「宿命」を生きる若者たち: 格差と幸福をつなぐもの (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (132ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002710013

作品紹介・あらすじ

近年,若者たちを取り巻く社会環境は悪化している.格差の拡大や貧困,深刻化する児童虐待…….ところが一方で,若年層における幸福感や生活満足度は,逆に高まっている.なぜか.「宿命」をキーワードに考える.

感想・レビュー・書評

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  •  未来が不確実なものだからではなく、逆に動かしがたく確定されたものだと感じているからこそ、にもかかわらずそれを先まで見通すことはできないからこそ、現在思考になっているのだと気づきます。いくらあがいたところで、それは変えようのないものだと感じられているために、そんな無駄なことはせずに現在の生活を楽しもうとするようになっているのです。(p.46)

     現在では自己評価を行なう際の準拠集団が同質化しているのです。先ほど、今日の地元つながりの母体は地元ではなくジモトだと述べた所以です。人間関係の隔絶によって、生活環境の異なった人びとの交わりが激減しているため、ものごとを判断するときの視点や視野もそれぞれの生活圏の内部で閉じられてしまい、自らと生活スタイルや生活レベルを同じくする人々だけが比較の対象となっているのです。(p.110)

     今日のように流動性の真下社会で、一つのものごとに対してあまりにも強くこだわりすぎると、せっかく新しいチャンスが到来しているかもしれないときに、その兆しを見逃してしまうこともありえます。インターネットを活用し、全世界から絶えず新しい情報を摂取している若者たちは、そのリスクをよく心得ています。そのため、なにか特定のことに没頭することは、むしろ積極的に回避しようとします。だとすれば、ひたすら一つのことに集中することではなく、もっと臨機応変に人間関係を構築していけるように工夫を重ねることこそ、今日の努力の在り方なのだと考えを改めねばならないのかもしれません。それが、こう元気の社会に見合った努力のかたちなのかもしれません。(p.123)

  • 30代を境に「努力」「宿命」のとらえ方が変化しているという。その背景には、高度成長という激変期を終えた後に訪れる変化の少ない平坦な社会(高原社会)がある。
    高原社会は近似性の高い集団を組織しやすく、社会的分断や格差社会の種にもなる。社会は社会構造を変えることによって改変できる。そのことを次世代に伝える必要がある。

    刺激的な一冊だった。

  • 疎外と疎外の認識のなさと。風通しの悪さが韓国とどう似ていてどう違うか。ベトナムとどう似ていてどう違うか。見ていきたい。

  • <図書館の所在、貸出状況はこちらから確認できます>
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=342097

  • 非大卒男性で非正規でありながらも、努力は裏切らないと思うし(自己責任)、生活満足度は高いという不思議現象。努力する、ということも生れながらの才能のようなものであり、自分には縁がない。だから自分がこの地位にいるのは変えようのない宿命のようなもの。そういう諦観もあるのかと思った。

  • 「宿命」と「努力」という言葉をキーワードに、習熟期へと移行した日本社会をポジティブな側面とネガティブな側面から見ることで、この時代精神の変化とその背景にあるものを学びました。

    P30 増加する高齢者犯罪

    →万引き犯と一般の高齢者とで規範意識に差はないが、
     人間関係の貧困により、自分を心配してくれる
     家族や友人が不在となり、万引きと言う非日常的な
     行為に伴う精神的な高揚感や達成感が、
     日々の寂しさや虚しさを一時的にでも忘れさせてくれる。
     孤立感の余り声を掛けられることを期待して
     犯行に走ってしまう人も。

    P49 未来に期待できない、と、未来に期待していない

    未来に期待できない
    -は、自分が生きる意味を未来に求めながら、
     しかしその現実が叶わない状態であり、
     そこに欲求不満を抱えていたとしても、
     今生きている意味について思いあぐねることは無い。

    未来に期待していない
    -は、生きる意味を未来に求めていないから
     それは現在に求めるしかない。
     目線は自分自身に。

    P91 自己主張

    1992-2002
    自己主張をする中高生が増えてきた

    以降は、経口が反転し、他人の意見に合わせる中高生が増えてきた。

    周囲の人間関係から自分だけが浮いて、居場所がなくなってしまうことを過度に恐れるようになったのでは?

    P95 宇宙戦艦ヤマトの主題歌の歌詞に見る、自らが救済者になることで、満たされない承認欲求を補填しようとするメサイア・コンプレックス。

    P120 ★★★ 西日本豪雨災害における、高校生のボランティア。

    P128 ★★★GDPに代わる豊かさの指標

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著者プロフィール

筑波大学人文社会系教授/社会学

「2018年 『談 no.112 感情強要社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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