こころ (岩波文庫)

著者 : 夏目漱石
  • 岩波書店 (1989年5月16日発売)
3.95
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  • 157レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101117

こころ (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1914年(大正3年)。
    明治の精神とやらはともかく、生物として、配偶者の獲得は弱肉強食の仁義なき戦いである。だからKを出し抜いた先生については、私はさほど責める気になれない。人間はしょせん動物なのだから。第一、勝敗を決めるのは先生でもKでもなくお嬢さんであり、その点において3人の間に不正は何ら存在しなかったのだから。

    だがKは死ぬべきではなかったと思う。生きて愛する女性のために、未来を祝福してやるべきだったのだ。たとえ心で号泣したとしても。そこで涙をのんで祝杯をあげてやることこそ、どんな道を説くより見事な心意気じゃないかと私は思う。そうすれば2人は幸せになれただろうし、世界に女はお嬢さんだけではないのだから、Kだって別の女性と結ばれて幸せになり、「そんなこともあった」と笑って話せる日がきたかもしれない。

    「僕は馬鹿だ」とKは言う。馬鹿で結構ではないかと私は思う。「自分も含めて人間は、基本的にはみんな馬鹿」と気づいてからが、本当の修業ではないか。阿呆な自分を思い知って、じたばたあがいて悶絶して、それでもなお人生にイエスという、そのためにこそ覚悟を決めるべきではなかったか。有為の若い命を、花開く前に散らせてしまっては悲しすぎるではないか…。

    …と、突っ込み所は多いのだが、それは人間心理が異常なほどリアルに書かれている証拠である。個人的には、純文学というよりサイコサスペンスとして楽しませてもらった。いたる所でネタバレされているにも関わらず、これ程の緊張感を最後まで読者にキープさせる筆力は、流石というしかない。

  • (読んだ人が帯に書いたコメントより)
    ●あっ!
    ●この本は教科書を読む前に読んでおきましょう。
    ●やはり奥が深い。Kというやつは。
    ●KはなんでK?

  • 2016.02.29 再読
    みんな自己中心的なのが人間臭くていい。
    両親が卒業証書を喜ぶあたりが、子の成長を喜ぶのはどんな時代も一緒なんだとじんわり沁みた。敬愛する先生から遺書が届いたといって危篤の父の元を離れたことは、作中における死の重みを損なうんじゃないかと思ったけど、生みの親より育ての親を大事に思っている描写として無理やり飲み込んだ。卒業シーズンに毎年読むつもり。

  • 名作シリーズを読んでみようの第一弾として『こころ』を読んでみた。本当は岩波文庫のブックカバーが欲しくて『モンテクリスト伯』のセットに買った本。
    夏目漱石の名作ということ、そしてうっすらは内容知っているが本腰入れて読んだのは初めて。
    こころの葛藤は分かったが、これがどれほどの名作で、意味深いものが含まれているのかまでは自分には分からなかった。きっと読解力とか共感する力とかが低いんだろうな・・

  • 中学生のころに少しだけ読んだが、いま読み返すと、全然理解できていなかった。でも、こういった内容はある程度人生を経験して苦労を重ねないと理解しづらい本だと思う。逆に言えば、あと10年後に読めば、また理解の幅が広がり、深い読み方ができるに違いないと思う。

    両親と私
    この部分は、自分自身が、「私」と似た感覚を持っており、自分と重ねながら読んだ。自分も故郷を離れて大学に出て田舎の両親と都会の人との違いについて、「私」に対して共感する部分が非常に多かった。ああ、昔からそういう感覚はあるのだなと自分の、ある意味若くて幼稚だった部分を少し正当化できたような気がした。

    人間、ある程度、馬鹿でちゃらんぽらんなところがないと生きていけないなぁと思った。こうやって先生やKのように真面目な人は世の中を生きるのが辛くなってしまう。

    もがきながらも生きることに意味があるという、そういう泥臭い人生観とは違う、繊細でガラスのような芸術家のような心をもった人が、昔の日本には多かったのかな。夏目漱石だけでなく、三島由紀夫、川端康成、芥川龍之介、太宰治。みんなそういった繊細さにおける共通点がある。

    現代は、そういう繊細な美しさを感じる瞬間が少ない。テレビをみても下品なことばかり。

  • 昔、教科書に載っていたのを読んで気になったので読んでみました。
    さすが、の一言に尽きると思います。静かに展開されていく物語から、最後の最後まで目が離せない。言葉にはされていないけれど、読者が予想する最後は多分一緒。

