夢十夜 他二篇 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101193

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  • 稀代の文豪・漱石の、信じられないほど豊富な語彙に支えられた的確な情景描写と絶妙な色彩感覚が織り成す繊細で美しい日本語を、気軽に、そして、無心に堪能できる小品集。「夢十夜」、「文鳥」、「永日小品」を収録。

    表題作「夢十夜」では、一人の男が見た、奇怪でとりとめがないのに不思議な吸引力のある十の夢が淡々と綴られています。
    たとえば。
    目の前で死んだ女との約束を守り、女の墓の前で太陽の浮き沈みを数えながら百年もの間再会の時を待ち続けた第一夜。
    鎌倉時代の名仏師・運慶がなぜか明治時代に現れ、ただの木材から一体の仏像を掘り出していくのを見つめた第六夜…。

    しっとりと水気を含んだ射干玉のような艶やかな暗闇を連想させる雰囲気を持つ、小さな幻想の世界に浸ることができます。

    同時収録の「文鳥」にも共通しますが、鋭い色彩感覚に裏打ちされた、楚々としながらも蠱惑的な女性描写は本当に秀逸で、清艶と言う他ない。

    漱石って、「三四郎」や「草枕」なんかもそうなんですけど、実は、男を振り回す「清楚系小悪魔美女」のキャラ設定や描写がすごく秀逸なんですよね。
    谷崎潤一郎的な「魔性の女」、「運命の女」とはまた全然違う魅力があって。川端康成の「清涼な少女趣味」とも違うし。

    「こころ」などに代表される漱石生涯の主題と言われた、深い心理描写によるエゴイズムの追求はこの作品群では影を潜めているので、長くて堅苦しいと漱石を敬遠している人にこそお勧めしたいです。
    何も考えずに、ただただ無心に、美しい日本語を堪能できるので。

  • こんな夢を見た・・・というフレーズで始まる不思議な話し。全体的にホラー要素が強かったように思える。夢というのはあいまいで、だからこそ面白く。その無軌道な進行が物語に奥行きを持たせ、さらに不思議な迷宮の中をさ迷うような感覚を再現するのだ。特に、3夜の子供を背負う父親の話しが好みだった。後半、いきなり百年前に盲人を殺した話しになるのが怖い。7夜の行先不明の船旅行の話しは、明治時代の人たちの時代背景をよく表していると思った。

  • 夢十夜:1908年(明治41年)。
    こんな夢を見た、で始まるシュールで幻想的な十の物語。ソウセキなんて難しいと思っていたけど、こういうのは好きかも…と、学生時代に思った。

  • 夏目漱石の短編集。なんというかファンタジーチックな感じです。
    全てではないですが「こんな夢をみた」から始まるところも幻想的な導入っぽい感じです。

    久々に文学に触れたいけど、でもそこまで暗くもなりたくない場合、この夢十夜は最適かもしれません(笑)
    とは言いつつも、やはり昔の文豪ですので、そこまで明るい話ではありませんが。

    私のイメージですと夏目漱石は他の文豪と比べそこまでフワフワしているイメージはないのですが(これは昔の文豪に大変失礼な物言いなのですが、個人的な感想なのでご容赦を)、いい意味でこれは夏目漱石を裏切ってくれる作品だと思います。

    何度読んでもそこまで暗くはなりません(でもある程度は暗くなる。)

    虫食い感想としては・・・
    第一夜は純愛と思うべきか、こえーと思うべきか悩む。
    第七夜は無常というか人間の身勝手さを感じる。
    第十夜はそらみたことか!と思える。(苦笑)

    Wikiに要約がのっています(笑)
    <http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A2%E5%8D%81%E5%A4%9C>

  • 夢十夜はお気に入り。
    初めて読んだ時はなんかもう殴られたような衝撃が…
    夏目漱石の作品の中で一番好き。

  • 「こんな夢を見たんだ」と話を切り出すことがある長男から借りた「小品」と呼ばれる短編集。気軽に読めるが内容は濃く、漱石の人となりを感じる。『夢十夜』はちょっと不気味。特に「第七夜」はホントの夢に出てきそう。一転、『文鳥』は微笑ましく展開するが、最後はちょと複雑。『永日小品』はブログ的なのりで漱石を味わえる。長男の“切り出し”は『夢十夜』の影響なのかな。

  • こんな夢を見た。

    そこから始まる夢のお話を10話。

    夢のお話なので摩訶不思議。ここに何か意味やメッセージがあるのか、よくわからない世界です。

  • なんとも不思議な世界観の見せてくれる作品。短編だが味わい深い。持っていた漱石の印象とは少し異なる。

    後半の2作は、作者の日常を描いている。文鳥に対しては、
    飼ったからには面倒を見てほしいと思った。死なせたのは下女のせいにせずに。この作品によらず、所々少し冷酷な点が垣間見えるが、それがまたリアルなのかもしれない。

  • 正統派ブンガク
    かかった時間は…こまぎれに読んだのでわからない

    「夢十夜」「文鳥」「永日小品」が収録されている。まあ購入したのは「夢十夜」でも読んでみるかな、と思ったからだが、「永日小品」がものすごくよかった。

    思えば私にとっての夏目漱石は「吾輩は猫である」が始まりだった。小学生の自分にとってさえ、作品全体に流れる、なんとなく対象と距離をおく視点や、逆に対象に没頭する視点、そして日常や光景の切り取り方にユーモアのようなものを感じ取ったことを覚えている。

    「永日小品」はまさに、その「吾輩」の面白さと相通ずるものであると思う。それぞれの断片が、どこかもの悲しく、というか皮肉めいて描かれながら、そういうもの悲しさや皮肉めいた現実への愛というか、そこから面白さや美しさを同時に切り取るスタンスというか。

    今更ながら、名作に出会ったと思う。これは折に触れて再読したい。

  • 夢十夜も永日小品もいろんな話があって、解説を細かく調べたくなる話もいくつかあった。
    どんどんのめりこんでしまった。

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著者プロフィール

夏目漱石(なつめ そうせき)
1867年2月9日 - 1916年12月9日
江戸・牛込馬場下(新宿区)生まれの小説家、評論家。本名は「夏目金之助」(なつめ きんのすけ)。1890年、帝国大学文科大学英文科に入学。1895~96年には『坊っちゃん』の舞台となった松山中学校で教鞭を執る。1900年、イギリスに留学。1905年、『吾輩は猫である』を俳句雑誌「ホトトギス」に連載し始め、作家活動を本格的に開始。1907年、朝日新聞社に入社。以降、朝日新聞紙上に『三四郎』『それから』『こころ』などの代表作を連載。日本の文学史に多大な影響を与えており、作品は多くの人に親しまれている。学校教科書でも多数作品が採用されている。

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