子規句集 (岩波文庫 緑 13-1)

著者 :
制作 : 高浜 虚子 
  • 岩波書店
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101315

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  •  正岡子規の俳句。一年か二年かかけてトイレで読んでいた。夏に冬の句を読んでいることがあった。冬に夏の句を読んでいることがあった。声に出したり、出さなかったりした。万葉集を肯定とか、与謝蕪村の発掘とか、写実とか、力強さをもとめたわりに非常に病に苦しんだとか、それくらいしかわからなかった。慶応3年という、漱石、外骨、熊楠と同じ年に生まれた。
     冬に読んでいた句が、そのまま冬に読まれることもあった。夏に読んでいた句が、そのまま夏に読まれることもあった。何年もトイレの本棚にあったので、本のカバーがトイレの水でヨレヨレになっていた。誰かが手をあらって、落ちた水滴のせいか。汚い本になった。中の紙もゴワゴワになった。もし古本屋に売っても、アマゾンではさばけない。どこにもいけない本になった。

    冬 明治25年 26歳の時。

      君が代は大つごもりの月夜哉

      猫老て鼠もとらず置火燵

      君味噌くれ我豆やらん冬ごもり


     この年、陸羯南の新聞「日本」に入社。陸は子規の世話をした恩人。そして陸は誰よりもナショナリストだった。しばらくたって、日本がアメリカの植民地になっているとは、陸は夢にも思わないだろう。切なすぎる。

    明治28年 29歳。
    (子をまうけてすぐに失ひたる人につかはす)

      月ならば二日の月とあきらめよ


     正岡子規、『俳諧大要』を新聞「日本」に連載はじめる。日清戦争従軍中に発病して、松山で滞在しながら書いた、俳句マニュアルだ。俳句を啓蒙した。新しいスタイル。それは、目の前にあることをしっかりとらえて、ゆるがない。その通りである。その通りであるという突抜がある。それこそが真理だと、句から伝わってくる。


    明治35年 36歳。
    陸前石巻より大鯛三枚氷につめて贈りこしければ

      三尺の鯛生きてあり夏氷


     5月に新聞「日本」紙上に、『病牀六尺』の連載を始めた。この年の9月に子規は死去する。若く死んだから、なのか。彼がもし、長生きだったのならば、つまり80年生きたのならば、ちょうど、原爆を落とされて占領されるのを見ながら亡くなることとなる。子規はどんな句をつくっただろう。東日本の地震のころまでは生きられないだろうけれど。子規の句の中では、この夏氷の作が、一番だと思った。

  • こんなこと俳句の神様に失礼だが、晩年の作品は力の抜けた秀作が多いように感ずる。

  • 高橋の小説家になるための本の紹介本である。ものすごい量の俳句である。ところどころ有名な俳句もあるがほとんどは知られていない。夏のものであれば、「金持ちは涼しき家に住みにけり」、という句がこの酷暑にピッタリであるのになぜかよく知られた俳句ではないのはなぜだろうか。現在でも通じる俳句である。

  • 漠然とした風景画や風景写真の細やかな感想ではなく、生活の中の一コマからさりげなさをいっぱいに詰め込んだ、素敵な一冊

  • 言葉が美しい

  • 月並みではないか。論は良いが、実作はなかなか伴わず、碧虚を得てようやくホトトギスは成ったと理解できる。それにしても、鶏頭を外すとは虚子も頑迷だろう。

  • 子規句集
    (和書)2009年09月01日 20:50
    岩波書店 正岡 子規, 高浜 虚子


    正岡子規の随筆を読んでいると、たまに出てくる俳句がとても面白かった。それで今回、この本を読んでみました。

    俳句はとても良い酔い方をするように感じます。抜けのいいアルコールを飲んだ時のようなすっきりした酔い心地を感じる。

    他にも正岡子規の作品を読んでみたいな。

  • ★氷解けて水の流るる音すなり

    ★筆禿びて返り咲くべき花もなし

    土一塊牡丹生けたる其下に

    首あげて折々見るや庭の萩

    ★春の夜や屏風の陰に物の息

    ★春雨のわれまぼろしに近き身ぞ

    梅雨晴れやところどころに蟻の道

    青々と障子にうつるばせおかな

    ★添竹も折れて地にふす瓜の花

    ★白妙のきらきらとする暑さかな

    冬枯に中に家居や村ひとつ

    ★胡蝶飛び風吹き胡蝶又来る

    あたたかな雨が降るなり枯葎

    鶯や山をいづれば誕生寺

    山々は萌黄浅黄やほととぎす

    夕日負ふ六部背高き枯野哉

    木枯やあら緒くひこむ菅の傘

    水鳥のすこしひろがる日なみ哉

    ★落花樹にかへれど人の行へ哉

    きさりんと体のしまりや秋の立つ

    梅雨晴れやところどころに蟻の道

  • 正岡子規は35年という短い生涯の間に多彩な文学 活動をおこなったが、その文学は俳句にはじま り、最後まで片時も俳句から離れることはなかっ た。『ホトトギス』を主宰、蕪村を再発見した近 代俳句の先駆者子規の秀句2306句を選び、その 俳句世界をあますところなくつたえる。改版にあ たり、新たに初句索引を付す。

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