- Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
- / ISBN・EAN: 9784002709420
感想・レビュー・書評
-
【由来】
・図書館の岩波アラート
【期待したもの】
・高畑勲、というのが最初の理由。ブックレットなら読みやすそうだし、amazonでの評価も高かった。
【要約】
・
【ノート】
・
【目次】
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
岩波ブックレットという今まで手を伸ばしたことのない形態の書籍。
今年4月の高畑勲氏の訃報を受けてブクログが特集した記事の中で引っかかり、読みたい書籍としてボタンを押していたのがきっかけであったのだが、今回の帰省を機にジュンク堂の店内で検索をかけてみたらそこにあった。予想もしないこじんまりとした棚に押し込められた数百冊のそのコーナーは、自分ひとりでは決して迷い込むような場所にはなかっただけに、ああこんな風にしていい活字に出会えることは今後ももっとあっていいと感じた次第。折しも帰省時期は終戦記念日をはさむ時期であったため、滞在中に一気に読み切ってみた。
内容は2015年の初夏に高畑氏が幼少期を過ごされた岡山市において、市が主催する戦没者追悼式・平和講演会で述べられたことを収録、加筆したものだとのことで思いもよらずつい最近のこと。ほんの3年前だ。
彼自身が体験した岡山市内での空襲の有り様を、その土地勘のある人達の前でたどることから始まるその公演は、次第に氏の思うところの核心に触れてゆく。しかしながら冒頭部に彼はまず以下のような宣言をぶちまけてくれる。
「『火垂るの墓』を反戦映画だと分類する人がいるが、私はそれに異を唱えてきた。いくら戦争の悲惨さを描いてもそれでも戦争は起きるのです。戦争を防止するために重要なのはどうして戦争を始めてしまったのか、どうしたら始めないで済むのか、そしていったん始まってしまったら為政者、国民はどう振る舞ったのか、そのあたりを学ぶことなのです。」
そして2015年の世相に感じる危険な「空気」とその「空気を読む世代」の危険性についてズバリとメスを入れてくれている。自分にとってはつい最近「ニッポン国VS泉南石綿村 」(2018) の上映の場において原一男監督自身の口から聞いた「近頃の映画学校にくる世代の思考回路」の話と同期するような内容だっただけに「ああ、やはり本当にそんな事になっているんだ…」と感じると同時に、そのようにいい切ってくれた高畑氏の表現力に対し、「それです!自分がモヤモヤと表現できなかった不安要素は‼!」と内心感嘆の声を上げてしまった。
毎年8月に読むだけじゃもったいない。月に一度ぐらい手にしてみてもよいのではないか。
来週はもう9月。よし、まずはそこから。 -
戦争体験者の話をとして良い。
-
【追悼 高畑勲監督】
戦争体験を語られなかったとのことだが、こうしてブックレットという形になって残り、読むことができることに感謝したい。淡々と語られる空襲体験(再会が感動なんて嘘、ハグしない、の指摘はごもっとも。世の中そんなにドラマチックではない)、戦後民主主義第1期生として手探りだった様子が、声高ではないのにリアルに感じられる。日本人は「ずるずる体質」との指摘には、日本だけではないのではと思う。WWII前のドイツもずるずるとナチに引っ張られた。英国では「The Independent」紙がイラク戦争前に開戦反対の論陣を張っていたのにいざ開戦すると「始まったからには…」の論調に変わった(ただし「The Guardian」紙は開戦後も反対のままだった)。とはいえこの講演会が行われた2015年に議論されていたことや当時の雰囲気を(そういえばこんなだった)とハッと思い、忘れかけていた自分の情けなさに気づいたこと、氏が指摘する「倚りかかる」恐ろしさは心に刻んでおかねばと思う。引用されたプレヴェールの言葉とともに。 -
配置場所:2Fブックレット
岩波ブックレット ; no.942
資料ID:C0037193 -
2015年6月29日岡山市民会館で開催された、岡山市主催による岡山市戦没者追悼式・平和講演会での講演記録を大幅に加筆、収録。ということで、とても読みやすい。同調気質の恐ろしさに一人でも多く気づいてほしい。
-
「平和を繕う」、今大切なことだと思う。
最後のページの「言っておきたいこと」のまとめに主張は全て集約されているが、共感するところしきり。