蒲団・一兵卒 (岩波文庫 緑 21-1)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102114

作品紹介・あらすじ

家庭があり知識も分別もある、世間に名を知られた中年の作家の女弟子への恋情-花袋は、主人公の内面を赤裸々に暴き立て、作者自身の懺悔録として文壇に大きな衝撃を与えた、日本自然主義文学の代表作。日露戦争の最中ひっそりと死んでゆく哀れな一兵卒を描いて読む者の胸をうつ小品「一兵卒」を併収。

感想・レビュー・書評

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  • 引き続き昔の文学を…の流れで、田山花袋作品を。
    オーディオリスニングにて読める代表作をパラパラ(少女病、一兵卒、ネギ一束)と…代表して感想をここに記載。

    うーん…ざっくりと言うとまあまあかなぁ…
    個人的には、太宰治とか谷崎潤一郎とかの方が好みだったかなと。

    率直に表現すると、文章も内容もそこまで深みを感じないというか…
    この時代には新しかったのかもしれませんが、今読んだときにひときわ優れた何かが…というのは、正直自分は感じられなかったですm(_ _)m

    とはいえ、元々の目的だった「自然主義文学」を体験することはできたかなぁと。

    あと、自分の仮説「夏目漱石以降は圧倒的に読みやすい説」は改めて正しいのかなぁと(´∀`)
    森鴎外はムズかったけど、田山花袋はひとまず読めたので(笑)


    <印象に残った言葉>
    ・死と相面しては、いかなる勇者も戦慄する。

    ・九月一日の遼陽攻撃は始まった。


    <内容(「BOOK」データベースより)>
    日本の自然主義文学運動の先駆けとなった作家、田山花袋の短編小説。初出は「太陽」[1907(明治40)年]。かつて少女小説の書き手として人気を博していた杉田古城は、現在では飽きられ、雑誌の編集でなんとか生活していた。その彼の唯一の楽しみは通勤電車で美しい女学生を見、妄想にふけることだった。変態的性欲をもった男の末路を描いている。

  • ラジオ番組で、作家の小川洋子さんとアシスタントの方が、花袋の性癖を女子目線で話していた。その印象が強く、『蒲団』には「嫌ぁぁぁっ!」っていう女性たちの声が聞こえてくるくらいの変態ぶりを期待していた。

    本作は、妻子ある中年作家・竹中時雄が、若くて美しい女弟子に恋心を抱く話です。
    年頃のお嬢さんを預かっているのだから、煩悶する時雄の心情は理解できる。時雄の身勝手さは、プラトニックな愛を貫いた結果の言動なのでしょう。

    蒲団の場面では、喪失による悲哀や絶望が伝わってくる。あれを変態の一言で片付けることは私にはできない。

  • 「蒲団」
    ・・笑。なんじゃこりゃ?
    タイトルを「蒲団」にするようななんじゃこりゃな話で、感心するやらおかしいやら。

    自分の恋愛を赤裸々に語るが恋愛第一になれず、常識に囚われた主人公(著者自身)。
    明治40年とはそういう時代だったのかもしれない。
    ちょっと進めばもっと自由に俺様な恋愛が書かれだすのに・・・同情してしまう。

    こういう人は世間体を優先させてよかった。全登場人物にとって。間違っててもイイ!と突き進んでくれないと読者も心配。結末に、ハーっ、よかった、と。文章は美しく会話もイキイキ。 なるほどな結末。
    以前、世界ふしぎ発見でアントワネットの恋人・フェルセンの落札した遺品は寝具。ゲストの山崎邦正が肉体関係がなかったからだと言ったのがなるほどねーと思っていたら、ここにそういう心理汚描写が書かれており、唸った。
    解説を読むと本人もヤケクソ気味である感満載。

    中島京子さんがこれの続編を書いているというので、こちらを読んでみた。アマゾンでみたら変態先生云々となっていて、そりゃひどい言い方だしょ?と思ったが。


    「一兵卒」
    日露戦争の時代に戦争をこのように描写するとはスゴイことだと思う。
    率直な人なのに悪い人になれない田山センセイ。

    • minikokoさん
      へー、そうなんだ。読んでみたくなったよ。
      「少女病」も、読んで解説して下さい。これも、すんごい、あんまりなタイトルだと思うんで〜〜〜。
      へー、そうなんだ。読んでみたくなったよ。
      「少女病」も、読んで解説して下さい。これも、すんごい、あんまりなタイトルだと思うんで〜〜〜。
      2015/03/11
    • くろねこ・ぷぅさん
      この人の作品のタイトルは小学生の作文みたい。そのままズバリなのね。
      「蒲団」は自分の心の中の恋愛の葛藤を今ならまだ若い34~5の話をぶちま...
      この人の作品のタイトルは小学生の作文みたい。そのままズバリなのね。
      「蒲団」は自分の心の中の恋愛の葛藤を今ならまだ若い34~5の話をぶちまけたっちゅう、しかも相手の女性知らんからそんなこと、みたいなのを、どうしゅることもできずに暴露したんどす。

