君が戦争を欲しないならば (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
4.43
  • (3)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 50
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709420

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 公演を文字起こししたもの。文字や行間も大きく、丸いフォントで疲れずに読める。本自体はとても薄い。
    ・戦争体験
    ・作家として描いた戦争
    ・過去から現代に通じる思想
    ・憲法
    ・沖縄問題
    ・日本人の思想
    どこかの資料を再構築するだけのものが増えてきた中で、体験というのは目の前で起こったことを語られるわけだから、個々人のビジョンのままに五感を含む話ができる。そもそも高畑さんは頭が良い。話が上手く、人に訴える力がある。それでいてドライでストイックで、風刺したり、痛快な話し方をする。気持ちよく読める。決して戦争を過去のものとしない姿勢は一貫して伝えてくれる。

    「永遠の0」がいかに感動のための資料再構築だったかが分かる。主人公は昭和・戦時中に物申す理想の存在として、資料から良さげな部分だけ掻い摘んで整え、美談として膨らませただけのもの。現代モノからの回顧として描き、出演する演者を増やし個々のファン層を巻き込まないと視聴率が得られない。そんな精神で人の生死が関わった事実を描けるわけがないし、色々と見失っている。

    火垂るの墓は戦争を描くよりも更に深い人間のエゴもかいているが、永久にその価値は広がらないだろうと思う。現代人に戦争を理解し、向き合う力が無いから、戦争描写までで思考が止まってしまう。
    一部の人にしか本質が見えないこれを作ったのかと思うと、本当に凄い人だった。

    語られる話は「アニメ監督になる」という所には一切繋がってこないのが面白い。作品を作るうえで滲んでくる人間性の土台を作ったという内容。

  • 岩波ブックレットという今まで手を伸ばしたことのない形態の書籍。

    今年4月の高畑勲氏の訃報を受けてブクログが特集した記事の中で引っかかり、読みたい書籍としてボタンを押していたのがきっかけであったのだが、今回の帰省を機にジュンク堂の店内で検索をかけてみたらそこにあった。予想もしないこじんまりとした棚に押し込められた数百冊のそのコーナーは、自分ひとりでは決して迷い込むような場所にはなかっただけに、ああこんな風にしていい活字に出会えることは今後ももっとあっていいと感じた次第。折しも帰省時期は終戦記念日をはさむ時期であったため、滞在中に一気に読み切ってみた。

    内容は2015年の初夏に高畑氏が幼少期を過ごされた岡山市において、市が主催する戦没者追悼式・平和講演会で述べられたことを収録、加筆したものだとのことで思いもよらずつい最近のこと。ほんの3年前だ。

    彼自身が体験した岡山市内での空襲の有り様を、その土地勘のある人達の前でたどることから始まるその公演は、次第に氏の思うところの核心に触れてゆく。しかしながら冒頭部に彼はまず以下のような宣言をぶちまけてくれる。

    「『火垂るの墓』を反戦映画だと分類する人がいるが、私はそれに異を唱えてきた。いくら戦争の悲惨さを描いてもそれでも戦争は起きるのです。戦争を防止するために重要なのはどうして戦争を始めてしまったのか、どうしたら始めないで済むのか、そしていったん始まってしまったら為政者、国民はどう振る舞ったのか、そのあたりを学ぶことなのです。」

    そして2015年の世相に感じる危険な「空気」とその「空気を読む世代」の危険性についてズバリとメスを入れてくれている。自分にとってはつい最近「ニッポン国VS泉南石綿村 」(2018) の上映の場において原一男監督自身の口から聞いた「近頃の映画学校にくる世代の思考回路」の話と同期するような内容だっただけに「ああ、やはり本当にそんな事になっているんだ…」と感じると同時に、そのようにいい切ってくれた高畑氏の表現力に対し、「それです!自分がモヤモヤと表現できなかった不安要素は‼!」と内心感嘆の声を上げてしまった。

