雁 (岩波文庫)

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  • 岩波書店 (2002年10月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (180ページ) / ISBN・EAN: 9784003100554

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

物語は、人妻と学生の微妙な恋愛を描いており、じれったい感情が織り交ぜられています。特に、主人公のお玉が岡田に対して抱く初々しい思いは、読者にとって魅力的で可愛らしいものです。岡田のストイックな姿勢も印...

感想・レビュー・書評

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  • 鴎外は『舞姫』を現代文の教科書で読んだことがある。それっきり。

    そもそも、国語の授業を通しての作家との出会いっていうのは、私の場合たいてい上手くいかない。太宰との出会いが『走れメロス』だったせいで、彼の他の小説を読み始めるのは三年遅れた。芥川の『羅生門』を最初に読んだせいで、長らくその晩年の作品に目を向けることをしなかった。漱石『こころ』のラストだけ抜粋(!)という恥知らずなネタバレは、今でも恨んでいる。

    そして、中でも最も失敗したのが、初めての鴎外が『舞姫』だったということではないだろうか。これがもう、私を決定的に鴎外から遠ざけた。正直に言う。全然、ぜんっぜん、面白くなかった。文体が難しいとか、そういう問題ではない。何より、登場人物の誰にも共感できなかった。豊太郎もエリスも相沢も、みんな人形みたいに思えた。話の筋だってちっとも良いと思わなかった。読み終わった後「あ、そう、ふうん」以外の感想が思いつかない小説があるなんて。自分でもおこがましいとは思う。が、とにかく、当時の私には合わなかったのだ。

    それから数年。
    今回『雁』を読んでみて、まず文章の美しいのに驚いた。淡々としていて、ほんとうにすっと入ってくる。一つ一つの言葉があるべきところにばちっ、ばちっと嵌っているからだ。それでいて「巧妙さ」を感じさせない。(これは褒めている)あくまでさらりとこういう文章が書けるとは。鴎外の「文豪」たる所以がようやく垣間見えた気がした。
    一方で物語としてはどうかというと、これがあまりしっくりこなかった。心に迫ってくるものがあまりなくて、遠くの空に浮かんだ雲を日がな一日眺めているような感じ。瞬間瞬間のはっとするような美しい描写はあるのだが、物語全体としては力が足りないように思う。そういうのがスタイルなのだろうか。
    あとは、語り手の存在の必要性が最後まで疑問だった。特に幕引きの取って付けたようなぎこちなさには少々興ざめしてしまった。直前まで鴎外の筆力にすっかり惹きこまれていただけに、あの終わり方だけはなんだか裏切られたように感じた。かなしい。

    何はともあれ、決して悪くはなかった。鴎外をもうちょっと本腰を入れて読んでみようかと思うきっかけにはなったかな。

    • 佐藤史緒さん
      >漱石『こころ』のラストだけ抜粋(!)という恥知らずなネタバレは、今でも恨んでいる。

      激しく同意します。
      >漱石『こころ』のラストだけ抜粋(!)という恥知らずなネタバレは、今でも恨んでいる。

      激しく同意します。
      2012/10/30
    • ratsさん
      あれはもう、本当に酷いですよね。今もって、人生における結構な損失だったと思っています。
      まさか少女漫画ではなく現代文の教科書で「これまでのあ...
      あれはもう、本当に酷いですよね。今もって、人生における結構な損失だったと思っています。
      まさか少女漫画ではなく現代文の教科書で「これまでのあらすじ」を目にすることになるとは。そこまでして、本来は長編である『こころ』を載せたいのでしょうか・・・・・・。

      2012/11/01
  •  しんどいなー、どうしてそうなっちゃったんだろう。が率直な感想。
     末造の妾になって、岡田といういい男に出会うまでの話が大半で、そのあとの岡田とお玉との交流(それもあまりない!)が少なくて、「一本の釘」問題、偶然のピタゴラスイッチが恨めしい。もっと後者を見たかったぞー!!と叫びたくなるし、お玉もそう思っていたに違いない。それもこのタイミングで洋行とかなんなんですか??ってなる。
     最後の思い切ったお玉の行動の結末と雁の死が重なる。

  • 偶然に翻弄される二人の恋―。森鷗外が手がけた傑作中編小説。

  • 1911年から1913年、足掛け3年の年月をかけて完成した森鴎外の小説。
    とはいえ、その間、長期連載をし続けていたわけではなく、掲載誌「スバル」の休刊から、引き継がれる予定だった「我等」も休刊し、長い休載期間を経て、最終的には描き下ろしで完結した経緯があり、内容的には130ページほどで中短編程度の長さとなっています。

    森鷗外としてはなかりわかりやすい作品です。
    私、過去のレビューでも書いている通り、森鷗外の文学は苦手で、「舞姫」の印象が第一にあるためなのですが、これまで読んできた鷗外文学を振り返るとやはりとっつきやすい作者とはいえないと感じています。
    本作にして、ようやく頭を悩ませることなく、普通に読める小説がでてきたなと感じました。
    鷗外作品は往々にしてなかなかページが進まないまま内容をさっぱり忘れてしまい、読了に難儀するのですが、本作はページが進むんですね。
    小説として、かなり面白い内容だと思います。

