夢十夜 他二篇 (岩波文庫 緑11-9)

  • 岩波書店 (1986年3月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (180ページ) / ISBN・EAN: 9784003101193

みんなの感想まとめ

多様なテーマと深い感情が織り交ぜられた短編小品集は、漱石の豊かな語彙と繊細な情景描写が光ります。特に「夢十夜」では、奇妙で幻想的な夢の世界を通じて人間の心理に迫り、読者を引き込みます。中でも、第一夜の...

感想・レビュー・書評

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  • 本書には、「夢十夜」「文鳥」「永日小品」の3つの小品がおさめられています。

    「夢十夜」
    人間の深層心理をえぐっているような、とても怖くてゾクゾクするもの(第三夜)もあれば、漱石の芸術観が表れていて興味深いもの(第六夜:運慶の彫刻)もあります。何度も読み返したくなる文章です。さすが!と思いました。

    「文鳥」
    漱石が執筆するときの“さらさら”というペンの音。文鳥の“千代々々”の声。静かな場面を演出していました。文鳥の観察がとても細やかで、文鳥を“淡雪の精”と表現しているのが素敵でした。漱石のちょっと不器用な一面や、もの悲しさが感じとれました。

    「永日小品」
    漱石の人柄を垣間見ることのできる随想集。題材は、子供のころ、ロンドン時代、東京での日常生活。おもしろくて笑えるもの、ちょっと不気味なもの、悲しさが伝わるものあり。

    私が好きなのは

    “柿”→喜いちゃんと与吉のやりとりが笑えました。

    “猫の墓”→悲しさの直接表現はないけれど、漱石の子供の行動を通して伝わりました。

    “山鳥”→ある青年にお金を貸す話。漱石の人の良さが感じられ、多くを語らずして心情に訴えかけるものがありました。他の本で、漱石が正岡子規に金銭面での援助をしていたことを知りました。漱石は、人柄を見てお金を貸していたと思われます。

  • 稀代の文豪・漱石の、信じられないほど豊富な語彙に支えられた的確な情景描写と絶妙な色彩感覚が織り成す繊細で美しい日本語を、気軽に、そして、無心に堪能できる小品集。「夢十夜」、「文鳥」、「永日小品」を収録。

    表題作「夢十夜」では、一人の男が見た、奇怪でとりとめがないのに不思議な吸引力のある十の夢が淡々と綴られています。
    たとえば。
    目の前で死んだ女との約束を守り、女の墓の前で太陽の浮き沈みを数えながら百年もの間再会の時を待ち続けた第一夜。
    鎌倉時代の名仏師・運慶がなぜか明治時代に現れ、ただの木材から一体の仏像を掘り出していくのを見つめた第六夜…。

    しっとりと水気を含んだ射干玉のような艶やかな暗闇を連想させる雰囲気を持つ、小さな幻想の世界に浸ることができます。

    同時収録の「文鳥」にも共通しますが、鋭い色彩感覚に裏打ちされた、楚々としながらも蠱惑的な女性描写は本当に秀逸で、清艶と言う他ない。

    漱石って、「三四郎」や「草枕」なんかもそうなんですけど、実は、男を振り回す「清楚系小悪魔美女」のキャラ設定や描写がすごく秀逸なんですよね。
    谷崎潤一郎的な「魔性の女」、「運命の女」とはまた全然違う魅力があって。川端康成の「清涼な少女趣味」とも違うし。

    「こころ」などに代表される漱石生涯の主題と言われた、深い心理描写によるエゴイズムの追求はこの作品群では影を潜めているので、長くて堅苦しいと漱石を敬遠している人にこそお勧めしたいです。
    何も考えずに、ただただ無心に、美しい日本語を堪能できるので。