    毎年8月に読むだけじゃもったいない。月に一度ぐらい手にしてみてもよいのではないか。

    来週はもう9月。よし、まずはそこから。

  • 戦争体験者の話をとして良い。

  • 【追悼 高畑勲監督】

    戦争体験を語られなかったとのことだが、こうしてブックレットという形になって残り、読むことができることに感謝したい。淡々と語られる空襲体験(再会が感動なんて嘘、ハグしない、の指摘はごもっとも。世の中そんなにドラマチックではない)、戦後民主主義第1期生として手探りだった様子が、声高ではないのにリアルに感じられる。日本人は「ずるずる体質」との指摘には、日本だけではないのではと思う。WWII前のドイツもずるずるとナチに引っ張られた。英国では「The Independent」紙がイラク戦争前に開戦反対の論陣を張っていたのにいざ開戦すると「始まったからには…」の論調に変わった(ただし「The Guardian」紙は開戦後も反対のままだった)。とはいえこの講演会が行われた2015年に議論されていたことや当時の雰囲気を(そういえばこんなだった)とハッと思い、忘れかけていた自分の情けなさに気づいたこと、氏が指摘する「倚りかかる」恐ろしさは心に刻んでおかねばと思う。引用されたプレヴェールの言葉とともに。

  • 「ずるずる体質」「責任を取らない体質」の絶対的な歯止めが、憲法九条。体質を変えるか、憲法を守るか。どちらが簡単だろう?

  • 配置場所:2Fブックレット
    岩波ブックレット ; no.942
    資料ID:C0037193

  • 2015年6月29日岡山市民会館で開催された、岡山市主催による岡山市戦没者追悼式・平和講演会での講演記録を大幅に加筆、収録。ということで、とても読みやすい。同調気質の恐ろしさに一人でも多く気づいてほしい。

  • 「平和を繕う」、今大切なことだと思う。
    最後のページの「言っておきたいこと」のまとめに主張は全て集約されているが、共感するところしきり。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

高畑 勲(たかはた いさお)
1935年10月29日 – 2018年4月5日
三重県宇治山田市(現・伊勢市)生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。長編漫画映画『やぶにらみの暴君』(『王と鳥』の原型)の影響で、アニメ映画を作るために東映動画入社。テレビアニメ『狼少年ケン』で演出デビューし、劇場用長編アニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』の監督を務め、宮崎駿と共に作品制作にあたる。
その後Aプロダクションに移籍して『ルパン三世』 (TV第1シリーズ)後半パートの演出を宮崎と共に担当。映画『パンダ・コパンダ』の演出を務める。ズイヨー映像(のちに日本アニメーションに改組)に移籍したのち、『アルプスの少女ハイジ』、『母をたずねて三千里』、『赤毛のアン』、『未来少年コナン』などの演出、『じゃりん子チエ』アニメ映画監督とTVアニメチーフディレクターなどを担当した。
その後、宮崎駿・鈴木敏夫らとスタジオジブリを1985年に創設。これに前後して『風の谷のナウシカ』(1984年)、『天空の城ラピュタ』(1986年)のプロデューサーを皮切りに、ジブリ作品に積極的に関わった。『火垂るの墓』(1988年)、『おもひでぽろぽろ』(1991年)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)、『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)、『かぐや姫の物語』(2013年)監督・脚本を務める。実写映画『柳川堀割物語』(1987年)脚本・監督も務めたが、作りこみすぎて製作期間を延ばしてしまい資金を使い果たしてしまったことが、『天空の城ラピュタ』とスタジオジブリ誕生の遠因にもなっている。
映像作品以外にも本の著作があり、『映画を作りながら考えたこと』『アニメーション、折りにふれて』といった映画に関わりが深いものから、『君が戦争を欲しないならば』といった講演を元にした著作など、幅広い切り口の評論を残している。
仏文学科出身ということもあってフランス語に堪能で、関わりが深い。在学中に影響を受けたフランスの詩人・作家、ジャック・プレヴェール『ことばたち』『鳥への挨拶』の翻訳を行っており、さらにはプレヴェール脚本のアニメ『王と鳥』、ミッシェル・オスロ監督の長編アニメーション映画『キリクと魔女』字幕翻訳にも関わっていた。

高畑勲の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
J・モーティマー...
三浦 しをん
ヴィクトール・E...
ジェイムズ・P・...
ジャレド・ダイア...
三島 由紀夫
柚木 麻子
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする