東京オリンピック始末記 (岩波ブックレット 1057)

  • 岩波書店 (2022年1月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (64ページ) / ISBN・EAN: 9784002710570

作品紹介・あらすじ

なぜ開催してはならなかったのか。オリンピックおよびIOCによって歪められるスポーツと、犠牲を被るアスリートの姿。そしてわれわれ市民に遺された有形無形の負の遺産を徹底追及。東京2020を「終わったことにさせない」ため、オリンピックの問題性にいち早く警鐘を鳴らし一貫して批判を続けてきた研究者が総括する。

感想・レビュー・書評

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  • 東京オリンピック始末記

    著者:小笠原博毅(神戸大教授、文化研究ほか)
       山本敦久(成城大教授、スポーツ社会学)
    発行:2022年1月7日
       岩波ブックレット1057

    なるほど、その通りと思った。IOCはあくまでオリンピックを主催するスポーツ組織であり、正式な国際機関でもなんでもない。国連など超国家機関と同等に考えられがちだが、単なるNGO/NPOに過ぎない。
    そう言われ、各国政府のトップがこれほどまでにペコペコ頭を下げる民間の団体って、他にないかもしれないと、その滑稽さになんか笑えてきた。

    2人の学者が現時点での東京2020の〝清算〟をしてくれている本だと思いきや、ちょっと期待外れだった。東京で起きた色々な事項を挙げ、検証していくような内容ではなく、クーベルタン男爵が提唱した近代オリンピックそのものを否定するという、大上段な話だった。

    優秀なヨーロッパ人が遅れた植民地を知的かつ効果的に支配するのは当然だとの思想を持つクーベルタンが、優れたヨーロッパ文明の起源をギリシャに辿り、それを19世紀に復活すべく近代オリンピックを優生思想と人種差別主義を織り込んで発明したのがオリンピックだ、とする。クーベルタンは、ベルリンオリンピックの1年前にラジオ演説を行い、オリンピズムとは「高貴さと精粋」を意味し、それは「初め無差別平等であるが、その後の肉体的優位、肉体の多面性の向上、一定の段階に達しようとするとトレーニング意志によって初めて決まる」と主張した。

    クーベルタンは、死ぬまで、オリンピックの女性参加に反対していた。1896年の第1回大会は、女性は参加できなかった。

    なるほど、そう指摘されると優生思想的に思える。

    著者は「スポーツウォッシング」の問題についても強調する。不都合な事実を抱えている政治体や行政や企業が、スポーツを通じて悪評を浄化すること。その典型例として、「持続可能性」を大会理念に掲げた2012年ロンドン五輪で、メキシコ湾原油流出事故を起こしたBPが公式スポンサーになったことをあげている。オリンピックは、開催国もこれを狙っていることが多いと確かに思える。

    一方で、この論文には「そうかなあ」と疑問に思える点も多々あった。オリンピックはジェンダー問題を抱えていると言っていいと思うが、著者は男女に分けて競技を行うこと自体に問題があるとまで言っている。この点は、ちょっと問題が違うのではないかと思える。
    また、オリンピック(そもそもクーベルタン思想)が抱えるジェンダー問題と、組織委員長をクビになった森喜朗の女性蔑視発言を同レベルで語っている。かなり違和感がある。レベルが違いすぎるのではないか?

    国立競技場の建設に用いられた木材が、インドネシアの熱帯雨林から違法に伐採された疑いがあることを、実に高尚なオリンピック批判の論の中で突然出してくるのにも違和感。これまたレベルが違いすぎる。高いテーマで語っている時は、それをもっと聞きたいものだ。

    東京2020で日本のスケボー選手が大活躍した。著者はスケボーをカウンターカルチャーだとした上で、オリンピック後に渋谷のストリートにはスケボーをする若者たちが多く出現したが、彼らの営為は迷惑行為としてメディアに報じられている。彼らのやっていることこそが、スケートボード文化の表明であるのだが、オリンピックによって管理されたスケボ-文化こそが本物だとされた、としている。これも甚だ疑問だ。一般道でするスケボーが迷惑行為だと感じているのは大昔からのことであり、オリンピックは関係ない。

    各種競技界や学校行事が相次いで中止になるのに、なぜオリンピック選手だけが優遇されるのか、子供たちはおかしいと思っている。
    こういう書き方も稚拙で情けない手法。大型汚職事件の被告である政治家が無実を訴えつつ選挙にまた出て当選する、子供たちに聞かれたがなんて説明したらいいのか困っている、などという新聞への安っぽい投書を昔はよく見かけた。子供たちに本当に聞かれたのか?と問いたい。子供をだしにして持論を強調するなよ、と若い頃から不愉快だった。

    パラリンピックについて「感動ポルノ」と変わらないという論も納得が出来ない。障がいがあるのに「がんばっている」が故にオリンピックよりも「感動」するのであれば「感動ポルノ」だというわけである。パラリンピックって、そういう大会ではないと思うが。誰だって純粋にスポーツをしたい、ただそれだけではないか?

    勉強になる点もあったが、ツッコミどころも満載の本だった。

    *******

    IOCはスポーツの非政治化を訴えているが、それはIOCにとって不都合な政治を排除するために、非政治化されたパラレルワールドとしてのオリンピックを作りだしている。

    1968年のメキシコシティ大会は、あまり知られていないが32ものアフリカ諸国がボイコットしようとしていた。それは、選手・役員がすべて白人だったアパルトヘイト下の南アフリカの参加資格を剥奪するように求めたものだった。

  • ふむ

  • 東京オリンピックとはなんだったのか、を確認したかった。
    同時代を生きていたのに、ぜんぜん実感もないし、記憶もないから。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1300174

  • 恐ろしく読みづらい文章と構成である。

  • 780.69||Og

  • 怒ってる人がどう怒ってるのか知りたいと思い購入。
    言ってる事は解るが、推進へのカウンターにはならないように思えて、あまり読後感は良くない。
    今後オリンピックを手放しで楽しむことは難しいかな。
    欧米側ジャンルの催し物だと思っていたけど、中国がやる分には相性いいんじゃないかという気分。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055615

  • 【書誌情報】
    著者:小笠原博毅
    著者:山本敦久
    通し番号 1057
    シリーズ:岩波ブックレット
    ジャンル 社会
    刊行日 2022/01/07
    ISBN 9784002710570
    Cコード 0336
    体裁 A5 ・ 並製 ・ 64頁
    定価 572円

     なぜ開催してはならなかったのか。オリンピックおよびIOCによって歪められるスポーツと、犠牲を被るアスリートの姿。そしてわれわれ市民に遺された有形無形の負の遺産を徹底追及。東京2020を「終わったことにさせない」ため、オリンピックの問題性にいち早く警鐘を鳴らし一貫して批判を続けてきた研究者が総括する。
    https://www.iwanami.co.jp/book/b597599.html

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著者プロフィール

【緒言】小笠原 博毅(おがさわら・ひろき)
1968年東京都生まれ。神戶大学教授。専門は文化研究、社会学。主な著書に『サッカーの詩学と政治学』(編著、人文書院、2005年)、『黑い大西洋と知識人の現在』(編著、松籟社、2009年)、『セルティック・ファンダム─ グラスゴーにおけるサッカー文化と人種』(せり か書房、2017年)、『真実を語れ、そのまったき複雑性において─ スチュアート・ホールの思考』(新泉社、2019年)、『東京オリンピック始末記』(編著、岩波ブックレット、2022年)など。

「2023年 『レイシャル・キャピタリズムを再考する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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