    末造、お玉、岡田という3人の人物が中心となる展開で、語り手の「僕」は聞いた話を語っているという形になっています。
    末造という男は貧乏な小間使いをしていたのですが、人に金を貸すようになり利子で儲けて、やがて裕福になります。
    口うるさく所帯窶れがしている妻に嫌気が差してきた末造は、ある日、大学へ行く途上で、三味線の稽古をしているお玉という娘を見かけます。
    その美しさに惹かれた末造は、お玉を妾にしようとします。
    お玉は、両親が老いてから初めて授かった娘で母は産後に亡くなったこともあり、父の寵愛を受けていました。
    また、巡回中の巡査に見初められ、入婿の形で入り込んでこようとしたが、実は巡査には国に妻子がおり、それを恥じて引っ越した経歴があるため、お玉の父は末造の話に懐疑的でしたが、父に楽をさせるため、お玉は末造の話を進んで受けます。
    一方で、語り手の「僕」のひとつ下の学生「岡田」は、いつもの散歩の帰り道に謎めいた印象の女性・お玉に出会い、また、一方で、お玉も家の前を通る学生に想いを寄せていく。

    基本的にはお玉、岡田を中心とした恋慕の話なのですが、ラストはぷっつりと終わった印象を持ちました。
    長い休載の後の、最後の22,23,24章が書き下ろし部分なのですが、そこでストーリーは急展開を迎え、末造の悩み、お玉の募る想いには終着点をつけられずに、良く言えば余韻を残して終わりとなります。
    個人的には、もう少し丁寧な終わり方にして欲しかったところですが、掲載誌の休刊から引き継ぎ先も覚束ないまま、他の多数の作品を執筆しており、そんな中、ちゃんと完結してくれただけで御の字かなと思いました。

    大変面白い作品でした。
    ただ、私の思っている鷗外作品としては異質な感じがあります。
    鷗外を理解するために最初に取る書としてはおすすめできないかなと思います。

  • じれったい、じれったい、恋の話。
    帽子をとって会釈をしてくれる相手の姿を見るだけでドキドキしているお玉さんが、本当に初々しくてかわいらしい。
    一方の岡田君が、超ストイック。
    こんな人が実在したら、お玉さんじゃなくても惚れると思う。
    どうやら現代の恋愛小説より、このくらいの時代のちょっと古臭い話の方が自分には合うらしい。

    上野に行くときはいつも博物館や動物園が目当てで、あまり周辺を歩いたことがないので、この話の舞台になっているあたりをいつか散策してみたい。
    現在はどんな街並になっているんだろう。

  • 登場人物の背景、当時の時代背景など細かな描写があり、主要な登場人物であるお玉、末造、岡田、僕の心の様子が分かりやすい。
    今だったら考えられないような奥ゆかしさがあるがそれもまた良い。

  • 読みやすかった、がフランス語はなぜ使うのか分からなかった。時代背景を写す的な意味合いなのか、鴎外が簡素な文章に飽きて混ぜてきた外国語なのか、当時の人は辞書で調べていたのかなぁ

  • 雁というのが、どこに出てくるのか楽しみに読んだ。
    高利貸しの妾になった女が、自宅前を通るある男性を忘れられなくなる。その男性も、まんざらではない。
    その男性と妾の旦那は、友だちという設定。
    お互いに気づいているようで、微妙にすれ違っているようで。
    いよいよ旦那が家を空けるというときに、その妾と友人が一夜を過ごせるのか、、、というところで、雁が出てきて。

    雁が象徴するものってなんなんだろうなあ。

    わたしが読んだのは、Kindle。青空文庫の無料の奴。

  • 聞き慣れない言葉だらけで苦戦。読んで眠くなり、オーディオブックに切り替えるも眠くなり…
    結局解説noteをネットで読んで凌ぐ。そしたらばするする読めてなんとか読了。
    女の子のお玉が、女として美化されすぎてると思ったし、岡田もシャイ。やきもきします。
    お玉の旦那はなーんもしらなくて草。

  • 妾となったお玉と岡田の恋。読みやすく面白かった。

  • 解説では、書き始めにおいて物語の帰着点が見えていたから連載が断続したものだったのだろうと語る。
    しかし、読んだ印象はそうではない。確かに帰着点が見えていたのかもしれないが、継断を繰り返すうちにそれは見えなくなり、スバル廃刊と同時に一度途切れたのではないかと思う。そう思わせるほどには、納得のいかない軽率さのようなものを感じさせる最後3章であった。

    もしこの不満こそが森鴎外の狙いであればあっぱれだ。

    鴎外作をまともに読むのは初めてだった。
    解説によると今作は他と一線を画すようであり、たしかに書き手の人称の移り変わりが錯綜としており面白いものだった。他にも色々読んでみたい。