  • 明治天皇の崩御や乃木大将の殉死など、時代背景も手伝って全体的に重苦しい。先生のお嬢さんに惹かれる気持ち、Kに対する嫉妬、Kの自殺によって追い込まれる心境は文学の薫り高く描かれていて良かった。 でもいくつか疑問が残る。人付き合いの苦手な先生に、どうして外国人と海水浴に行くような機会があったのだろう? 私は先生のどこに惹かれて接近したのだろう?あまり魅力的な人とは描かれていないと思う。 私は父の死目に合えたのだろうか?危篤状態の父親を置き去りにするのほどの結びつきを理解することは容易ではない。

  • まず、先生がなかなか秘密を告白しなかったことについて考えてみた。
    「私」は、「先生」に出会い先生宅に通うようになってから、しきりに「先生」から何かを学ぼうとしている。そのため、「私」は「先生」の過去をも教訓として学びたく思っている。しかし、「先生」からすれば、誰にも語りたくない過去であり、この過去について「私」に話しても何も与える価値がなく、むしろ軽蔑され、また告白しても自分の罪意識は減らないと思い拒んでいたのではないか。
    また告白をするには自らの死という意識がどこか片隅にあったのではないかと僕は考えた。
    この部分は<夏目漱石のこころについて読みなおす>という本の作者であおる水川隆夫さんは次のように述べている。
    【先生は昔犯した自らの罪について「私」に告白したところでこの罪意識は消えないと考えている。また告白は必ずしも告白した者が誠実である事を意味しないのである。告白による痛恨の真剣さを保障し他人に「教訓」を与えることを可能にするには、告白者の死しかないのではないかと思われる。】
    このことにより、僕が考えたことは間違ってなかったことが裏付けられる。
    また、<夏目漱石のこころについて読みなおす>を読んで、僕が「こころ」を読んだだけでは気づかなかった事も多く書かれていたことに気づいた。
    例えば、「私」が父の病気のため故郷に帰る前に「先生」の家へやってくる場面だ。【先生の家には木犀の一株がある。その木犀は黒ずんだ葉に被われている梢を見て、来るべき秋の花と香を想い浮かべていた。すると先生宅の電灯がふっと消えた。】という文がある。これは、ある暗示を示しているというのだ。この黒ずんだ木犀は先生の暗い過去の秘密を表わしている。その木犀は秋になると、花を咲かせ、独特の香りを放つ。その香りは「先生」の感動的な死を表わしているのではないか。また「ふっと消えた電灯」は先生の暗示を表わしているのではないかというのだ。
    僕が、この場面の文章だけでは到底このようなことを読みとることができなく普通に流して読んでいたのに対し、<夏目漱石のこころについて読みなおす>の作者水川隆夫さんは読み取り理解していた。
    このように、僕が全く注目していなっかった文や段落について<夏目漱石のこころについて読みなおす>という本は細かく解説していた。この本を読むことにより、「こころ」だけでは気づかない事にも気付けたため読んで大変によかったと思う。
    また夏目漱石の「こころ」という本自体も大変に面白く、後半の先生の過去について告白している場面ではこの物語に吸い込まれるように一気に読める。また「先生」の苦悩や文章中にまれに出てくる「先生」という人の本当の人柄は、読んでいて非常に考えさせられる。例えば「人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐に入ろうとするものを、手を広げて抱きしめる事の出来ない人―それが先生であった」である。これは、「先生」は本当のところ心のなかでは人に対し愛情があるのだが、Kに対する罪意識から表面には出せないという葛藤と長年戦っている様子が表わされた一文ではないかと思うのである。
    ここでは到底書ききれないほどの素晴らしい本なので、ぜひ「こころ」と「夏目漱石のこころについて読みなおす」の2冊を読んでみて下さい。

  • 15年ぶり3度目くらい。
    漱石の中ではさして面白くないと改めて思う。代表作とされてるのは、単に、後期漱石としては圧倒的にシンプルで、読みやすい、教材として使いやすい、というだけなんじゃないだろうか。
    第3部の先生の遺書なんて、だらだら長くて辛気臭くてけっこうつらいもの。(漱石にしては面白くない、というだけで、十分に面白いのは間違いないのだけど)
    名作だ古典だとこれから入ってしまい、漱石嫌いになる人も多そう。もしそうなら読み手も漱石も作品もかわいそうだと思う。漱石はもっと面白いんだよ。

  • 時間さえあるのなら、また読みふけりたい。明治時代だからこその人間関係、構成される人格、時代背景は現代人からすると不可解で単純ではない。
    私から始まり先生と御嬢さん友人Kそれぞれの目線に立ったとき、きっと物語の最後と同じ顛末になるのではないか?それが明治が作った皮肉で純白で無知で恐れいる内容だと思う。
    夏目漱石は生に執着があり時代背景を変えたかった、もしくは変わる時代を眼にのこしたかったのではないか?明治に抗っているようにもみえた作品だった。

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