「テロに屈するな!」に屈するな (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (88ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709338

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  • なんといっても必読なのは第3章にあるノルウェーでのテロ後のことだ。32歳の若者が政府庁舎を爆破した後に、ウトヤ島で集会をしていた若者たちを銃で乱射し総計77人を殺戮した。事件当日夜に首相は記者会見で、「これほどの暴力だからこそ、より人道的で民主主義的な回答を示さねばならない」と言った。翌日にもウトヤ島にいながら殺戮をまぬかれた10代の少女の、「一人の男がこれほどの憎しみを見せたのなら、私たちはどれほどに人を愛せるかを示しましょう」という言葉を引き、「相手をもっと思いやることが暴力に対する答えだということを示さなければなりません」とも言った。
    事件翌日、殺戮現場に集まった遺族たちは、怒りや復讐を求める声は全く出てこなかった。ノルウェーの最高刑は禁固21年である。死刑制度を復活することや、厳罰化を求めることは、遺族はもちろん国会でも議論になることもなかった。裁判によって事件の構造を徹底的に解明することと、二度と同じようなことが起きないようにすることしか考えていない。
    アメリカやイギリス、ニュージーランドや日本は厳罰化の方向に向かっているが、北欧諸国は寛容化している。ノルウェーの法務官僚は、「ほとんどの犯罪には三つの原因があります。まず幼年期の愛情不足、次に教育の不足。そして現在の貧困。ならば犯罪者に対して与えるべきは苦しみではなく、その不足を補うことなのです。苦しみを与えることはありません。これまでに彼らは、十分に苦しんできたのですから」といった。
    ノルウェーの寛容化が始まった1980年代、治安が悪化するとして懸念を表明する者も多くいた。しかし実際に犯罪が減少し、国民レベルの合意が形成された。
    その後テロの犯人の青年は、オスロ大学の政治科学課程の受講が認められたことがわかった。ノルウェーでは、条件を満たせば受刑者でも教育を受ける権利が認められる。
    作者の上映会が終わり、パブで日本現代の研究者たちと話していたときのこと。若い日本人の多くが、「今の日本に帰りたいとは思わない」という。「子どもを育てると考えたとき、今の日本は避けた方がいい」とも。外から見た日本は、もうこんなにも変わってしまっていると思われているのだ。日本が変わったのはいつからか。それは間違いなく、1995年のオウム事件からである。
    連合赤軍が山岳ベース事件で初めて仲間を粛清したとき、脱走した二人のメンバーの処遇をめぐって赤軍派の森恒夫に相談した永田洋子は、さんざん思い悩んだ末に実行する。しかし報告を聞いた森は、「あいつ本当にやっちゃったのか」的なことを言いながら、側近に嘆息したという。殺人への確固たる意志はどこにもないまま、殺人は重ねられていった。
    オウムによって作られたのは「集団化」である。集団は同調圧力を強化し、異物を排除しようとする。統合された集団は全員で同じ動きをしたがる。これに同調しないものが異物となるので、自分も異物にされかねない。同じ動きをするには支持が必要なので、強いリーダーを求める。そして結束を強める過程で、共通の敵を求める。
    9.11後のアメリカも同じで、メディアも一斉に政権を指示したが、「ワシントンポスト」や」ニューヨークタイムズ」などマスメディアの多くは、その後ブッシュ政権を支持した誤りを認め、訂正の記事を出した。アメリカの強みはここで、多民族、多文化、多言語だからこそ一色ではいられない。必ず復元力がある。日本とはそこが違う。日本は落ちたら落ちっぱなしである。
    アメリカでは州によって死刑があるところ都内ところがあるが、死刑を廃止しているところが増えてきているという。このままでは日本が最後の死刑存置国になるといわれているようだ。

  • 森さんの本は一時期よく読んでたので、新鮮味に欠ける感じは個人的にあるんだけど、この国の安保関連法案や死刑制度について、短いながらも内容が詰まっている一冊だった。欲を言えばもう少し長くてもいいぐらい。

  • 現在の政権や社会に、諦めず、批判的に向き合えるかどうかが今後の日本社会の行く末を決める。

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プロフィール

1956年、広島県生まれ。ディレクターとして、テレビ・ドキュメンタリー作品を多く製作。98年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画「A」を公開し、2001年には映画「A2」を公開。11年『A3』(上下巻、集英社文庫)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在は映像・活字双方から独自世界を構築している。16年、ドキュメンタリー映画「FAKE」で話題を博す。著書に『死刑』(角川文庫)、『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』(ダイヤモンド社)、『ニュースの深き欲望』(朝日新書)など多数。

「2018年 『虐殺のスイッチ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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