ウィタ・セクスアリス (岩波文庫 緑5-3)

  • 岩波書店 (1935年11月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (108ページ) / ISBN・EAN: 9784003100530

みんなの感想まとめ

性欲や人間関係の複雑さをテーマにした本作は、明治時代の青少年の生態をリアルに描写しています。主人公の金井君が語る性的体験は、期待されるような濡れ場が少なく、むしろ男子校での人間関係や葛藤に焦点が当てら...

感想・レビュー・書評

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  •  vita sexualis――ラテン語で「性欲的生活」の意。明治42年に発表された森鴎外の中編小説である。哲学者の金井湛(しずか)博士が少年時代からの性的体験について語るという体裁をとった小説で、内容が破廉恥だとして掲載誌『昴』は発禁処分を受けた。

     …という話を聞いて、どんだけエロい小説なんだとわくわくしながら本書を読み、がっかりした青少年は後を絶たなかったんじゃないだろうか。鴎外先生も罪な人だ。

     実際のところ、多くの青少年が期待するような濡れ場は殆ど書かれていない。芸者通いをしたことが最後の方に少し書いてあるくらいで、それも肝心の場面はぼかして書かれているのである。これなら江戸時代の枕草紙の方がよほど刺激的だっただろうに。明治政府の基準、よくわからん。

     むしろ興味深いのは、金井君が10代のころ通った語学学校の話だ。明治時代だから当然男子校で、寄宿舎では全国から集まった秀才達が寝食を共にしている。生徒は軟派と硬派に大別される。軟派は女子が好きな者、硬派は男子が好きな者で、今で言うノンケとゲイである。圧倒的多数は軟派だが、学内で威張っているのは硬派の方だ。そして硬派の中核をしめるのは九州人である。

     金井君は若いから硬派に狙われる。11歳の時、寄宿舎で先輩に手籠めにされかけた。自力で逃げ出して事なきを得たが、それを父親に話すと、父親は平然と「そういう奴がいる。これからは気を付けろ」と言う。金井君は、それが男子校では避けて通れない厄災なのだと悟り、寄宿舎では短刀を常に持ち歩くようになる。

     女性との性描写が極めて淡泊なのに対して、男色にまつわる話は微に入り細に入り、やけにリアルだ。フィクションとはいえ、実体験がなければこうも詳細には書けまい。あるいは明治政府が隠したかったのは、我が国がどうしようもなくホモソーシャルな国だという事実だったかもしれない。ともあれ、明治の青少年の生態を活写したという意味で、本書は貴重な作品であるには違いない。さすがは鴎外先生である。

  • 性欲。このよくわからぬもの。

    金井君に筆を取らせた疑問に共感して読み始めたが、中身は只々、金井君の場合であった。おそらく、金井君のした作業を自分自身の場合で行ってみない限りはわからないままなのだろう。かと言って、気が進まない。この先もよくわからないもののままであり続けるのだと思う。

    p.89のおかあ様の「一種の表情」は、世の中の親がいつか通過する瞬間なのだろう。

    「不必要な衝突」という表現は面白かった。

  • 自然主義の流れに乗ったのではなく、それ以前から人間の性欲について研究して温めていたテーマ。それが自然主義の機運とマッチしていた。自然主義の勃興する前からこの作品の構想はあったそう。
    灰燼 魚玄機 青年 雁 これらの作品にもその片鱗がある。
    性欲上の事実と、それに対する作者の観照は、医学的哲学的な長年の研究の上に立っており、当時の自然派小説とは雲泥の差があることが分かる。

  • 性欲に冷淡だと自称する哲学者"金井湛(しずか)"が自己の性生活を告白していく自伝体小説。"人生は性欲のみではない"ということを暗示。

    "ただならしているだけで、虎の恐るべき威は衰えていないのである。"が個人的に印象的なフレーズ

  • 鏡花の次は鴎外再読キャンペーン中。

    タイトル(性欲的生活)は一見過激(?)だけれど、主人公の金井君は比較的タンパクで、かなり長期にわたり童貞を貫いているので、おもに少年期の淡い思い出と、寄宿舎でのBL(違)エピソードが中心。

    小説としてというより、明治時代の学生さんの雰囲気とか当時の時代の空気などが興味深い。馬で通学してくる美少年・蔭小路くんとか数行出てくるだけなのに妙にツボる(笑)乗馬で通学。素敵だ。軟派と硬派の軟派は現在とそんなに意味が違わないけど、硬派は男色というのが時代を感じる。木原敏江の「摩利と新吾」の世界でした。

  • 明治の性風俗に文豪の筆を通して触れられるということで、お洒落っぽいタイトルにも惹かれて購入。
    英独語や古い言い回しが多いが読みやすかった。
    フロイトと同時代の作品だが傾向が真逆なので、その辺りを掘り下げてみるのも面白いかもしれない。

  • 恋愛話の自伝的小説。自分は性に冷淡としてるけど、マスコミなどの媒体が煽ってるだけで実際普通の人ってこんなもんなのでは?とか思ってしまう私も冷淡なのかしらん。当時の風俗がよくわかる。
    それにしても、これ、注釈が少なすぎて読みにくい。
    06/9/8くらい

  • 著者:森鷗外(1862-1922、島根県津和野町、小説家)

  • 自然主義のようで、鷗のものとしてはあまり面白くない。

  • 童貞をこじらせた非モテ男の性の回顧録。主人公が童貞をこじらせるのは決して道徳的な抑圧の結果ではなく、自分の容姿が劣っていることを性の目覚めよりも強く自覚したことによる鬱屈した諦めの境地の結果である。そういう意味では決して古びてなんか無く、現代にも十分通用する話なのではないだろうか。オナニーや同性からのレイプ未遂など際どい話もあるが、あくまでも淡々と過去の話が綴られていくのが童貞をこじらせた感じが強く、さらに同じような筆で脱童貞をしたあとの一種の賢者タイム的な悟りも綴られているのは面白い。当時の風俗や文化、上級学校の生活などもふんだんに描かれていてそういう部分でも興味深い。

  •  中編小説。小さい頃からの性欲についてまつわる話しを語る、独白。おもしろく、夢中になって読めた。小さい頃の男色話がおもしろかった。11.9-9.

  • あまり肌にあわなかった…

  • 期待はずれの性春記

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著者プロフィール

文久2(1862)—大正11(1922)。石見国津和野(現:島根県津和野町)出身。明治14(1881)年東京大学医学部を卒業後軍医となり、17年~21年ドイツに留学。40年、陸軍軍医総監・陸軍医務局長になり、軍医として最高職についた。
大正5(1916)年予備役となり、6年帝室博物館長兼図書頭。公務のかたわら、小説家、評論家、翻訳家として活躍。代表作に『舞姫』(1890)、『うたかたの記』(1890)、翻訳『即興詩人』(1892~1901)、『ヰタ・セクスアリス』(1909)、『雁』 (1911)、『阿部一族』(1913)、『山椒大夫』(1915)、『高瀬舟』(1916)、史伝『渋江抽斎』(1916)などがある。本名は森 林太郎(もり りんたろう)。

「2023年 『森鷗外⑦ ヰタ・セクスアリス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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