- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003011614
感想・レビュー・書評
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「大日本は神国なり」の出だしで有名な、南朝の北畠親房による歴史書。古文とはいえ、物語に比べると読みやすい。源頼朝や北条泰時の統治を人望に合致したものとして評価する一方で、後鳥羽院の承久の乱を軽率な行動として批判するなど、一筋縄ではいかない史観が面白い。
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くにのとこたちのみことが国の基礎を開き、天照大神がその統を伝える。わが国は神の時代から続く国である。このような国はわが国しかなく、他国に例がない。▼日本を統治すべきは、武家の頭領ではなく、神の末裔である皇統一系の天皇でなければならない。北畠親房きたばたけ・ちかふさ『神皇正統記じんのう・しょうとうき』1339
※南朝の重臣。南朝の正当性を主張。後醍醐天皇、後村上天皇に仕える。
⇔『梅松論』(北朝の正当性を主張)
天皇は神話時代から連綿と続く特別な存在。この世界に類のない国柄を守り続ける使命を帯びたのが将軍。将軍の権力、幕府の秩序を保つことは、天皇を守り、世界に冠たる国体を守ることに直結する。徳川光圀『大日本史』1657 ※1906年完成
儒教の王道が実現されているのは皇室をいただく日本のみ。山崎闇斎やまざき・あんさい。1600年代
天皇の徳による政治が望ましい。保元平治の乱の後、朝廷の政治が衰え、東の未開人によって鎌倉幕府が開かれた。彼らは何でも武力で解決しようとする。源氏が衰えると、北条氏が権力を独占した。その後も幕府(武人)の政治が続いている。幕府が天下に害を為すならば、兵を挙げてこれを討つべき。山県大弐やまがた・だいに『柳子新論りゅうし・しんろん』1759 ※徳川の全盛期に尊王倒幕を主張。
水戸学(儒学)。従来の水戸学では天皇は徳を体現するので尊いとされていたが、国学(本居宣長)と同様、神話から継続する神聖性をもって天皇は尊いとする。アマテラス、天皇、将軍、諸藩、武士、庶民という階層秩序。天皇によって精神的に国民を統合し、外国の脅威を認識させ、国家を守ろうとする意識を高めたい。会沢正志斎あいざわ・せいしさい『新論』1825
天皇と人民の心は一体であるから、天皇の命令があれば、人民によって幕府を倒してもよい(孟子・易姓革命)。国を開いて西洋の軍備を取り入れながら、外国に対抗すべき。武士が守る日本ではなく、身分に関係なく、天皇のもとで国民皆兵とすべき。吉田松陰、1850年代
※アメリカ密航を試み失敗。山口で松下村塾を開く。幕府を打倒してよいとする考えなので、幕府は体制を守るために弾圧。安政の大獄1858により刑死。29歳没。
※死ぬことで不朽の仕事ができるならいつでも死ぬべき。生きることで大業を成し遂げられるなら生きるべき(高杉晋作への手紙)。
祭祀(まつり)と政治(まつりごと)を明確に分けるべき。政治は損得勘定にかかわるもので政党がすべきこと。王たる者は自ら政治に当たるべきではない。民心融和の中心にならねばならぬ。天皇は党派によらない権威であるからこそ、危機に際して国民の一体化を容易にする。天皇は国民統合、歴史的伝統の象徴であり、直接に政治権力を行使しないことにこそ意味がある。福沢諭吉『帝室論』1882
万古不易の国体を鮮明にし、よく本来の姿を現前させ、古い習慣に固執することなく欧米文化の摂取純化に努め、本を立てて末を生かし、聡明にして心の広い新日本を建設すべきである。わが国民の思想の対立、生活の動揺、文化の混乱は、われら国民がよく西洋思想の本質を見て悟ると共に、真にわが国体の本義を体得することによってのみ解決される。文部省『国体の本義』1937 -
単語の意味が辞書をひかないと本文は理解できなかったので、はじめと解説のみ読む。それでも、端々に返り点をはじめとして漢文を読むための技術も必要で時間がかかった。時間をあけて、辞書を用意してまた読みたい。(栄蔵;2014年1月7日)
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北畠親房の名著。
単なる偏狭右翼な作品などではないことに驚かされた。日本だけでなく中国やインドにも神話があるとハッキリ明記する多元的な視点に立ち、比較文明的なアプローチから天皇家を戴く優越性を主張し、そこから南朝の正当性を導いてゆく。その一方で安易な日本第一主義に陥ることもなく、中国やインドの優れた文明を積極的に受け入れ、土着化してきたことを重視する。北条泰時に至っては、天皇に反逆しこれを撃破・追放した人物であるにもかかわらず高く評価していたりして、公正なスタンスは一貫している。北畠親房が日本右翼界を代表する傑出した学者・政治家であることが理解できた。
敗色が濃くなる中、彼はどのような思いで南朝復興運動をしたのだろうか。 -
南北朝時代に北畠親房が、吉野朝廷の正統性を述べた歴史書。奈良の吉野に遊びに行ったので読んでみました。「万世一系」の考えをもとに、神代から後村上天皇の即位まで、各天皇について書かれています。三種の神器に対する考えも書かれており興味深いです。ちょくちょく親房の考えが挿入されており、当時の政治感や歴史感が分かります。歴史書には著者の主観や社会情勢などが大きく反映されてしまうため、「古事記」「日本書紀」「愚管抄」などと合わせて読みたいところ。
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南北朝の動乱のさなか、南朝の重鎮北畠親房は、天皇家の歴史とそれに伴う過去の政治形態を論述して、南朝の正統性と、君主のあるべき姿を説こうとした。大きな歴史の流れの中で滅びゆく側に立つという立場上の制約を受けながら、しかしその記述には立場を超えた公正さがある。『愚管抄』と並び中世を代表する史論といわれる。
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『ぼくらの頭脳の鍛え方』
書斎の本棚から百冊(佐藤優選)85
歴史についての知識で、未来への指針を探る
戦前・戦中に誤読されたテキスト。冒頭の「大日本者神國也(おおやまとはかみのくになり)」という言葉に日本の国家原理が凝縮されている。 -
815夜