- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003001219
作品紹介・あらすじ
紀貫之ら4人に勅撰和歌集作成の命が下ったのは905(延喜5)年のことであった。『万葉集』以後、公けの席での漢詩文隆盛の中で、はじめて「やまとうた」を選ぶ貫之たちの喜びは大きかったに違いない。10年の歳月をかけ古今の和歌を精選して成った。作風は万葉風にくらべ理知的・内省的で技巧に富み、後世に絶大な影響を与えた。
感想・レビュー・書評
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古今和歌集とは、905年もしくは914年に、勅命によって、紀友則、紀貫之、凡河内躬恒、壬生忠岑
によってまとめられた日本初めての官製の和歌集である 1111首の短歌、長歌からなる
大伴家持の苦労によって、759年ごろにまとめられた4565首からなる、万葉集から155年、それもかなによる歌集である
期しも、構成は、どちらも20巻からなる 仮名序という日本語でのまえがきと、真名序という漢文でのまえがきをもっている
どれくらいすごいのか たとえば、敗戦時から、米軍から強要されていた英語で、公文書を書かなければならなかったにもかからず、155年後に天皇の発案で誕生した
官製の歌曲集が何と日本語でかかれていたといったイメージである
本居宣長が和歌は「古今和歌集」を頂点とすると言わしめたほど、高く評価した古今和歌集には、日本の心がちりばめられている
古今和歌集でもっとも有名な歌は、第7巻賀歌の冒頭にある、読人しらずの歌である
343 賀 わが君は千世にやちよにさざれ石の巌となりて苔のむすまで
ちなみに冒頭の番号は、歌に与えらえた連番、次が章の名である
である
さらに、百人一首の実に24首が、古今和歌集から取られている
021 春 きみがため春の野にいでてわかな摘む我が衣手に雪はふりつつ
042 春 人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける
084 春 久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ
113 春 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに
166 夏 夏の夜はまだよひながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ
193 秋 月みればちぢにものこそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど
215 秋 奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿のこゑきく時ぞ秋はかなしき
249 秋 吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ
277 秋 心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせるしらぎくの花
294 秋 ちはやぶる神代もきかずたつた川から紅に水くくるとは
303 秋 山がはに風のかけたるしがらみは流れもあへぬもみぢなりけり
315 冬 山ざとは冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば
332 冬 あさぼらけありあけの月と見るまでに吉野のさとにふれる白雪
365 離別 立ち別れいなばの山の峰におふるまつとし聞かばいざかへりこむ
406 覊旅 あまの原ふりさけ見ればかすがなる三笠の山にいでし月かも
407 覊旅 わたのはら八十島かけて漕ぎいでぬと人には告げよあまの釣舟
420 覊旅 このたびはぬさも取りあへずたむけ山もみぢのにしき神のまにまに
559 恋 すみの江の岸による波よるさへや夢のかよひ路人目よくらむ
625 恋 有明のつれなく見えし別れより暁ばかりうきものはなし
691 恋 いま来(こ)むといひしばかりに長月の有明の月を待ちいでつるかな
724 恋 みちのくの忍ぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに
872 雑 あまつ風雲のかよひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ
909 雑 たれをかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに
983 雑 わが庵は都のたつみしかぞ住む世を宇治山と人はいふなり
ちなみに、岩波文庫版は、一句一句の意味が詳しくかいていないので、気に入った歌については、個別に確認するか、詳細を記した書をあたったほうがいいかとおもいます
他に気に入った歌は、
187 物ごとに秋ぞかなしき もみぢつつうつろひゆくを限りと思へば
