠として、戦死者は「国に弔われる必要など無い」としたり、「首相の靖国参拝こそが日本が戦争の過ちを繰り返しはじめていることを示している」と、幾分左翼的な主張をしているから、中立的観点を望む読者は注意。

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著者プロフィール

1941年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。朝日新聞記者を経て、現在ノンフィクションライター。著書に『ドキュメント・昭和天皇〈全8巻〉』(緑風出版)、『合祀はいやです。』『生と死の肖像』(以上、樹花舎)、『反忠神坂哲の72万字』(一葉社)、『ドキュメント憲法を獲得する人びと』(岩波書店・第8回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)、『日の丸・君が代の戦後史』『靖国の戦後史』『憲法九条の戦後史』(以上、岩波新書)、『蟻食いを噛み殺したまま死んだ蟻──抵抗の思想と肖像』(佐高信との共著、七つ森書館)他多数。

「2009年 『これに増す悲しきことの何かあらん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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