雁 (岩波文庫 緑 5-5)

著者 : 森鴎外
  • 岩波書店 (2002年10月16日発売)
3.33
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  • 本棚登録 :200
  • レビュー :32
  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003100554

作品紹介・あらすじ

生まれてすぐに母を亡くし、貧困の中で父親に育てられたお玉は、高利貸末造の妾となり、上野不忍池にほど近い無縁坂にひっそりと住んでいる。やがて、散歩の道すがら家の前を通る医学生岡田と会釈を交すようになり…。鴎外の哀感溢れる中篇。

雁 (岩波文庫 緑 5-5)の感想・レビュー・書評

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  • 鴎外は『舞姫』を現代文の教科書で読んだことがある。それっきり。

    そもそも、国語の授業を通しての作家との出会いっていうのは、私の場合たいてい上手くいかない。太宰との出会いが『走れメロス』だったせいで、彼の他の小説を読み始めるのは三年遅れた。芥川の『羅生門』を最初に読んだせいで、長らくその晩年の作品に目を向けることをしなかった。漱石『こころ』のラストだけ抜粋(!)という恥知らずなネタバレは、今でも恨んでいる。

    そして、中でも最も失敗したのが、初めての鴎外が『舞姫』だったということではないだろうか。これがもう、私を決定的に鴎外から遠ざけた。正直に言う。全然、ぜんっぜん、面白くなかった。文体が難しいとか、そういう問題ではない。何より、登場人物の誰にも共感できなかった。豊太郎もエリスも相沢も、みんな人形みたいに思えた。話の筋だってちっとも良いと思わなかった。読み終わった後「あ、そう、ふうん」以外の感想が思いつかない小説があるなんて。自分でもおこがましいとは思う。が、とにかく、当時の私には合わなかったのだ。

    それから数年。
    今回『雁』を読んでみて、まず文章の美しいのに驚いた。淡々としていて、ほんとうにすっと入ってくる。一つ一つの言葉があるべきところにばちっ、ばちっと嵌っているからだ。それでいて「巧妙さ」を感じさせない。(これは褒めている)あくまでさらりとこういう文章が書けるとは。鴎外の「文豪」たる所以がようやく垣間見えた気がした。
    一方で物語としてはどうかというと、これがあまりしっくりこなかった。心に迫ってくるものがあまりなくて、遠くの空に浮かんだ雲を日がな一日眺めているような感じ。瞬間瞬間のはっとするような美しい描写はあるのだが、物語全体としては力が足りないように思う。そういうのがスタイルなのだろうか。
    あとは、語り手の存在の必要性が最後まで疑問だった。特に幕引きの取って付けたようなぎこちなさには少々興ざめしてしまった。直前まで鴎外の筆力にすっかり惹きこまれていただけに、あの終わり方だけはなんだか裏切られたように感じた。かなしい。

    何はともあれ、決して悪くはなかった。鴎外をもうちょっと本腰を入れて読んでみようかと思うきっかけにはなったかな。

    • 佐藤史緒さん
      >漱石『こころ』のラストだけ抜粋(!)という恥知らずなネタバレは、今でも恨んでいる。

      激しく同意します。
      2012/10/30
    • ratsさん
      あれはもう、本当に酷いですよね。今もって、人生における結構な損失だったと思っています。
      まさか少女漫画ではなく現代文の教科書で「これまでのあらすじ」を目にすることになるとは。そこまでして、本来は長編である『こころ』を載せたいのでしょうか・・・・・・。

      2012/11/01
  • じれったい、じれったい、恋の話。
    帽子をとって会釈をしてくれる相手の姿を見るだけでドキドキしているお玉さんが、本当に初々しくてかわいらしい。
    一方の岡田君が、超ストイック。
    こんな人が実在したら、お玉さんじゃなくても惚れると思う。
    どうやら現代の恋愛小説より、このくらいの時代のちょっと古臭い話の方が自分には合うらしい。

    上野に行くときはいつも博物館や動物園が目当てで、あまり周辺を歩いたことがないので、この話の舞台になっているあたりをいつか散策してみたい。
    現在はどんな街並になっているんだろう。

  • 貧苦から高利貸末造の囲者となった 「お玉」。
    お玉の住まう無縁坂を往き過ぎる内に恋慕を寄せられるようになった「岡田」。
    彼らの関係を客観視する立場の「僕」。
    三人が抱く人情の機微を軸にして物語が織られる。

    この小説にさまざま伏在せられた主題は、
    ① 境遇。すなわち不幸にも必ず潜むべき幸と、幸に忍び寄る不幸とのグラデーション。
    ② 縁。"無縁坂"という舞台が示すように、(男女の出逢いという意味での)縁を結ぶのが唯の一瞥をきっかけにしていること。あるいは永久の惜別を決定づけるのが男の優柔なる態度と女のいじらしい思慕にすぎないこと。
    ③ 女心。次第に末造から見え透かれることなく岡田を想うようになった、お玉の心の内にある虚実と、岡田と結ばれんがためには多少の無謀も厭わぬ果敢さ。
    などと思う。

  • 最後の最後で「雁」が出てきた。
    主人公は何も始まらずに終わる。

  • 再読。歴史もの以外の鴎外作品の中では一番小説らしい小説。語り手の立ち位置が不自然でちょっと気になるけど、舞姫ほど悲愴すぎず、私小説ぽさもなく、わりとライトな後味なのがいい。

    高利貸し末造に囲われているお玉が、通りすがりの学生・岡田に恋をするも、ちょっとした運命のいたずら(っていうと大げさだけど、一種のバタフライエフェクトかもしれない)で結局擦れ違ったまま終わる。その原因が「サバの味噌煮」と「雁」だったという皮肉。ある意味この小説のタイトル「サバの味噌煮」でもおかしくない(笑)

    これで岡田とお玉が本格的に恋におちたけど別れさせられた、となると悲恋だけど、何も始まっていないので悲壮感がないのが救い。

  • 2015/10/28読了
    p51
    時々ドキッとする描写。今も昔も変わらないのね。

  • 面白くて一気に読んだ。西洋文学を思わせる雰囲気が好き。開化期特有の日本語に唐突にフランス語の単語が混じったり西洋かぶれなところも好きだ。あと明治に実在した店などを登場させていたり、当時あって今ないものを辞書をひきひき知ったりして興味深かった。章の番号が大字(壱、弐など)になっているのもお洒落。一章の長さも短くてどんどん読める。◆「女とはこういうものだ」的な文章が挟まれているんだけど、嫌じゃなかった。女性の視点のときの描写が巧みだからだろうな。妾から妻まで心理描写が上手いなあ。◆様々な視点から描かれていて、誰の視点なんだろう。神の視点だと思って読んでいたら、最後に「僕」が継ぎ合わせたものなのかと分かって納得した。継ぎ接ぎだけど自然。不思議な感じ。「僕」や「雁」がオチで効いてきたのに驚いた。⇒解説を読んだら「視点の混乱」とあってなるほどと思った。

  • 視点が揺れ動くのが気になって、あまり入り込めなかった。
    最後の最後で題名の雁が出てきて、あっさりと物語は終わる。少し寂しい余韻が残る。

  • 森鴎外は『舞姫』の
    退屈なイメージがあって
    ずっと避けてきたものの
    受験するかもしれない大学の
    課題図書なので
    腹を括って読みました 笑

    結果的には
    森鴎外アレルギーを
    少し克服出来た…かな。

    些細な出来事が実は
    大きなすれ違いに
    繋がってしまうのかも。

  • 登場人物の内面がわかりやすく書かれていて読みやすかった。

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