  • 大作家漱石による小品集である。その文章は簡潔で、なかに〝音〟や〝色〟が感じられ情景が浮かぶ。こんな文章を書いたんだとテーマ、表現の幅広さに驚いた。

  • 32冊目『夢十夜 他二篇』(夏目漱石 著、1986年3月、岩波書店)
    「小品」と称される、漱石の短編作品を集めた文庫本。表題作の他、「文鳥」と「永日小品」という作品が収録されている。表題作は、10本の短い短編からなる連作である。胸を締め付けるほどロマンチックな「第一夜」、背筋も凍るほど恐ろしい「第三夜」、コメディとトラジェディが見事に同居している「第十夜」など、バラエティに富んだ短編が揃っている。夢と現の境目がわからなくなるような、独特の読後感に痺れる。漱石ビギナーにも易しい一冊。
    「こんな夢を見た。」

  • こんな夢を見た・・・というフレーズで始まる不思議な話し。全体的にホラー要素が強かったように思える。夢というのはあいまいで、だからこそ面白く。その無軌道な進行が物語に奥行きを持たせ、さらに不思議な迷宮の中をさ迷うような感覚を再現するのだ。特に、3夜の子供を背負う父親の話しが好みだった。後半、いきなり百年前に盲人を殺した話しになるのが怖い。7夜の行先不明の船旅行の話しは、明治時代の人たちの時代背景をよく表していると思った。

  • 夢十夜:1908年(明治41年)。
    こんな夢を見た、で始まるシュールで幻想的な十の物語。ソウセキなんて難しいと思っていたけど、こういうのは好きかも…と、学生時代に思った。

  • 「こんな夢を見たんだ」と話を切り出すことがある長男から借りた「小品」と呼ばれる短編集。気軽に読めるが内容は濃く、漱石の人となりを感じる。『夢十夜』はちょっと不気味。特に「第七夜」はホントの夢に出てきそう。一転、『文鳥』は微笑ましく展開するが、最後はちょと複雑。『永日小品』はブログ的なのりで漱石を味わえる。長男の“切り出し”は『夢十夜』の影響なのかな。

  • 「夢十夜」。
    黒澤明監督「夢」の元となった、「こんな夢を見た」で始まる(実際には前半のお話だけだけど)不思議な十篇の物語。

    「文鳥」。
    細部にわたる情景や心情などのうつろいの描写に感嘆した。ひょっとしたら初めて夏目漱石の偉大さにふれたかもしれない。

    「永日小品」。
    随筆とも短編ともつかない、落語の小噺のようで、それでいて漱石の身の回りを語ったものもあり、お話が詰まったショートショート。漱石の才能に振り回される。

    ページ数は少ないが、声に出してみるようにゆっくり読むのがおすすめ。

    正直、教科書から出ることなくなじめなかった漱石のイメージが、変わった。

  • 夢十夜、読んだことないと思っていたが、第一夜に覚えがある。これは、多分、学生時代に教科書で出会った気がする。

    第一夜が一番好き。美しい。亡くなる女性の願いは、真珠貝で墓を掘り、星の欠片で墓標を作ること。そして、さらに控え目に申し出たのが百年待ってほしい。そして、墓の傍で待つ男の下に、ゆりが花を手向けてきた。そして気づく。百年目だということに。
    この日本文学の繊細さ、美しさ。
    百年待ってほしいというのをためらう女性の奥ゆかしさ。
    どこに忘れ去ってしまったのでしょうか。

    解説本は多くあって、例えば、ゆりが何を象徴しているのかなどネットでも議論されているけど、ただ純粋に言葉や情景の美しさを楽しむだけではだめなのかと最近思ってきた。

    後は第七夜が好き。
    行方も、いつ接岸するのかも分からない船にいるより、死ぬことを選ぶ主人公。その瞬間、命がある方がよかったと悟る。深い。。。

    実際の夢を文字に起こしたのか、夢と言う設定の物語を創作したのか分からないが、うまい。これだけの短いページでどれも起承転結で綺麗に完結している。

    そして、どの主人公も結構孤独やら寂寥感がある。解説にあるように、「荒涼たる孤独に生きた漱石」を感じる。

    文鳥については、引用した個所が漱石の繊細さを現していて好ましい。

  • 夏目漱石の短編集。なんというかファンタジーチックな感じです。
    全てではないですが「こんな夢をみた」から始まるところも幻想的な導入っぽい感じです。

    久々に文学に触れたいけど、でもそこまで暗くもなりたくない場合、この夢十夜は最適かもしれません(笑)
    とは言いつつも、やはり昔の文豪ですので、そこまで明るい話ではありませんが。

