「テロに屈するな!」に屈するな (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
4.37
  • (9)
  • (8)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 68
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (88ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709338

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 図書館で岩波ブックレットを探していたら偶然見つけたので読んでみた。

    今までの自分の視点がメディアや操作された空気によって偏った見方をしてきたか自覚できた。無知を知れただけでも本当に読んで良かった。

    本著を通して多角的な視点で現状を認識するには積極的に幅広い手段で情報収集し、かつ不安と恐怖に煽られすぎずいかに冷静になれるかが重要だと学ぶことができた。
    仕組みも歴史も学ばず作られた空気に流され続けては駄目だと思い知らされたので、せめて疑念を持ったときに声をあげられる位には学び続けていきたいと思う。

  • 安倍政権の矛盾を痛快なまでに言語化してくれている。一九八四年の例えがとてもわかりやすい。飯テロという言葉があるくらい、テロという言葉が定着してしまっている日本ですが…(笑)思考停止で排除を謳うようでは、自分達の首をしめる一方かもしれません。

    この方の映画「i -新聞記者ドキュメント-」を観たのだけど、いろいろつながりました。Aを観てみたい。

  • 第3章「報復の連鎖」を断ち切れるか-ノルウェー元法相に聞く が特に良かった。

  • なんといっても必読なのは第3章にあるノルウェーでのテロ後のことだ。32歳の若者が政府庁舎を爆破した後に、ウトヤ島で集会をしていた若者たちを銃で乱射し総計77人を殺戮した。事件当日夜に首相は記者会見で、「これほどの暴力だからこそ、より人道的で民主主義的な回答を示さねばならない」と言った。翌日にもウトヤ島にいながら殺戮をまぬかれた10代の少女の、「一人の男がこれほどの憎しみを見せたのなら、私たちはどれほどに人を愛せるかを示しましょう」という言葉を引き、「相手をもっと思いやることが暴力に対する答えだということを示さなければなりません」とも言った。
    事件翌日、殺戮現場に集まった遺族たちは、怒りや復讐を求める声は全く出てこなかった。ノルウェーの最高刑は禁固21年である。死刑制度を復活することや、厳罰化を求めることは、遺族はもちろん国会でも議論になることもなかった。裁判によって事件の構造を徹底的に解明することと、二度と同じようなことが起きないようにすることしか考えていない。
    アメリカやイギリス、ニュージーランドや日本は厳罰化の方向に向かっているが、北欧諸国は寛容化している。ノルウェーの法務官僚は、「ほとんどの犯罪には三つの原因があります。まず幼年期の愛情不足、次に教育の不足。そして現在の貧困。ならば犯罪者に対して与えるべきは苦しみではなく、その不足を補うことなのです。苦しみを与えることはありません。これまでに彼らは、十分に苦しんできたのですから」といった。
    ノルウェーの寛容化が始まった1980年代、治安が悪化するとして懸念を表明する者も多くいた。しかし実際に犯罪が減少し、国民レベルの合意が形成された。
    その後テロの犯人の青年は、オスロ大学の政治科学課程の受講が認められたことがわかった。ノルウェーでは、条件を満たせば受刑者でも教育を受ける権利が認められる。
    作者の上映会が終わり、パブで日本現代の研究者たちと話していたときのこと。若い日本人の多くが、「今の日本に帰りたいとは思わない」という。「子どもを育てると考えたとき、今の日本は避けた方がいい」とも。外から見た日本は、もうこんなにも変わってしまっていると思われているのだ。日本が変わったのはいつからか。それは間違いなく、1995年のオウム事件からである。
    連合赤軍が山岳ベース事件で初めて仲間を粛清したとき、脱走した二人のメンバーの処遇をめぐって赤軍派の森恒夫に相談した永田洋子は、さんざん思い悩んだ末に実行する。しかし報告を聞いた森は、「あいつ本当にやっちゃったのか」的なことを言いながら、側近に嘆息したという。殺人への確固たる意志はどこにもないまま、殺人は重ねられていった。
    オウムによって作られたのは「集団化」である。集団は同調圧力を強化し、異物を排除しようとする。統合された集団は全員で同じ動きをしたがる。これに同調しないものが異物となるので、自分も異物にされかねない。同じ動きをするには支持が必要なので、強いリーダーを求める。そして結束を強める過程で、共通の敵を求める。
    9.11後のアメリカも同じで、メディアも一斉に政権を指示したが、「ワシントンポスト」や」ニューヨークタイムズ」などマスメディアの多くは、その後ブッシュ政権を支持した誤りを認め、訂正の記事を出した。アメリカの強みはここで、多民族、多文化、多言語だからこそ一色ではいられない。必ず復元力がある。日本とはそこが違う。日本は落ちたら落ちっぱなしである。
    アメリカでは州によって死刑があるところ都内ところがあるが、死刑を廃止しているところが増えてきているという。このままでは日本が最後の死刑存置国になるといわれているようだ。

  • 森さんの本は一時期よく読んでたので、新鮮味に欠ける感じは個人的にあるんだけど、この国の安保関連法案や死刑制度について、短いながらも内容が詰まっている一冊だった。欲を言えばもう少し長くてもいいぐらい。

  • 現在の政権や社会に、諦めず、批判的に向き合えるかどうかが今後の日本社会の行く末を決める。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1974年生まれ。神戸学院大学法学部准教授。専門は政治学、政治思想史。著書『思想の政治学——アイザィア・バーリン研究』(早稲田大学出版部、2018年)。翻訳にマイケル・フリーデン『リベラリズムとは何か』(共訳、ちくま学芸文庫、2021年)。

「2022年 『市民的不服従』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森達也の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×