  • すれ違いや報われなさがリアルだなあと思った。

  • 『舞姫』を何年も前にちくま文庫で読んで、全くわからなかった。文語がわからないとか、単語がわからないとか、そういうことではなく、何か一々言葉の後ろに別の言葉があるような、表面の、額面の意味だけではないような、そういうもやもやする感じがあった。
    『即興詩人』は翻訳なので森鷗外の作品では厳密にはないが、それでもあれを読んだ時は確かに森鷗外って良いなと思えた。話によれば原著を原著のまま読むとそうでもないらしい。現に同作があそこまで日本で受け入れられ、有名なのは森鷗外の訳があったからとか。
    そして『雁』。読みやすい。なんだこれはとたまげたくらい読みやすい。ある意味ですごく小説らしい。自然主義を騙った私小説が幅を利かせていた当時の日本にあって、この作品は真の意味での自然主義ではないかと思う。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000212544

  • 財産についての観念が本作の大きな主題となっている。この観念は娘の森茉莉の作品からも汲み取れるけれど、具体的には、足ることを知る、ということである。本能的な欲望の奥深さについて、鴎外の思考は深く根を張っている。いかに多幸多福を知るか。この作品の感じがよくて心惹かれる人物達の中で、とりわけ、お玉に強い関心を持った。自己の身命を捧げるほどにして父親のために尽くし、恋愛を秘密にしてさらに成長していく。何より制度/機構/時代に振り回されず、自分を自分によって動かす彼女の人生は、とてもロマンチックだとわたしは思った。

  • 登場人物である岡田は東大ボート部で活躍し、対人関係もバランスが取れているハンサムな男。
    お玉は、高利貸しで成り上がり者の末造の立場の弱い妾であり、密かに岡田に慕情を抱く。
    お玉の妾の立場から、末造を疎ましく思う気持ちが交錯しつつ、岡田に思いを伝えられないまま、そのまま岡田は洋行へ。
    所々に散りばめられているフランス語が読みにくいが、普通に単語が出てくるあたり、この当時の文豪の博識には脱帽である。

  • 初めて森鴎外を読む。小さな偶然によって人と人とが出会う、という筋書きはよくあれど、出会わない、ということを、情感を持った物語に仕立て上げることのできる森鴎外に脱帽。

    *****
    お伽話ではない非情な現実を描きながら、とても情緒があるという不思議。

    例えば、安易な物語であれば悪役である末造の心理描写に多くの文字数が割かれていて、案外悪い人間でないように感じられる。

    ただ同時に、紅雀を巡る一件や雁に石が当たる場面にはおとぎ話ちっくなところがあって、東京下町の情景と合わさって、とても小説的なのである。

  • 貧苦から高利貸末造の囲者となった 「お玉」。
    お玉の住まう無縁坂を往き過ぎる内に恋慕を寄せられるようになった「岡田」。
    彼らの関係を客観視する立場の「僕」。
    三人が抱く人情の機微を軸にして物語が織られる。

    この小説にさまざま伏在せられた主題は、
    ① 境遇。すなわち不幸にも必ず潜むべき幸と、幸に忍び寄る不幸とのグラデーション。
    ② 縁。"無縁坂"という舞台が示すように、(男女の出逢いという意味での)縁を結ぶのが唯の一瞥をきっかけにしていること。あるいは永久の惜別を決定づけるのが男の優柔なる態度と女のいじらしい思慕にすぎないこと。
    ③ 女心。次第に末造から見え透かれることなく岡田を想うようになった、お玉の心の内にある虚実と、岡田と結ばれんがためには多少の無謀も厭わぬ果敢さ。
    などと思う。

  • 最後の最後で「雁」が出てきた。
    主人公は何も始まらずに終わる。

  • 再読。歴史もの以外の鴎外作品の中では一番小説らしい小説。語り手の立ち位置が不自然でちょっと気になるけど、舞姫ほど悲愴すぎず、私小説ぽさもなく、わりとライトな後味なのがいい。

    高利貸し末造に囲われているお玉が、通りすがりの学生・岡田に恋をするも、ちょっとした運命のいたずら(っていうと大げさだけど、一種のバタフライエフェクトかもしれない)で結局擦れ違ったまま終わる。その原因が「サバの味噌煮」と「雁」だったという皮肉。ある意味この小説のタイトル「サバの味噌煮」でもおかしくない(笑)

    これで岡田とお玉が本格的に恋におちたけど別れさせられた、となると悲恋だけど、何も始まっていないので悲壮感がないのが救い。

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著者プロフィール

森鷗外(1862~1922)
小説家、評論家、翻訳家、陸軍軍医。本名は森林太郎。明治中期から大正期にかけて活躍し、近代日本文学において、夏目漱石とともに双璧を成す。代表作は『舞姫』『雁』『阿部一族』など。『高瀬舟』は今も教科書で親しまれている後期の傑作で、そのテーマ性は現在に通じている。『最後の一句』『山椒大夫』も歴史に取材しながら、近代小説の相貌を持つ。

「2022年 『大活字本 高瀬舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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