    私のイメージですと夏目漱石は他の文豪と比べそこまでフワフワしているイメージはないのですが(これは昔の文豪に大変失礼な物言いなのですが、個人的な感想なのでご容赦を)、いい意味でこれは夏目漱石を裏切ってくれる作品だと思います。

    何度読んでもそこまで暗くはなりません(でもある程度は暗くなる。)

    虫食い感想としては・・・
    第一夜は純愛と思うべきか、こえーと思うべきか悩む。
    第七夜は無常というか人間の身勝手さを感じる。
    第十夜はそらみたことか!と思える。(苦笑)

    Wikiに要約がのっています(笑)
    <http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A2%E5%8D%81%E5%A4%9C>

  • 夢十夜はお気に入り。
    初めて読んだ時はなんかもう殴られたような衝撃が…
    夏目漱石の作品の中で一番好き。

  • 「夢十夜」は名の通り夢みたいな不思議な世界、「永日小品」はユーモアがあって読みやすい作品が多い。

  • こんな夢を見た。

    そこから始まる夢のお話を10話。

    夢のお話なので摩訶不思議。ここに何か意味やメッセージがあるのか、よくわからない世界です。

  • なんとも不思議な世界観の見せてくれる作品。短編だが味わい深い。持っていた漱石の印象とは少し異なる。

    後半の2作は、作者の日常を描いている。文鳥に対しては、
    飼ったからには面倒を見てほしいと思った。死なせたのは下女のせいにせずに。この作品によらず、所々少し冷酷な点が垣間見えるが、それがまたリアルなのかもしれない。

  • 正統派ブンガク
    かかった時間は…こまぎれに読んだのでわからない

    「夢十夜」「文鳥」「永日小品」が収録されている。まあ購入したのは「夢十夜」でも読んでみるかな、と思ったからだが、「永日小品」がものすごくよかった。

    思えば私にとっての夏目漱石は「吾輩は猫である」が始まりだった。小学生の自分にとってさえ、作品全体に流れる、なんとなく対象と距離をおく視点や、逆に対象に没頭する視点、そして日常や光景の切り取り方にユーモアのようなものを感じ取ったことを覚えている。

    「永日小品」はまさに、その「吾輩」の面白さと相通ずるものであると思う。それぞれの断片が、どこかもの悲しく、というか皮肉めいて描かれながら、そういうもの悲しさや皮肉めいた現実への愛というか、そこから面白さや美しさを同時に切り取るスタンスというか。

    今更ながら、名作に出会ったと思う。これは折に触れて再読したい。

  • 夢十夜も永日小品もいろんな話があって、解説を細かく調べたくなる話もいくつかあった。
    どんどんのめりこんでしまった。

  • 「夢十夜」は再読。
    初読の時は、これは全て比喩に違いないでも私にはそれを読み取る力がないのだとうなだれたけれど、様々な読書を経て自分には小説の比喩の読み解きという機能が備わっていないと踏ん切りがついたので、比喩であろうがなかろうが、私はそのまま読む、と素直に読んで楽しめた。
    多分一番人気だろう第一夜が、私も好き。
    「文鳥」「永日小品」は初読。
    どちらもさらりと書かれて読みやすいけれど、そこここにぞっとする冷たさを感じた。
    近代日本作家の多くは、人の醜いところをも描き切ろうとしていたと思うのだけど、漱石はその中でもとりわけ冷酷さ(冷血な性質というのではなく、さして奇異でない人の日常の中に不意に滴るような)を描いた人のように思う。

  • なんてきれいな第一夜。

  • 不思議。誰の夢?
    キラキラする感じ。かなりお伽噺。
    転生した人生みたいにも思う。
    夢の中。霞の中。

  • 夢十夜はタイトルそのまま、夏目漱石本人が直に見た十日分の夢を小説にまとめたもの。やはり夢だと思わせる何回りも捻くれた内容が目立つ。再読が必要

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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