共謀罪の何が問題か (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (72ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709666

感想・レビュー・書評

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  • 共謀罪の何が問題で、どのような背景があるのか、非常に簡潔にかつ網羅的にまとめられた良著。

    日本の法制に共謀罪がそぐわない事、共謀罪が国連国際組織犯罪防止条約で対象となる犯罪とはかけ離れた内容となっている事、政府与党がオリンピック招致やらテロ対策と結びつけられて立法を急かしたにも関わらずそれらを共謀罪と結びつけて議論されたことは一切ないという事、今の日本の法制上テロ行為への対策に抜かりはなく、共謀罪なんてなくても困らない事、それなのに共謀罪導入を頑なに進めようとする背景には様々な疑いがある事。
    この図書を読むことで、上記内容がよく分かるし、法曹を目指す人や大学生は必読かもしれない。
    70ページ程の薄い本なのでサクッと読めるので、一般教養として社会人にもお勧めの図書。

  • 2020年27冊目。満足度★★★☆☆ 2017年の第193回国会で「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」が内閣より提出され成立・施行されているが、本書は成立前に当該法律の問題点等について解説しているもの。

  • 「共謀罪の何が問題か」(髙山佳奈子)を読んだ。
    まあね、こういう「引出し」も自分の中に一個くらい持っていないとね。
    (逆サイドからの視点の物も読むべきだろうけどね)

  • この本は想像していた通りのことが書いてあった。共謀罪の内容にテロのことは一切関係なく、国連からもマフィア対策の一環としてという位置付けだったのにもから関わらずオリンピックなど全然関係ないものを理由に国民を騙す。政治家が自らの利益のために動いたら国家としては終わりなのに、私たち国民の知らないところで既定路線通りにいらない法律が国会を通っている。共謀罪、水の民営化など、様々な法案が私たちの知らないところで可決されて行く。もはや知らないではなく、国民が政府を監視しなければこの国は廃れていく。不倫などの人のスキャンダルばかり食い入るように干渉するのではなく、このような大切なことに1人でも多くの人が関心を持って欲しい。私たちは戦後、主権国家として復活したかに見えてもアメリカの黒幕、アーミテージナイ報告書やジャパンハンドラーたちからも分かるようにアメリカの属国であることに多くの人が気づいてないない。今回の共謀罪もアメリカの言いなりであることは間違いない。私たち国民は目を光らせ、この現実をどうするべきか熟考しなければならない。

  • 今般の共謀罪法案は、国連国際組織犯罪防止条約を締結するためと言われながら、一方で、条約によって要求されていない範囲にまで広く処罰を及ぼそうとしていることがわかります。しかし、それと同時に、他方で、マフィア対策を目的とする同条約が典型的にターゲットにしていると考えられる、公権力を私物化する罪や、民間の汚職などの経済犯罪が、法定刑の重さにもかかわらず、対象犯罪から除外されています。政治家や警察、財界の一部の人に有利になっているように見えます。
    政府は、対象犯罪の限定について、組織的犯罪集団が行うことを想定しにくい犯罪類型を除いた、としていますが、それが事実に反する説明であることは明らかです。なぜ、常有役に合わない内容の共謀罪法案を押し通そうとするのか、与党の動機に対する疑問がふくらんできます。

  • 新聞記事やニュースでざっとは知っているつもりになっていたことを深く反省した。

  • 部屋に転がっていたのでさらっと読んだ。共謀罪の問題点について、簡単に網羅されている。

    ・国際条約(TOC条約)とは関係ない
     →TOC条約はマフィア対策であって、テロ対策ではない
      TOC条約は条約加盟にも新立法は不要
    ・オリンピック開催とは関係ない
     →これまでの招致活動では話題にも上らなかった
     =そもそも立法事実がない
    ・取り締まり対象の限定性がない
     →「準備行為」とそれ以外を判断する根拠が条文にない

    ・犯罪件数減少に危機をおぼえる警察の点数稼ぎが目的か
    ・日常生活、政治活動での表現の萎縮
    ・アメリカからの働きかけの可能性
    ・与党の審議状況は極めて不誠実

    などが論点。
     共謀罪を用意していると言われる、アメリカやイギリスは、そもそも「英米法」と言われる法体系に基いて司法が機能しており、日本が参考にしている「大陸法」とは考え方が異なる、という情報などは初耳だった。
     また、後半のところで触れられていた「スノーデンの警告」のような話は、ともすると陰謀論のようにも受け止められかねないが、アメリカが日本の様々な情報を傍受していることは、一般にも報道されていたことなので、十分にありうる話だろうと思った。

     残念ながら法案はもはや成立してしまったが、むしろ違憲訴訟などの闘いなどはこれからなのでは。

  • パープリンなので読みました。必読。

  • 成立してから、興味を抱き本書を読んだ。読んでみて自らの不勉強と興味関心の欠如を恥じた。

  • 京都大学法科大学院教授で第一線で活躍する刑事法研究者の高山氏が、国会で審議されている「共謀罪」についてその問題点をするどく指摘したブックレットです。

    「テロ対策」「オリンピックのため」などのウソの看板で固められた法案であることが、よくわかりました。法案の構成要件である「組織的犯罪集団」「計画」「準備行為」の内容も曖昧で、捜査機関の判断でどのようにも運用されてしまいます。最後の章(第7章)で「国会運営の異常さ」が指摘されていますが、まさにその通りだと思います。こんな法案は要らない、その思いを強くしました。廃案に向け、力を尽くします。

    すぐに読める文量です。ぜひ多くの方に読んでほしいです。

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著者プロフィール

高山 佳奈子(京都大学教授)

「2014年 『自由と安全の刑事法学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高山佳奈子の作品

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