503 思ふには忍ぶることぞ負けにける 色にはいでじと思ひしものを
1064 身はすてつ 心をだにもはふらさじ つひにはいかがなると知るべく
など
目次
仮名序
巻第一 春歌 上
巻第二 春歌 下
巻第三 夏歌
巻第四 秋歌 上
巻第五 秋歌 下
巻第六 冬歌
巻第七 賀歌
巻第八 離別歌
巻第九 羈旅歌
巻第十 物名
巻第十一 恋歌 一
巻第十二 恋歌 二
巻第十三 恋歌 三
巻第十四 恋歌 四
巻第十五 恋歌 五
巻第十六 哀傷歌
巻第十七 雑歌 上
巻第十八 雑歌 下
巻第十九 雑体
巻第二十 大歌所御歌・神遊びのうた・東歌・墨滅歌
真名序
解説
初句・四句索引
ISBN:9784003001219
出版社:岩波書店
判型:文庫
ページ数:288ページ
定価:980円(本体)
発売日:1981年01月16日第1刷
発売日:2004年09月06日第42刷詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古典の名作
古文、いにしえぶり、レトロ好きな方におすすめ -
「”やまと歌は、人の心を種として よろづの言の葉とぞなれりける”」
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どういう縁で読もうと思ったかはっきり覚えていない。短歌というその起こりというか、どういう所で、何を感じていたのか、制限された世界を感じてみたい、そういうのがあったのかもしれない。
紀貫之らがやったこの業績というのは、たぶん、その後の短歌という表現形式の方向を決める大きな一助となったのは確かなようだ。
万葉集以降、流れる時の中で、忘れ去られ、隅に追いやられてしまった短歌というものの可能性を見いだし、方向性をもって歌を集め、その意味を論じたというのは、それほどに歌というものを大切にし口ずさんできたからだと思う。
象徴的なことばの数々。序詞や枕詞は決して意味のないそういうものではない。意味から別れてしまう前の音が、それを聞くひとにイメージを呼び起こさせてくれるのだ。静寂の音が響き渡る、そんな歌であふれている。
テーマ別にみると、歌と生活リズムが非常に近いものであることが感じられる。春や秋の色彩に心動かされ、ひととの出会い・別れに一喜一憂し、喜び、悲しみ、恨み、時に怒り、そんなたえずうつろう心の動きを、その場その場で31文字に止めておく、そんな感じがする。広く等身大で生きて感じている、そういう感じ。
石川や折口の中にある自分という存在が、驚くほど溶けだしている。俵万智のような閉ざされた生活空間ではなく、巡り巡る、けれど決して同じではない、季節のうつろいが息づいている。 -
11月1日は「古典の日」だという。
「やまと歌は人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれるける。世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、見るもの、聞くものにつけて、言い出だせるなり」
あまりにも有名な紀貫之の仮名序の書き出しです。
とにかく「古今和歌集」「源氏物語」が日本文学の根っこであることは定説でしょう。
おもしろいのは、文学の免許皆伝を受け継ぐのが「古今伝授」という儀式、あまりに日本的ですがまあ家元制度みたいです、あくまで実力継承ということで。
東常縁から宗祇へ、三条西実隆から細川幽斉、松永貞徳から北村季吟、そして最後が柳沢吉保へ、ただしこれは民間伝承。
わたしは、三条西実隆は伝統の絶えるのを恐れて本筋は宮中で継承され、さいわい伝統は明治以後も続き、現在でも皇室、宮内庁でその伝統は絶えていないのではないかと思っています。歴代陛下御歌のみやびな調べはその影響だと考えています。そのあたりの経過を宮内庁式部方が披露していただけるといいのですが、おそれおおいことではあります。 -
BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー「ブックサロン」で登場。
坂東眞理子さんの人生を変えた一冊。
「いわば、日本美のスタンダードを確立した歌集だというふうに思っているんです。この中に貫いてる美意識というのは、これが正しくて、これが間違ってる。正しいものは永遠に正しいっていうふうな、がん!とした価値観じゃなくて、本当に憧れていた人と実際に恋仲になって燃ゆるような恋をした人でも別れなければならない、というような変化。常ならぬもの。」(坂東眞理子さん)
原宿ブックカフェ公式サイト
http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
http://nestle.jp/entertain/bookcafe -
授業でやらなかったところもいつかちゃんと読みたい・・・
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国歌の原型も収められている。
正直言ってあまりわからなかった。
時間をおいて読み返そう。