「障害」ある人の「きょうだい」としての私 (岩波ブックレット 1062)
- 岩波書店 (2022年4月7日発売)
本棚登録 : 153人
感想 : 19件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (80ページ) / ISBN・EAN: 9784002710624
作品紹介・あらすじ
障害児者とともに育ち、親よりも長い一生の関係となる「障害児者のきょうだい」。幼少期から差別や偏見を受け、身近な支援者としての役割を期待される一方で、自身のことは後回しにされてしまいがち……。「ヤングケアラー」としての自らの切実な悩みや体験も交えて、さまざまな新しい取組みを紹介、支援の必要性を訴える。
感想・レビュー・書評
-
TBSラジオ「Session」で特集した「きょうだい児」の放送回をポッドキャストで聴いたのが、この本を手に取ったきっかけだ。
その番組で初めて「きょうだい」や「きょうだい児」という言葉を知った。
障害のある人(あるいは治りにくい病気のある人)の兄弟姉妹のことを、「きょうだい」と定義していて、さらにその中でも未成年については「きょうだい児」と呼ぶこともあるそうだ。
「きょうだい」たちは進学や就職、結婚、出産など、人生のステージごとに悩みが発生する。
子どものころは、親が障害がある子にかかりっきりになるので、そのきょうだい(障害のない人)は寂しい思いをしてしまう。
周囲からは、あなたは障害がない体で生まれたのだから、しっかり支えてあげなさいと言われ、幼いころからケアする役割を負わされてしまう。
優等生であることを求められるので、子ども時代に子どもらしくふるまえず、大人びた子どもになってしまう。
進学のときは、遠い学校を選びにくくなる。実家を離れて独り暮らしをしようとすると、家族を見捨てたと非難されることもある。
進路についても、家族の役に立ちたいと考え、福祉関係の学部や仕事を選択肢に入れる人もいるようだ。
恋愛や結婚の時期は、交際相手にいつ家族のことを話せばいいのか悩む。
家族の中に障害者がいると、自分たちの子どもにも障害が遺伝するかもしれないとの理由で結婚を拒否されることもある。交際相手がそれを受け入れても、その両親に結婚を反対されることもある。
親が高齢になってくると、さらにその介護の負担も加わる。
子育てと親の介護を同時にこなすダブルケアがニュースでも度々取り上げられるが、「きょうだい」の場合、家族構成によってはトリプルケア以上になる。
そして、親が亡くなると、今度はひとりで障害のある兄弟姉妹を支えるようにいわれる。
ここで足かせになるのは、家族のケアはその家族がやるべきだ、という家族主義的な価値観だ。
それにとらわれてしまい、行政や民間の支援を最初から諦めてしまう人もいる。
必要のない罪悪感を抱くことも多い。
いつもケアする親の姿を見ているせいで、自分が何か楽しいことをしてから帰宅すると罪悪感を感じる。
進学や就職、結婚のタイミングで実家を出るときにも罪悪感を感じる。
自分だけが幸せになっていいのだろうか、好きなことをやっていいのだろうかと悩み、自発的に選択肢を狭めてしまうこともある。
「きょうだい」という言葉の定義ができたことで、当事者たちがコミュニティーを作りやすくなった。
そこでは遠慮せずに自分の気持ちを伝え、同じような境遇の人と悩みを共有することができる。そこで初めて、私だけじゃなかったんだと気づくことができる。
当事者でない人に「きょうだい」特有の悩みを打ち明けると、弱音をはいているとか、障害を抱えた兄弟姉妹を責めているとか言われかねないので、なかなか本音を言えない。
自分の好きなことをやったり、希望する進路を選択したり、親元を離れて独り暮らししたりすることは、家族を見捨てることにはならない。
実家を離れて別々の人生を歩む権利はあるし、それは憲法でも保証されている。
映画『コーダ あいのうた』には、3人のろう者(両親と兄)と暮らす妹の生活が描かれていた。
妹には歌唱の才能があるが、両親と兄はそれを聴けないので、どれだけ才能があるのかを理解できない。
もし、音楽関係の進路に進むことになれば、実家を出なければならないため、漁業を営む家族は他の漁業仲間たちとのコミュニケーションが不便になる。もし、新たに手話通訳ができる人を雇うとなれば人件費がかかるし、家族にはそこまでの余裕はない。
そうした事情もあって主人公は、実家に残って家族と一緒に漁業をするか、あるいは実家を離れて音楽関係の学校に進学するかを悩む。
あの映画を観た当時は、まだ「きょうだい児」という定義を知らなかったが、いまにしてみればこの本に書かれていた悩みも描かれていた。
過去には、ヤングケアラー(きょうだい児)が家族をケアする様子を「感動する話」に仕立て上げたテレビ番組もあったようだ。
