歌よみに与ふる書 (岩波文庫 緑 13-6)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (146ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101360

感想・レビュー・書評

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  • 正岡子規のことは随筆を通して知った。歌のことはほとんど分からない。
    「平安中期の成立以来和歌の規範とされてきた古今集を否定し、万葉集への回帰を提唱する」という本書の性質から考えて、背景知識なしに初めて触れる歌論がこれというのもどうなのかと気にはなった。が、ともあれ読んでみた。笑った。

    大将が絶好調で気炎を吐く様は痛快の一言。「貫之は下手な歌よみにて『古今集』はくだらぬ集に有之候。」ばっさり。よくもこんな風に思い切って書けるな。さすがは子規。論の内容云々以前に、彼のこういうところが大好きだ。
    「ただ自己が美と感じたる趣味をなるべく善く分るやうに現すが本来の主意に御座候。」主義主張は一貫しており、明快である。具体的な歌を例として引きながらその好悪を論じているので、大変わかりやすい。そしてただひたすらに熱い。行間から立ち上る熱気は他に類を見ない。「明治」という時代を感じる。

    しかし、子規の凄まじい勢いに思いっきり感化されてしまった気がするなぁ。これを機に様々な歌集・歌論に挑戦して、自分なりの考えを持てるようになりたいと思った。

  • 近代短歌がどのような思想から生まれたのか、触れることができます。

  • ものすごいむかつくとともに
    ものすごい人だと思った。

    私は古今集が、そして躬恒が好きなので、
    躬恒の歌を「つまらぬ歌なり」
    と切り捨てられるのはとてもむっとくる。
    しかし、敵も然る者。というか、立場の一貫性といい、雄々しさといい、
    この人に言われるんだったらしゃーないなー
    と最後には思ってしまう。
    共有できない価値観はあれど、これほど明快ですがすがしい歌論もほかにないと思う。
    ついて行く人が多かったのはわかる。
    特に、明治維新があって、西洋の思想が一気に流入して、消化不良をおこしかねない状態で、どんどんそれを食べていかなければならなかった、そして食べたいとも思っていただろう、そういう時代であればこそ。

  • 駄洒落的なものへの狭量さ
    理屈っぽいもの痛快で面白い
    貫之は下手とか言っちゃうやば
    三区切れの解説、字余りの面白さ
    たしかに実朝の歌は面白い
    現代では高橋源一郎に気に入られるゲーでは当てはるかもしれないし"短歌ブーム"を支えているのは理屈の歌な気もする
    参考になるし元気なるし面白いしもっと
    客観の「も」は理屈
    皮肉っぽいものいい
    たぶんひろゆき好きな人は正岡子規好きだと思う知らんけど逆はますます知らんけど
    時間を詠む
    景樹は馬鹿なり

  • まだ読み畢っていないが、勉強になる。斎藤茂吉の『万葉秀歌』を読んでいても今ひとつ何がいいたいのかわらかず、その師匠である正岡子規の本を読めばわかるかと思って買ってみたが、買ってよかった(斎藤茂吉の言いたいことがわかったとは言っていない)。
    全体が候文で書かれていて、とっつき難いのかと思いきや、「候」をとって了えば正直現代文とかわらない(それは言い過ぎか)。というか、正岡子規自身もふざけて候文書いているのではないかと思うくらい、文章自体は至極平易でわかりやすい。斎藤茂吉の本のようになんとなくのフィーリングばかりで説明されるのではなく、かなり論理的で、実例もあってわかりやすい。

  • 歌よみに与ふる書
    (和書)2009年09月19日 22:43
    1983 岩波書店 正岡 子規


    正岡子規に興味を覚え、岩波文庫で何冊か読んでいます。短歌より俳句の方が取っ付きやすいと思っていたけど、この本を読んで瞠目させられることが多くとても良かったです。「子規歌集」も読んでみたくなりました。

  • 仰る通りすぎて逆に不安になるくらい。
    ただまあ子規が善き歌とする基準はかなり範囲が狭いかなとは思う。和歌は万葉集以後もはやマウンティングツールそのものになった訳だし、ラップバトルや大喜利的な楽しみ方をされてきた事を考えれば和歌の文学的評価のみでけちょんけちょんに言うこともないけどなという苦笑はある。
    しかし、たとえば歌詠みがそのラップバトルや大喜利の歌をもって日本文学の頂点だとか言って威張っていたとしたらそれは滑稽だし、矢鱈と形式に拘っていてはもはや発展しないと言うのも正しい。そして実際、かくのごとし。
    何はともあれ、曙覧の歌をみんなで愛でようよ。

  • 新書文庫

  • 大変有意義で楽しく読める書だった。

    ’’近来和歌は一向に振ひ不申候’’

    と、いきなりその時代の歌詠みに対する皮肉からスタートしている。
    更には、

    ’’貫之は下手な歌よみにて『古今集』はくだらぬ集に有之候’’

    と、気持ちがよいほどに貫之と古今集をこきおろしている。
    正に、子規の文学に対する考え方がみてとれる内容が書かれていると感じる。
    本書を読むと、正岡子規がそれ以降の日本文学に与えた影響が少しばかりではあるが、分かるのではないだろうか。
    本当に素直に詠んだ歌というもの、そうであれば万葉のような古いものでも、新しいものでも素晴らしく、既成の概念にとらわれない斬新で、近現代文学のスタートの一つの論考ともいえる。
    確かに万葉は力強さあり、素朴さあり、素直さあり、華美でなく技巧的なものも多くはないと思える。反面古今以降は虚飾性が強く、美しいものを美しい言葉で詠むといった華美に走っているというようなことも何となく感じるだろう。
    大変面白く読めるので、おすすめだ。

  • 古今集を頂点とする短歌の価値観に異を唱え、新しい短歌のあり方を提唱する。名歌と呼ばれる作品をさんざんこきおろしていて、半分ジョークみたいで笑えてくる。だけど、正岡子規さん大まじめに短歌のあるべき姿を唱えていて、それがまたアンバランスで面白い。

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