怪談 牡丹灯篭 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2002年5月16日発売)
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  • 本 ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003100318

感想・レビュー・書評

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  •  カランコロン カランコロン

     下駄の音を響かせ旗本の娘の亡霊が愛しい男の元へと通う。
     先導する女中の亡霊の手には牡丹燈籠、ぼんやり光る。


    三遊亭円朝の口演を速記で写した本です。
    読者としては、本を読みながら江戸時代の登場人物像を頭に描くとともに、
    円朝の口演を寄席で聞いているように各登場人物の声色や状況説明を噺家の声で想像するという、二重に想像できる楽しみが。
    さらに速記術というものの記録としても興味深いですね。たまに矛盾がある(登場人物の年齢とか)は、速記のための記載ミスか?と思われるとか。

    「牡丹燈籠」といえば、恋人に冷たくされ死んだ女の亡霊が男の元に通い祟り殺す、
    …というような認識だったのですが、通しで読んでみると随分印象が違いましたね。
    大元の話である中国の「牡丹燈記」を円朝が江戸時代を舞台に膨らませたもので、主従の忠義あり、仇討あり、人情あり、裏切りあり、母子再会ありと盛りだくさん、幽霊話はほんの一部、しかも実は…という、本当に怖いのは人間だねえというお話。裏切りやら殺傷沙汰やらには、これは相当悲惨な終わり方か?!と覚悟したけれど一応因果応報と言うか悪行には報いが下り、忠義の心は報われるという幕引きでありました。全体的に女は報われないな~。f(^^;)

    物語の舞台が地図上で分かる範囲で、地名が出てくるとどうやって移動したのかな?など想像しながら読みました。
    舞台の旗本屋敷って私の会社の近くみたいです。旗本屋敷の地名が出てきたときには笑ってしまった(笑)

  • 千年読書会、2014年10月の課題本でした。。

    落語の名人、三遊亭円朝による創作落語、
    明治時代の時、最新技術であった速記で記録されたもの。

    意外なほどに“怪談”要素は薄く、
    どちらかというと“仇討”が主な要素でしょうか。

    圧巻なのは、劇中の登場人物の多さと、
    彼らの関連性の複雑さ、“奇縁”とはよくいったもの。

    意外な所で意外な人物がつながり、
    “因果応報”をも考えさせてくれる内容。

    江戸時代の“匂い”も十分に漂っていて、
    かの有名な“カランコロン”の雰囲気もなかなか。

    そんな中、一番“怖かった”と感じるのは、、
    “生きている人間の悪意”、なんて風に。

    最後は大団円となるのが救いですが、、
    幽霊の方がよほど“純粋”だとも感じました。

    よくもまぁ、これだけの悪意が集まるものです。

    江戸の匂いが豊かに残っていたであろう明治、
    これは“生”でも聴いてみたかったですねぇ、、

    落語、未だに経験はありませんが、是非試したくなりました。

  • 当時、外国から入った速記によって書かれた圓朝作の怪談噺。二葉亭四迷らの言文一致運動に影響を与え、小泉八雲が訳した初の日本語の怪談となった。
    前半は、新三郎とお露の幽霊譚とお露の父である飯島平左衛門家の騒動が交互に語られ、後半、ふたつの物語が出合い仇討へとつながる。

    「語り」のうまさは、続きが気になり、一気に読ませてしまう面白さ。この引っ張り方は、ひとむかし前の「ジェットコースタードラマ」のよう。
    怪談というが、幽霊が出るのはお露が出てくる有名な「お札はがし」の場面のみ。
    しかも、それも、後で半蔵が、
    「実は幽霊に頼まれたと云うのも、萩原様のあゝ云う怪しい姿で死んだというのも、いろ/\訳があって皆みんな私わっちが拵こしらえた事」と告白・・・。
    え?幽霊はでっち上げ?

    スカッとする復讐劇かというと、最後に孝助が源次郎、お國を仇討する場面、「…なぶり殺しにするから左様心得ろ」と顔を縦横にズタズタに切る。凄惨で非道く後味は悪い。


    今回再読して気がついたのが、新三郎のところへ、お露の幽霊があらわれるシーンの下駄の音。
    最初の登場では、「カラコン/\」。次に登場するシーンでは、「カランコロン/\」。
    最初、お露が幽霊だとはわからないために軽く、お露が幽霊だと気付いた後には重たい。
    落語で聴いたときは、違いあったかなぁ・・と、youtubeで円生、志ん生、小朝らの噺を確認すると特にそこで違いを出してはいない。これは、「幽霊噺」として聴き手も了承しているので「カラーン、コローン」と陰にこもった音での表現するしかないのだろう。

    岡本綺堂が14歳のころ、速記本で読んで、そんなにこわくない、と高をくくって寄席に圓朝の噺を聴きにいったら、「円朝がいよいよ高坐にあらわれて、燭台の前でその怪談を話し始めると、私はだんだんに一種の妖気を感じて来た。」で、終わった後、「暗い夜道を逃げるように帰った」という圓朝の語り、聞いてみたいものだ。

  • 複雑なプロット。昔の聴衆は、こんな複雑な筋を追うことができたのだろうか。

  • これはすごいな。小説じゃなくて口述したものを速記したという内容だから。この噺を連続ドラマみたいに口演したんだと思うにつけすごい。牡丹灯籠がでてくるのはちょっとだけだし足がないのに駒下駄の音をならしてやってくる幽霊がでてくるのもちょっとだけなんだけどとても怖い。ものすごくて怖い。

  • #100奈良県立図書情報館ビブリオバトル「古典」で紹介された本です。
    2019.3.16
    https://m.facebook.com/events/2271985816457260?view=permalink&id=2294499440872564

  • 当たり前ですが昔の言葉なので読みにくいです。
    お露さんと新三郎さんの恋物語が有名ですが、私は孝助の敵討の話が好きでした。怪談というけれどほぼ人間ドラマです。怪談の部分はやっぱり落語で聞くのがおすすめです。映画もあるみたいです。
    人間関係が複雑で少し読みづらいところもありましたが、内容は面白いし、ラストもハッピーエンド?で良かったです。

  • 2023.9.15読了。

    天才三遊亭円朝の作品。
    三大怪談の一つ。

    幕末明治に活躍したレジェンド噺家のお話を速記したものを現代訳したとのことだったが、びっくりするほど読みやすく、とにかく面白い。

    怖さは薄めで、萩原新三郎の下へ死んだお露とお米が夜な夜なカランコロンと音を立てて通うおなじみの幽霊譚よりもむしろ、お露の父親である飯島平太郎と草履取の孝助、悪女のお国と源次郎、思わず悪人になっていく伴蔵とその犠牲となるみね等々の物語の方に興味が掻き立てられる。

    印象に残ったのは、敵討ちという風習が尊ばれていた時代の空気と、人の生死に固執しないあっけらかんとした死生観、武士の美学といったところ。

    次は「真景累ケ淵」にも挑戦したいと思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/701201

  • 映画も秀逸ですが、これが原作。

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著者プロフィール

1839~1900。幕末から明治の落語家。人情噺を大道具・鳴り物入りで演じて人気を博す。近代落語の祖といわれる。代表作に「真景累ヶ淵」「怪談牡丹灯籠」「塩原多助一代記」など。

「2018年 『怪談牡丹燈籠・怪談乳房榎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三遊亭円朝の作品

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