- Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
- / ISBN・EAN: 9784002709451
作品紹介・あらすじ
災害やテロ対策を理由に、憲法を改正して国家緊急権に関する規定、緊急事態条項を入れようという動きがある。そもそも、国家緊急権とは何か。沿革は?他国の憲法はどうなっているか?憲法に入れれば本当に国民の生命、財産が守られるのか?緊急事態条項に関する最良の入門書。
感想・レビュー・書評
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国家に限度のない権力を与えるとろくなことがない。憲法に緊急事態を設けるとナチスのような独裁になりかねない。
権力を長く持つと清き水も腐る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現憲法は災害などの緊急事態について想定し、国会が機能するように定めているし、法律で一部の基本的人権を制限することまで含めて準備している。災害にも、テロにも現憲法と法律で対処できるである。できるように原理的にはなっているのである。出来ないとすれば、きちんと準備していない国会と行政の怠慢でしかない。そして、この国が先の大戦に突き進んで引き返せなかったことや、例えばワイマール憲法下において合法的にナチ政権が誕生したのは、どちらも国家緊急権の乱用であった事実を踏まえれば、現憲法は国家緊急権を認めていない、と著者は言う。それが学会の通説だと。
そして、自民党の憲法試案にある国家緊急権条項が、それら過去から一切を学ばないばかりか、大日本国憲法の国家緊急権よりもさらに首相に権限を集中させ、基本的人権を制限し、国会や裁判所の役割を排除する、とんでもなく危険なものであるということを明らかにする。 -
改憲をめざす勢力によって取り上げてられている「緊急事態条項(国家緊急権)」について、日弁連災害復興支援委員会前委員長の著者が、そもそも,緊急事態条項とは何か・沿革は?・他国の憲法ではどうなっているか?本当に国民生活は守られるのか等、様々な疑問にも応える形で分かりやすく記したブックレットです。
現行憲法がどのように考えているかの章では、参議院に位置づけられた緊急集会や災害対策基本法の厳格な要件に下で定められた内閣に認められた一時的な立法権の規定があり、きちんと位置付けられている事実を知ることができました。推進派が東日本大震災などを引き合いに出すことについては、避難計画など法の適正な運用による事前の準備を怠ったことによるものであり、それが利用には当たらないとずばりと指摘されていました。テロに対する漠然とした不安に対しては、「災害と違い政策によって防げるもの」であり、憲法9条との関係での問題はあるが、「国民保護法」「事態対処法」という2つの法律によって対処できるとしています。
<国家緊急権は「人権を守るため」の制度でなく、「国家を守るため」に人権を制限する、場合によっては人権を犠牲にする制度>、問題点をきちんと理解しないといけないですね。昨年の戦争法強行可決、その前にある「集団的自衛権」行使容認の閣議決定をすすめてきた現政権や推進派が力をさらに力を持ってしまったらと考えると、ほんとうに恐ろしくなりました。今、声を上げなければなりません。
短時間で読めます。
ぜひたくさんの人に読んでほしいです。