- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003101384
作品紹介・あらすじ
子規が日夜愛用した中国産の墨の銘をとって名づけられた本書は『墨汁一滴』『病牀六尺』『仰臥漫録』とならぶ子規晩年の四大随筆の一つ。病床にあって強く濃く生きた人の記録であり、野球が大好きだった子規が書きとめたベースボール紹介の貴重な一文を含む。
感想・レビュー・書評
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「松蘿玉液」正岡子規著、岩波文庫、1984.02.16
115p ¥420 C0195 (2024.03.12読了)(2024.03.06借入)(2004.12.15/8刷)
積読中だった『仰臥漫録』を読み終えたので、もう一冊ぐらい子規の著作を読んでみようと図書館の蔵書検索で探してみたら、この本があったので借りてきました。
『墨汁一滴』や『病壯六尺』はありませんでした。残念です。
新聞『日本』に掲載した随筆をまとめたものということです。ベースボールについての説明、西洋画と日本画について、伊藤博文と大隈重信について、人身攻撃について、俳句批評について、俳句や和歌の暗合や剽窃について(よく似た作品がすでにあることを知らずに作った作品を暗合と呼んでいるようです、辞書を引くと「偶然に一致すること」と書いてあります。)、井原西鶴・松尾芭蕉・近松門左衛門について、菓物について、実に多岐にわたっています。
【目次】
松蘿玉液 (新聞『日本』明治29年4月21日~12月31日掲載)
解説 加賀乙彦
●大は小を兼ねる(31頁)
落語家曰く大は小を兼ぬるといえども杓子は耳搔の代わりを為さずと。
●俳句の類似(78頁)
俳句における類似極めて多し。これ一は俳句の短きがためと、一は学問見識なき者が俳句を作るためとの二原因に帰すべし。
☆関連図書(既読)
「仰臥漫録」正岡子規著、岩波文庫、1927.07.10
「坂の上の雲(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
(表紙より)
子規が日夜愛用した中国産の墨の銘をとって名づけられた本書は、『墨汁一滴』『病牀六尺』『仰臥漫録』とならぶ子規晩年の四大随筆の一つ。病床にあって強く濃く生きた人の記録であり、野球が大好きだった子規が書きとめたベースボール紹介の貴重な一分を含む。新聞『日本』明治29.4.21~12.31連載。
(2024年3月13日・記)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
子規の四大随筆というのがあるそうで、これはその1作目。1896年に新聞『日本』に連載されたもので、あとの3作(『墨汁一滴』、『病床六尺』、『仰臥漫録』)よりも若々しい印象を受けた。ベースボールの詳細な紹介、果物評など、読みどころは多い。樋口一葉への高評価、伊藤博文と大隈重信の比較、芭蕉、西鶴、近松の比較など、人物評は特にシャープ。
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ベースボールの紹介で有名。
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表紙によると『墨汁一滴』『病牀六尺』『仰臥漫録』とならぶ子規晩年の四大随筆の一つとされているらしいが、他三作と比べると知名度は低いかもしれない。
ベースボールに関する膨大な記述からは、子規の野球に対する情熱が窺える。当時の日本では野球はほとんど知られていなかったようだが、何とかしてその面白さを読者に伝えようと図解まで交えつつ筆を揮う子規。熱っぽい興奮が行間に満ちている。
これで四大随筆はすべて読了したことになる。
子規の文章はいつ読んでも痛快だ。もっともっと読みたかった。 -
薄い書物でありますが、これがまことに面白い。正岡子規後期の随筆作品であります。
文庫カヴァーの説明によると、表題は子規が愛用してゐた中国産の墨の銘ださうです。
話題は多岐にわたり、政治家や文学者を論じ、ベースボールを愛し、俳句の剽窃とは何かを論ずる。その断定調に笑つてしまふこともあります。
伊藤博文は「利口なやうで愚」、大隈重信は「行届いたやうで行届かぬ」と評し、「人身攻撃」の妥当性を説く。
西鶴・近松・蕪村の3人を元禄の三文学者と称しながら、それぞれの欠点をあげつらふ。俳句で酷似する作品が多いことを取り上げて、「暗合か剽窃か」を一つひとつ検証し、優劣を論ずる(読み応へあり)。
世評や権威とは無縁の子規だから、読んでゐて痛快であります。
しかし本書で目をひくのは、やはりベースボールを紹介する文章でせう。この薄い本の中で10ページ近くも費やしてゐます。しかも図解入り。
「ベースボールに要するもの」として、「凡そ千坪ばかりの平坦なる地面(芝生ならばなほ善し)皮にて包みたる小球(直径二寸ばかりにして中は護謨、糸の類にて充実したるもの)投手が投げたる球を打つべき木の棒(長さ四尺ばかりにして先の方やや太く手にて持つ処やや細きもの)...」と丁寧に解説してゐます。が、当時の人は多分イメエヂが掴めなかつたことでせう...
しかし、岩波文庫も高くなつたものですな。この薄さで420円とは...
http://ameblo.jp/genjigawa/entry-11156602480.html -
特に、病が特に亢進した後に書かれた、12月以降の記事が心に迫る。
12月23日の京都を訪れた記事や、12月28日の果物の記事など、まるでその場で子規の話を聞いているかのような思いにさせられる。