メディアに操作される憲法改正国民投票 (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709727

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  • 現行の国民投票法には大きな欠陥がある。公職選挙法と異なり場所、時間を問わず運動可能であり、資金・寄付金の規制もなく、投票運動期間中のメディアにおける広告規制がほぼ存在しない。このため資金力のある与党はいくらでも無制限に資金を広告に投入することができる。2011年3月11日福島原発事故発生以前の日本の主要メディアの殆どが原発の安全神話を宣伝していた事実を見れば一目瞭然である。改憲派の広告宣伝を一手に担うのは「電通」。その他の問題点は、周知期間、運動期間が短すぎる。最低投票率が規定されていないこと。

  • 東2法経図・開架 323.14A/H85m//K

  • 前半が広告業界の現状に照らした憲法改正投票における改憲派の優位性の指摘。後半は広告における不平等を是正するための著者なりの法規制などの対策の提案。
    後半は、著者が考えているだけのことであって、全然実現の可能性はないと思う。規制の理屈は正しいが、政権に不利になる規制を与党が実現するわけがないので。後半を読んでもただただ諦観が深まるだけ。
    前半は、広告業界の電通一強支配という現実に即して、改憲派の優位性をこれでもかといわんばかりに指摘する。いやこれ護憲派勝ち目ないだろ笑。
    こういう現実から目を逸らして署名活動のような安直な手法に血道を上げていてよいのか?むしろ署名活動の成功が目的化していないか?と暗い気持ちになる。

  • 憲法改正の国民投票は電通などのメディア操作によって実際は改憲派にかなり有利になってしまう、という現状の問題点を指摘した内容。勉強になる。

  • 近い将来憲法改正の是非を問う国民投票が行われるかもしれないが、この国民投票には重大な欠陥があるのである。それは広報の公平性である。国民投票は発議後、60~180日の期間を経て投票が行われるため、国政選挙よりも広報機関が非常に長い。故に長い期間広報できる資金力が必要となり、よって資金力がある政党が掲げている案の方が事実上有利なのである。したがって公平な国民投票を促すためにも、現国民投票法を是正する必要がある。

  • 金持ちの顧客に全力で尽くす広告会社・電通。利益を生み出す取引には大いに役立つのだろうが、その広告手法が国民の意見が厳しく対立する問題に使われたとき、金のない方に勝ち目はない。では、どうすれば公平な争いにできるか。本書は、広告、すなわちプロパガンダの危険性を指摘し、それに対処する方法を論じる。

  • 現状の法律のまま憲法改変のための国民投票が行われた場合、メディアを利用して改憲派に圧倒的に有利な状況が作られる。
    この本は、こうした状況に危機感を抱き、改憲派にも護憲派にも公平な国民投票が行われるためのルール作りを訴えている人たちの一人が、現状がどのような仕組みで改憲派に圧倒的に有利であるのかを明らかにし、こうした不公平な国民投票ではなく、公平な国民投票が行われる為には、どのような法改正、どのような制度づくりが必要かを具体的に明らかにしている。

    例えば、国民投票が行われているヨーロッパ各国では、テレビのスポットCMはいずれの国でも禁止されている。それは、テレビのスポットCMが国民に最も強い影響力を持つものであり、かつ、資金の有無によって宣伝を打てるか打てないかに最も差が出るメディアであるからだ。

    しかし日本の「日本国憲法の改正手続きに関する法律」にはそうした規制は一切ない。当然資金を潤沢に持ち電通も抱える自民党、すなわち改憲派に圧倒的に有利になる。これは公平、公正な国民投票を行える事態ではない。なぜなら、投票する国民は、一方の意見だけに触れさせられ、一方の意見だけを聞かされ続けることになるからだ。
    それ故に、公平を確保する為には、規制が必要なのだ。

    この本の著者も属する「国民投票のルール改善を考え求める会」は、公平な国民投票を確保する為に衆参憲法審議会や民放連に、ルール改善のための法改正や自主規制を行うよう要望書を提出している。

    しかし、著者自身がこの本の中で書いている通り、法改正を行う為には、改憲派の自民党の賛成が必要になる。
    今の自民党が、自分達を欲望の達成よりも公平の確保を優先することは考えられない。従って法改正は無理であろう。
    民放連の自主規制も、改憲派の潤沢な資金の流入を自らの手でみすみす諦めることになるのだから、するはずがない。事実民放連は、検討の必要を理解しつつもこの10年間一度もこのことについての議論をしていないと言う。
    すなわち民放連にも期待はできない。

    つまりは、この本は、非常に重要なことを明らかにし、事態の改善を訴えているのだが、それも520円と言う安い価格の書籍として出版されているのだが、その中身が的確であるが故にこそ、近未来の日本で公正な国民投票を可能にするためのルール作りは実現することがないと言うことも明らかにしてしまっている。

    残念ながら、改憲の発議がされた時に護憲派の負けは決まるのだ、と言うことである。

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著者プロフィール

1962年生まれ。著述家。1989年、博報堂に入社。2006年に退社するまで営業を担当。その経験をもとに、広告が政治や社会に与える影響、メディアとの癒着などについて追及。原発安全神話がいかにできあがったのかを一連の書籍で明らかにした。最近は、憲法改正の国民投票法に与える広告の影響力について調べ、発表している。著書に『原発広告』『原発広告と地方紙』(ともに亜紀書房)、『原発プロパガンダ』(岩波新書)、『メディアに操作される憲法改正国民投票』(岩波ブックレット)、『広告が憲法を殺す日』(集英社新書、共著)ほか。

「2021年 『東京五輪の大罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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