本来なら、マスメディアは「きょうだい児」やヤングケアラーの現状を説明し、彼ら彼女らが受けられる支援を周知するべき立場だ。
にもかかわらず、それを放棄し、むしろ子どもに大きな責任や負担を押しつける番組を作ってしまった。
これからは、「きょうだい児」やヤングケアラーはケアする立場ではなくケアされる立場である、と広めてほしい。
国レベルでも、厚労省と文科省の協働でヤングケアラー(きょうだいも含む)の支援に取り組み始めているが、やはり一番の課題は認知度の低さだという。
当事者ですら、まだ「きょうだい」「きょうだい児」という言葉を知らない人は多い。
言葉を知らなければ、支援の情報や団体にたどり着けず、仲間たちとも出会えない。
ヤングケアラーという言葉だって、少し前まではほとんど知られていなかった。広まったのは比較的最近だ。
だから「きょうだい」や「きょうだい児」もその気になれば認知度を上げられるはずだ。
この本の巻末には参考文献や支援団体、ウェブサイトなどがたくさん紹介されている。
また、この本の刊行後に著者自身もポッドキャストを始めたようなので、そちらも聴かせてもらった。
活字で読むのもいいが、肉声で本音が語られているので、より当事者の実感が伝わってきた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新聞でもヤングキアラのことが取り上げられるようになり、それがきっかけでこちらの本と出会いました。
きょうだい同士でも別々の人生。
進路、恋愛、結婚、親のあるうちに。
どんな家族構成であっても、それはテーマになるでしょう。割り切れない部分てみんな人知れず抱えてるんじゃないでしょうか。
今回はタイトルのとおり、悩んでいる人にとっては、自分の思いを共有してもらえる場所があると言うことを知るきっかけになる本だなと思いました。
幼稚園や小学校の先生方にはもちろんいろんな家庭環境など情報共有がなされていると思いますが、悩みを共有する場所があるんだよーと言うことを、子どもたちにしってもらえるようにしてほしいなって感じました。
もちろん中学生高校生はきっと家族の中でも、年齢的にも体力的にもすごく頼りにされていてしんどい思いをされている方が多いのだと、思いましたし、自分の人生を選択できるんだよ、権利なんだよと、この本はきっかけになって欲しいなと思いました。「この本を読んだ後に」と言う巻末資料を、紹介するだけでも、助けのきっかけになるような気がしました。 -
タイトルが自分のことだったので発刊されてすぐ手に取り。しかしなかなか手を付けられませんでした。
内容としてはヤングアダルト向けかつ今問題にされてきているヤングケアラーについて多く書かれている印象です。
私の事情にも重なるところもありましたが、やはり障害の軽重や種類、兄弟の生まれ順や関係性による個々の差異というものの大きさを感じさせられます。だから様々な「きょうだい」たちのそれぞれの事情をたくさん知ることが大事なのでしょう。そうしなければ、みんなに本当に必要なケアや決まりをうまく定めることは今の時代にあっても難しいものなのだと思われます。
何ができるのか、これからどうしたらいいのか、自分は自由に生きてもいいのか、大人になったって「きょうだい」の関係性あるかぎり悩み続けます。
即この一冊が役立つ、ということはないですが知る一つのきっかけとして、特に若い方にはブックレットスタイルの本書は手に取りやすいかなと思います。
巻末の参考資料は深める上で役立ちそうです。 -
ちょっと読むのつらかったですね。
内容は、かたくるしくないので読みやすいですが、あまり感情移入してしまうと、ちょっといろんなダメージがありそうです。わたしだけかな。
ブックレットで手に取りやすいので、たくさんの当事者さんたちに届くとよいなと思います。 -
「きょうだい」としての気持ち、想いについて知ることができてよかったです。
言葉にして表現していただけたことで、ほっとしているきょうだいさんもいらっしゃるのではないか、と想像します。
「ヤングケアラー」という言葉に含まれる状況は本当に様々で、支援者としてしっかり学んでいかないと見落としてしまいそうだ、と危機感を抱きました。 -
369.27||F59
-
-
国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→
https://winet2.nwec.go.jp/bunken/opac_link/bibid/BB11523097 -
もっと早く読みたかった〜〜!!自分と照らし合わせ、きょうだい児だからって色々我慢してることが多かったなあと実感。巻末資料が役立ちそう。
-
【請求記号:369 フ】
-
女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000057003
藤木和子の作品
