門 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 338
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101087

感想・レビュー・書評

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  • 『三四郎』『それから』を読んでからかなり時間を置いて読んだ。『門』というタイトルからしてなんだか地味だし、「横町の奥の崖下にある暗い家で世間に背をむけてひっそりと生きる宗助と御米」なんて紹介文を読むにつけてもあまり食指が動かなかったのだ。今にして思えば、読むのを先延ばしにしていたのが実に悔やまれる。

    よかった。ひょっとしたら前二作よりもよかったかもしれない。

    思うに、漱石の作品には独特の雰囲気が漂っている。匂い立つような明治の東京の空気が。それは鮮やかな風景の描写からも、活き活きとした登場人物たちの会話からも色濃く感じられる。漱石の小説を読むたびに、私はその空気の中に浸る。筋を追うというよりもむしろ「夏目漱石的な感覚」に身を任せることを愉しむ。
    そういう観点から見ると、この『門』は大変気に入った作品だ。落ち着いていて、うつくしくって。愛というよりは慈しみと呼ぶのがふさわしいような宗助と御米の関係が淡々と描かれる。読者は彼らの背負った業の深さを知っているだけに、現在の関係性のありかたには迫ってくるものがある。

    最後の場面での宗助の言葉「うん、然し又ぢき冬になるよ」が効いているなぁ。思わず息を飲んだ。

    この作品の持つ深みを全然言い尽くせないのが歯がゆい。歳を重ねるに連れてまた違った読み方ができるのではないだろうか。いつか再読しようと心に決めた。

  • 『三四郎』『それから』に続く、いわゆる三部作の締め。もっとも、前2作とは打って変わって、筋立て上ではドラマチックな展開はほとんど無い。むしろ、『それから』にも通じるような道徳上の「不義の愛」が、いつまでも宗助と御米の人生を暗くし続けている。その描写が手を変え品を変えなされる。『それから』同様に、「自然」とも「運命」とも称される、自我を超越した何らかの力が生活に働きかけているとしか思えないような出来事を、宗助も御米も体験してしまう。この繰り返しは、生活上の小康状態を得た最後のシーンでもなお予感されている。「またじきに冬になるよ」という言葉は、「自然」「運命」の力の強大さを表して余りあるものではないだろうか。

  • 資料ID:C0030593
    配架場所:2F文庫書架

  • p.167
    大風は突然不用意の二人を吹き倒したのである。二人が起き上がった時は何処も彼所も既に砂だらけだったのである。彼らは砂だらけになった自分たちを認めた。けれども何時吹き倒されたかを知らなかった。

    思ったより平易で読みやすかった。平和で静かで、少し気後れしがちな夫婦の家庭に落ちている陰の理由がだんだん明らかになっていく。結局核になっているものは夏目漱石の作品は同じテーマなのか、という感じはするけれど、崖の上と下等何かとつけて対比されている坂井家と描写や物語の進み方と明かし方といった手法が分かりやすく、そして意識的で良かった。

  • 崖下にある暗い家に住む宗助と御米。世間から背を向けて暮らす二人を視点に物語が進む。登場人物と情景がぴったりと合わさっている小説。ただ正直に言うと物語は大きな変化がなく淡々と進む。いつのまにか読み終わってた。ちゃんと読めてないかもしれない…

  • 朝日の連載終了。三部作は10代半ばで読んだ気がするけど、三四郎、それからぐらいまではまだ何とかだが、門は10代では面白みが分からない内容だったことが分かった気がする。今読んでもそんなに面白くは無いけど、主人公の気持ちが少しは分かる。明治末期の悩めるエリートの若者、高等遊民、没落したインテリ達の様子が描かれている三部作ということかな。閉塞感の漂う日本で下っ端役人をしながら隠れて生きる主人公と、妻?を奪った相手であり日本を捨て新天地・満州に行った親友。時代は違うが、成長期を過ぎ国内だけではじり貧の現代日本に通じるところはあるかもしれないが、いつの時代にも通じる普遍的な人間の内面を描いているところが漱石が愛されている理由なのかもしれない。寅さんに言わせりゃ「おまえ、さしずめインテリだな」と言われてしまいそうな主人公達の悩みは、最近なら流行の自己啓発本とかアドラー心理学でも読ませておきたくなる。

  • 三四郎、それから、門と続けて、朝日新聞で読む。学生時代、略奪結婚、そして、その後の暗雲たる生活。門では、宗助が座禅のため、寺を訪れるが、結局のところ、悟りに至るまで我慢できず、ろくでなしな主人公が、再び描かれている。

  • 宗助、お米の2人が世を憚り、こっそりと生活する孤独な様が、弟小六、叔父叔母との関係でも痛切に感じる。お米の三度の出産失敗と易者の不吉な言葉が重く押しかかる。小六の年から計算すれば、宗助たちは未だ30歳過ぎと若いはずなのだ。なんと暗い小説なのだろうか。しかし、2人が寄り添う愛情の描写が救い。2人は幸せではないかと感じるほど。過去を振返り、京都での宗助と安井・お米の出会いの場面が青春の美しさを感じる場面。そこから2人の「転落」の表現が何とも暗示的!「それから」の代助・三千代の続きとして読んでよいのかどうか、迷うところはあるが、続けて読むとどうしてもイメージを引き摺る。

  • 再読!

  • 遅々として進まなかったけれどようやく読了。
    難しいとか面白くないとかではなく、ちゃんと読み終えたかったから。
    やはりクライマックス、宗助が禅門をくぐるところになると一気に読みたくなる。
    次のページを捲ろうとしたらなく、これが最後の一文かと思うとぞくりとした。
    それにしても御米との関係がなんともいえずいいなぁ。
    漱石小説の中では子どもに恵まれない夫婦が多いけれども、それってなんなのだろうか。
    ちょうど『それから』『こころ』と読んだので共通点、相違点があってなかなか興味深い。
    さあ、次はどれを読もうかな!

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著者プロフィール

明治、大正時代の小説家、英文学者。1867年、江戸(東京都)に生まれる。愛媛県松山で教師をしたのち、イギリスに留学。帰国後、執筆活動を始める。『吾輩は猫である』『三四郎』『こころ』など作品多数。

「2017年 『坊っちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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