文学評論〈上〉 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101179

作品紹介・あらすじ

英文学者・漱石が「18世紀英文学」のテーマで行なった講義。漱石は日本人としての主体性を鋭く自覚し、また堂々と貫きながら18世紀イギリスの作家と作品に、そうしてその背景をなす社会に切り込んでゆく。外国文学に関心をもつあらゆる人の必読書。

感想・レビュー・書評

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  • 大学在職中の漱石が行った講義の記録。序文によると『半途で辞職したため、思い通りに歩を進めることが出来なかった』そうだ。
    上巻(3章まで収録)では文学よりも18世紀英国、主にロンドンの社会状況が主題となっていて、これがまた面白い。なかなか本題である文学にたどり着かない……というのは欠点と見る向きもあるだろうが、これだけ面白ければ別にたどり着かなくてもいいや、と思ってしまったw それだと本末転倒かw

  •  1905年6月から1907年3月にかけて行われた(このとき漱石39-41歳)、「18世紀英文学」講義の記録。上巻は第三章までを収録。

     いわば〈文学原論〉として構想された『文学論』とは異なり、文学史家・文学研究者としての漱石の立場や資質がよくあらわれていると見た。明快な講義調で語られる内容はなかなか新鮮で、100年以上前のものとは思えないほど。「蠅の頭のような字」とされた漱石の勉強量の一端を垣間見ることができたように思う。

     漱石は、言語と時代を違えた文学テクストには翻訳不可能性がつきまとうが、テクストの構造は翻訳可能であり、ゆえに「文学の科学」は十分成立しうると考える。だが、それだけでは、「18世紀英文学」のテクストを貫く「趣味」が理解できない。同時代を生きた人々が、どんな環境と社会的な仕組みのなかで、どんな思考・発想を育て、どんな生活を送り、文学や芸術とどうかかわっていたかを知ることが必要である――。
     そう考える漱石は、ロック、バークレー、ヒュームといった哲学者や、コーヒー・ハウスやターバン、クラブ、ロンドン市民の日常生活、新聞事業の成立など、いわば文学テクストの下部構造から説き始める。時折差しはさまれる風俗描写はいきいきとしていて、読み物としても楽しめるほど。

     漱石は、「文学」を原理的に考えるだけではなく、「文学」を支える社会的な環境・条件にも注意を怠らなかった。理論だけでもないし、実作だけでもない、文学の歴史性に対する自覚が漱石のテクスト生産を支えていたことを、もう一度確認しておきたい。

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