山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7)

著者 : 森鴎外
  • 岩波書店 (2002年10月16日発売)
3.55
  • (30)
  • (54)
  • (111)
  • (5)
  • (0)
  • 本棚登録 :441
  • レビュー :59
  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003100578

作品紹介・あらすじ

「安寿恋しや、ほうやれほ。厨子王恋しや、ほうやれほ」の『山椒大夫』、弟殺しの罪に処せられた男の心情を綴り安楽死の問題に触れる『高瀬舟』のほか、「お上の事には間違いはございますまいから」という少女の一言『最後の一句』など、烈しい感情を秘めつつ淡々とした文体で描いた鴎外晩年の名品6篇。

山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 表題2作が読みたくて。どちらも短い作品ながら深く考えさせられるテーマを背負っています。多くを語っていないぶん読み手によって様々な捉え方や考え方ができるので、読後に他の方の意見を聞いてみたくなりました。
    数年後に再読したらその時々で異なる登場人物に心を寄せている気がします。
    好きとは違う、心の奥に根付くような名作。

    『山椒大夫』
    私の父は「『山椒大夫』=『安寿と厨子王』じゃないか!」と読後に膝を打っていたので、世代によっては後者のタイトルの方が童話などで馴染み深いのかもしれません。
    人買いによって悲運を辿る幼い子供たち――現代の日本では考えにくい描写が多々あります。しかし姉と弟、早々に離れ離れになった母親、三者どの立場を想像しても心苦しく、それぞれの胸の内が痛いほど伝わってきます。一つ一つの行動が自分より家族を想ったものばかり。さまざまな覚悟のかたちを見出だせます。

    『高瀬舟』
    罪人を舟に乗せ護送する役を務める者たちのなかでも、特に嫌われていた高瀬舟の担当。その役に就いている庄兵衛はある日、まるで「遊山船にでも乗つたやうな顔」で高瀬舟に乗り込んだ罪人の喜助を護送することになる。
    大きなテーマは「知足」と「安楽死」。
    特に後者については喜助と同じ状況になった場合、頭ではこうだと思っていても実際の状況ではもっと感情的になるだろうと思うと他人事とは思えません。「君はどう思う」という問いが反芻しました。

  • 読了。これまで読んできたなかで、日本文学が一番、電車のなかで読んでいて恥ずかしい気持ちになるものでした。わたしの知る山椒大夫は、54年溝口健二による映画のそれ、61年東宝アニメのそれです。森鴎外によるそれは15年。原作は中世の説教節であり、1650年頃と推測されます。これら3つは、それぞれ相当にアレンジを加えられているので、比較することで時代の流れらしきものが良く見えます。今回始めて読んだ森鴎外による山椒大夫はわたしにとっては、もっともそれらしい山椒大夫でした。素晴らしく良かったです。溝口健二の映画では、元来姉と弟の関係である安寿と厨子王は、兄と妹に置き換えられています。これは相当の違和感を放つものなのですが、50年先を見据えた先見の目という意味では、正解かも知れません。つまり、糞みたいな役立たずの兄、強気で健気な妹という構図なので、おもむろに今っぽい。対し、7年後のアニメでは元の構図に戻ります。これはまだ、アニメという分野が未成熟で、強いアレンジに耐えうるものでなかったためだと推測されます。特にディズニーコンプレックス丸出しで自立は出来ていない頃合いでした。中世の説教節では、姉安寿は拷問死します。拷問の描写が続くため、美女と言われる女性がひどい目に合って死ぬという聴衆が大好きなネタと、後に飛躍していく厨子王の姉コンプレックスの克服というネタが物語に世俗的な強さをもたらします。姉が強いのは古事記に見られるような日本元来の趣かも知れません。時代は姉を排除し、妹コンプレックスに向かっているため、溝口に先見の目があると言ったのはそのためです。ある意味、その強い姉像たる安寿が、森版では入水自殺しますが、当時の風潮というものなのか、美徳的に感じられはしますが、姉という概念の強さが男権に潰される最後の瞬間のようにも思えました。さて、山椒大夫の他、数点の作品が掲載されていましたが、どれもこれに劣らず素晴らしかった。元より推敲しまくる森の珍しい一発書きである寒山拾得だけはひどかったけど。

  • 鴎外の無駄を削ぎ落としたエリート軍人らしい文体がすきです。「最後の一句」がよい。

  • 表題、山椒大夫も高瀬舟も、とても有名な話。
    高瀬舟は、確か学生の頃に教科書か何かで読んだ気がする。
    けれど、どちらも、こんなに短い話だったろうか。
    記憶にある限りでは、もっと長かったような気がしたのだけれど。
    読み終えた時にはそう思ったのだけれど、少し間があいて、また読み直してみたら、同じ印象を抱く。
    こんなに、短い話だったろうか。
    言葉を尽くして説明されているわけではなく、むしろ読者に判断をゆだねるかのように完結に記された部分も多いのに、なぜか、心には長く残る。
    いつか、どこかで、「本当にそれで伝わるなら、言葉など一言で事足りる」というような話を聞いた記憶があるが(夏目先生だったろうか?)、森鴎外の小説は、それなのかもしれない。

  • 青空文庫で、「高瀬舟」を読んだ。
    罪とは何か、人の幸せとは何か。
    それは、心の持ちようにあるのか。

  • 山椒大夫戯曲。
    すべては夢なのかもしれない。
    身を裂くような悲しみも、残虐な現実も。
    目が覚めれば、すべてがもとに戻るのかもしれない。

    人は他人が苦しむ様を見るために、芝居をみるのかも。

  • 短編集で昭和初期にもかかわらず、とても読みやすい。
    山椒大夫は、父親を追って、旅に出た母子たちが、途中で人会にさらわれてしまう話。
    最後にお姉さんが弟のために行動をする。家族想いの人達。
    じいさんばあさん。は旦那が若い頃、牢に入って、奥さんは奉公し続ける。数年後出てお互いが違う時間を過ごし、老人になってから、再開し一緒に暮らす。
    一緒に暮らしている姿は、とても仲がよく理想の夫婦である。

  • 再読。幼少時に絵本で読んだ「安寿と厨子王」は子供心に「人買い」とか「焼き印」とかのワードが恐ろしく、とても悲しい話だと思ったものだけど、大人になって鴎外の「山椒大夫」を読み、さらに説経節に興味を持って色々読んだりしたら、さらに色々と奥深い世界が広がっていました。

    この本人収録されてる短編はほとんど中国の言い伝えや江戸時代のエピソードで元ネタのあるもの。語り伝わるだけあってどれも味わい深い。

    一種の安楽死を題材にした「高瀬舟」も、何度読んでも考えさせられる。

    ※収録作品
    「山椒大夫」「魚玄機」「じいさんばあさん」「最後の一句」「高瀬舟」「寒山拾得」

  • 展示中 2014.9~

  • 2013/11/12

    森鴎外の高瀬舟。
    時代に普遍なふたつのテーマを含む話です。

    「足るを知る」ということと「尊厳死」の問題。
    やり切れない気持ちを載せて罪人と同心とを運んで月夜の川を辷っていく、その静けさをも伝わってくるようでした。

全59件中 1 - 10件を表示

山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7)のその他の作品

森鴎外の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ドストエフスキー
梶井 基次郎
遠藤 周作
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印

山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7)はこんな本です

山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7)を本棚に登録しているひと

ツイートする