東海道四谷怪談 (岩波文庫 黄 213-1)

著者 :
  • 岩波書店
3.50
  • (4)
  • (2)
  • (14)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 85
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003021316

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784003021316

  •  

     
    (20141231)
     

  • 東海道四谷怪談。
    あらすじは岩波新書・四谷怪談でおおかたわかったが、前掲書は四谷怪談に関して考察した本であるため、かいつまんでいたり、前後が入れ替わったりしていて、全体像としてはいまひとつぼやけている。予備知識を仕入れたので原作を読んでみる。

    大きくいえば、お岩と伊右衛門夫婦の話と、お岩の義妹・お袖と許嫁の與茂七の話に、主人思いの小平の話が絡む。
    お岩と伊右衛門は、薄情な夫に捨てられ死霊と化す女の話であり、これがメイン・ストーリーとなる。お袖と與茂七の話はいささか複雑で、與茂七が殺されたと思ったお袖が、自分に岡惚れしている別の男に仇討ちを頼むが、悲劇的な結果に終わる。小平は主人の病を治そうと伊右衛門秘蔵の薬を盗むが、露見してお岩殺しの罪を着せられ、これもまた死霊と化す。

    巻末の解説によれば、
    ・元禄以来の「お岩伝説」
    ・木幡小平次という幽霊役で当たりを取った役者の伝説
    ・主殺しの咎で同日に処刑された直助・権兵衛の事件
    ・旗本の妾が不義事件を起こし、戸板に打ちつけられた事件
    ・堀に心中者の遺骸が流れ着き、鰻取りが見つけて騒ぎになった事件
    あたりが、元となっている。
    そこに忠臣蔵も加わって、かなり複雑な筋立てだが、うまく編み込み、練り上げられたストーリーになっているように思う。

    考えようによっては反社会的にも思える話である。清く・正しく・美しく、はまったくないのである。汚辱と不正と不運。悪と醜。打算に私欲。それをグロテスクなまでに見せつけられることに、快感すら覚えるのはなぜなのか。
    おおかたの庶民は、忠臣蔵の義士に喝采しつつも義士のようには生きられない。「大義」の元に生きるのが理想であっても、その理想を生ききることが出来るのは、本人の資質や生まれ落ちた境遇など、さまざまな条件が整った場合だけだろう。
    かといって「悪」を生き抜くことが出来るかといえば、そうでもない。心に黒いものが渦巻いていたとしても、実際にそうおいそれと大悪人になることはできない。
    多くの場合、どちらへの共感もありつつも、どちらにもなりきれない、中途半端で妥協した生を送る。
    だからこそ、善も悪も、極端な形の「様式美」で示されることで、同調し、昇華することが出来るのだろう。

    ・・・いや、小難しいことを言っていないで、お芝居は多分、見るのが一番なのだろうが。縁があればいずれ本物を見ることもあるだろう。いつか来るかどうかはわからないその日を楽しみにしておこう。


    *江戸から明治にかけての落語家・三遊亭圓朝(1839-1900)の作に、真景累ヶ淵(1859)という、一大因縁話がある。
    容貌の崩れた妻、泣き叫ぶ赤子、蚊帳をむしり取って金に換えようとする酷薄な夫の凄惨な場面は、四谷怪談と累ヶ淵で非常によく似ている。
    江戸・明治期の人々は、こうした演目を鑑賞する際、自ら聞き知ったさまざまな怪談を合わせて思い出しては、二重三重に恐怖を味わって(あるいは楽しんで)いたのかもしれない。
    怪奇と現実がおそらくは今よりは近しく感じられたその時代にちょっと思いを致してみる。

  • 江戸末期に書かれた、鶴屋南北の最高傑作とも言われる歌舞伎狂言。派手で痛快、倒錯的で退廃的な化政文化の魅力あふれる作品です。

  • 949夜

全5件中 1 - 5件を表示

東海道四谷怪談 (岩波文庫 黄 213-1)のその他の作品

鶴屋南北の作品

東海道四谷怪談 (岩波文庫 黄 213-1)を本棚に登録しているひと

ツイートする