      なんちゅうか、自分を中年とか老人に近い感覚で書いててね、現代人じゃないのが痛くかわいそうです。
      下宿していたその女性が残した布団に寝て匂いを嗅いで泣いた・・・という
      図書館で借りたけど、少女病も図書館じゃないと読めないなー。
      本人の画像がまたさー・・・
      2015/03/12
  • 「蒲団」
    何も知らずに表紙のあらすじのみを見てから読んだので、まず主人公が既婚者であることに驚き。それも子供が小さいし、末の子は生まれたばかり。
    それなのに女弟子に恋心を抱くとは何事。
    最初から主人公の考えが今の世間的な意見からずれすぎていて不快感を感じた。
    芳子も美人ではあるのだろうが特別な魅力は感じない。
    しかし物語の展開は面白く、文章は綺麗。
    最後で、蒲団とはこういうことか、と納得して笑えてきてしまった。
    当時は文壇に衝撃を与えたそうだが、これからどんどん読まれなくなっていく作品だと思う。

    「一兵卒」
    蒲団を読んだ後なので期待していなかったのだが、文章が良い。
    扱われるテーマによって感じ方が変わる。
    飾っておらずリアルで、悲哀が心に迫ってくる作品。

  • 『一兵卒』がすばらしい。戦争で死んでゆく兵の包み隠さざる心の内を描き切っているように思える。殊更劇的に表現するわけでもなく、淡々とした筆致ながら溢れくる兵のそのままの姿を30頁にも満たない中に収めているのは見事というほかなく、読後の余韻が生半可ではない。

    『蒲団』は文学史に与えた影響も大きいとされるが、芳子にここまで執着する理由が分からないままその醜態だけを見せられている気がして、有名な最後の場面にも十分な説得力を感じられなかった。

  • 2回目読了
    蒲団はやはり男臭い内容で面白い
    また嗅覚の記述も際立っており、滅多にない書き方がなされていて新鮮

  • 田山花袋読んだことなかったなと思って借りてきた。
    恋愛の庇護者であろうとして結局嫉妬でしかない主人公の滑稽さと、ラストシーンのさじ加減がいいと思う。ラストシーンではなんとなく主人公は自分の滑稽さには気g付いていたのではという気もする。ストレートに読めばむしろそこには盲目で感傷に浸っているように読めるかなと思うので穿ちすぎかとも思いますが。
    30歳では若い女性を待ったくそんな目でみないのは厳しいのではないかという気もする。時代を感じる。

    解説など読んで、むしろ売れてなかった田山花袋が賛否両論ながら注目された作品と知って、実際主人公が横柄に感じられるほどは横柄にふるまっていなかったのかもしれないなと思った。

    あと冒頭で「文学者だけに、この男は自ら自分尾心理を客観するだけの余裕を持っていた」って一応は自分が主人公であるがゆえのメタ的なはなしかとは思うけど、結局自分をコントロールできてないあたりとか感が見るとこの描写も滑稽だなと思う。

    一兵卒は、こういう構成の話大好きだなと思った。戦争文学など触れてこなかったからあまり情景が目に浮かばないのが残念。故郷に残した若い奥さんどうするんだろうなと思った


    成増図書館 岩波文庫

  • みっともない男の内面をこれでもかと見せつけられて、正直いい気持ちのする作品ではありませんでした。なんだかもやもやするのは、きっとこんな言動は恥だと思うからこそ禁じているものの、自分のなかにも時雄に同調、共感できてしまうポイントがあるからなんだろうと思う。
    解説を読むに、その辺りが当時文壇で評価されたんでしょうかね。
    だれも幸せにならない結末ですが、この時代の小説てこんなんばっかりなような…
    ラストシーン、やってることはすごくみっともないんですが、強風に煽られる樹木と部屋に射す光、なぜだか情景描写が胸に刺さりました。

  •  最初は男尊女卑思想に凝り固まった独白に驚く。妊娠中の妻に向かって産褥で死んだらあの美人教師を後添えに貰えるか、女弟子に女は容姿が大事、容姿が悪いと才があっても男に相手にされないよ、など。この人は人間性がよろしくないよ、と思った後に続く、女弟子への欲に走った赤裸々な本音ラッシュに頭を抱える。もう少し包み隠してもいいんじゃないのか、君……。確かに前評判通りに赤裸々だった。 
     外面の良さと本音の落差が酷いが、これが人の本性でもあるよなあ、こういう風になることもあるよなと思えば沁みる。
     文章の流れるような調子や唄うようなところは好きだったので、「田舎教師」他をもう少し読んでみたくなった。

  • 〜蒲団〜
    文学者である時雄のところに芳子という女学生が弟子入りを志願してくる.時雄の芳子に対する否定的な態度は次第に肯定的へ移り変わり,いつしか時雄は芳子に恋心を抱くまでになった.ある時芳子を目当てに恋人の秀雄が上京してくる.時雄は監視者として二人の様子を観察し,芳子の関心を自分へ向けさせるようにさり気ない行動をするも無駄に終わる.そしてついに時雄は芳子を破門し,父親と共に田舎へ帰らせる.虚無感に包まれた時雄はかつて芳子のいた部屋に入り,彼女の使っていた蒲団に顔を埋めて泣くのであった.

    最後の場面で時雄が流す涙の所以を突き止めるのはそう容易いことではない。

    〜一平卒〜
    とある一兵卒の最期を生々しい表現をもって描いた作品。「苦しい!苦しい!苦しい!」の連呼は見るに堪えない。脚気が生死に関わる病気だったことは知らなかった。静かなところでひっそり生涯を終えたいという願いは脚気を患っている以上叶わぬ夢に過ぎなかった。あまりにも酷であるとしか言えない。

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著者プロフィール

1872年群馬県生まれ。小説家。『蒲団』『田舎教師』等、自然主義派の作品を発表。1930年没。

「2017年 『温泉天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田山花袋の作品

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