蒲団・一兵卒 (岩波文庫)

著者 : 田山花袋
  • 岩波書店 (2002年10月16日発売)
3.36
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  • 80レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102114

作品紹介

家庭があり知識も分別もある、世間に名を知られた中年の作家の女弟子への恋情-花袋は、主人公の内面を赤裸々に暴き立て、作者自身の懺悔録として文壇に大きな衝撃を与えた、日本自然主義文学の代表作。日露戦争の最中ひっそりと死んでゆく哀れな一兵卒を描いて読む者の胸をうつ小品「一兵卒」を併収。

蒲団・一兵卒 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ラジオ番組で、作家の小川洋子さんとアシスタントの方が、花袋の性癖を女子目線で話していた。その印象が強く、『蒲団』には「嫌ぁぁぁっ!」っていう女性たちの声が聞こえてくるくらいの変態ぶりを期待していた。

    本作は、妻子ある中年作家・竹中時雄が、若くて美しい女弟子に恋心を抱く話です。
    年頃のお嬢さんを預かっているのだから、煩悶する時雄の心情は理解できる。時雄の身勝手さは、プラトニックな愛を貫いた結果の言動なのでしょう。

    蒲団の場面では、喪失による悲哀や絶望が伝わってくる。あれを変態の一言で片付けることは私にはできない。

  • 「蒲団」
    ・・笑。なんじゃこりゃ?
    タイトルを「蒲団」にするようななんじゃこりゃな話で、感心するやらおかしいやら。

    自分の恋愛を赤裸々に語るが恋愛第一になれず、常識に囚われた主人公(著者自身)。
    明治40年とはそういう時代だったのかもしれない。
    ちょっと進めばもっと自由に俺様な恋愛が書かれだすのに・・・同情してしまう。

    こういう人は世間体を優先させてよかった。全登場人物にとって。間違っててもイイ!と突き進んでくれないと読者も心配。結末に、ハーっ、よかった、と。文章は美しく会話もイキイキ。 なるほどな結末。
    以前、世界ふしぎ発見でアントワネットの恋人・フェルセンの落札した遺品は寝具。ゲストの山崎邦正が肉体関係がなかったからだと言ったのがなるほどねーと思っていたら、ここにそういう心理汚描写が書かれており、唸った。
    解説を読むと本人もヤケクソ気味である感満載。

    中島京子さんがこれの続編を書いているというので、こちらを読んでみた。アマゾンでみたら変態先生云々となっていて、そりゃひどい言い方だしょ?と思ったが。


    「一兵卒」
    日露戦争の時代に戦争をこのように描写するとはスゴイことだと思う。
    率直な人なのに悪い人になれない田山センセイ。

  • 〜蒲団〜
    文学者である時雄のところに芳子という女学生が弟子入りを志願してくる.時雄の芳子に対する否定的な態度は次第に肯定的へ移り変わり,いつしか時雄は芳子に恋心を抱くまでになった.ある時芳子を目当てに恋人の秀雄が上京してくる.時雄は監視者として二人の様子を観察し,芳子の関心を自分へ向けさせるようにさり気ない行動をするも無駄に終わる.そしてついに時雄は芳子を破門し,父親と共に田舎へ帰らせる.虚無感に包まれた時雄はかつて芳子のいた部屋に入り,彼女の使っていた蒲団に顔を埋めて泣くのであった.

    最後の場面で時雄が流す涙の所以を突き止めるのはそう容易いことではない。

    〜一平卒〜
    とある一兵卒の最期を生々しい表現をもって描いた作品。「苦しい!苦しい!苦しい!」の連呼は見るに堪えない。脚気が生死に関わる病気だったことは知らなかった。静かなところでひっそり生涯を終えたいという願いは脚気を患っている以上叶わぬ夢に過ぎなかった。あまりにも酷であるとしか言えない。

  • 教え子の蒲団をクンカクンカ嗅ぐ、この作品。

    この私小説の私小説としての衝撃性を味わうには、出版当時に読む必要がでてくる。教え子である芳子には、花袋に師事していた岡田美知代というモデルが存在するためだ。
    「蒲団」の出版より3年後に岡田さんがスバルに出した「ある女の手紙」、年表、関連書籍等を漁ることで、衝撃性を体感できる。

  • タイトルにある「蒲団」と「一兵卒」の2作が収録されています。
    「蒲団」は、自然主義文学作家として著名な田山花袋の代表作で、自分も学生時に読んだことがあるはずなのですが、大人になって内容も忘れてしまったので再度読み直してみました。
    ちなみに同録されている「一兵卒」はそれほど有名な作品ではないと思います。

    両作品とも言文一致体で書かれていて非常に読みやすく、中高生でも内容は理解できます。
    ただ、理解できると思いますが、「蒲団」は内容がアレすぎて、この内容を子供の頃の自分が読んでいたことに驚きました。
    過去に戻って、子供の自分に本作の感想を聞いてみたい気がします。

    「蒲団」のあらすじは、妻と3人の子供がいる中年作家の竹中時雄のもとに、弟子入りがしたいという熱心な女の手紙が届く。最初は断っていた時雄だが、やり取りを行ううちに手紙の文章から将来性を感じ弟子入りを免ずる。
    時雄を慕って上京してきたのは十代の女学生で、単調な生活に嫌気が差していた時雄は、弟子の芳子に心惹かれ妄想を逞しゅうする。
    浮かれていた時雄だったが、ある日、芳子を追って芳子と恋仲の田中という男がやってきて、時雄は怒り狂うという話。

    評価は人によって別れると思うのですが、私はサイテーな話だと思います。
    妻子あるおっさんが自分を慕ってきた純朴な娘に邪心を抱いた挙句、恋人がいると知るやいなや嫉妬に狂うという、文学的評価以前に時雄の惨めさに呆れました。
    更に驚くべきことに本作は私小説の出発点と呼ばれており、つまり作中の内容は田山花袋の体験を元にした話となっています。
    時雄は田山花袋、芳子も田中もモデルがいて、本作発表時はその赤裸々すぎる内容に一大センセーションを巻き起こし、芳子と田中のモデルとなった人物の私生活にも影響を及ぼしたということです。
    田山花袋の奥さんも不憫。
    その後、島崎藤村は、本作に対抗して姪との情事を書いた私小説を発表するという訳のわからない戦いがあるのですがそちらは別の機会に読む予定。

    本来は、本にして発表するなんてことしなければ、そのまま墓の中まで持っていけそうな秘匿するべき内面をあえて描き、内にある激しい思いと、外から見たときの一見尤も対応をしている様子の対比の描写が素晴らしい作品だと思います。
    時雄は邪な気持ちを持っているが、それは表に出すことができない、妻子も世間体もある身で、想いを打ち明けるわけにもいかない、今ここで情熱のままに行動すればどうなるか想像ができないわけもない、そうした中で怒り悲しみながらも結局は思いは届かないという、自然主義文学として見ても正しい作品だと思いました。
    ストーリーはあれですが、大変実験的で、そして成功した作品だと思います。
    ラストは衝撃的です。あまりいい意味ではなく。

    「一兵卒」は日露戦争の一兵卒が病院から逃げるように退院し、苦しみながら死んでいくという作品。
    物語そのものより、地獄のような戦時中の風景と主人公の望郷の念、惨めな最期の描写を読む作品だと思います。

  • 田山花袋読んだことなかったなと思って借りてきた。
    恋愛の庇護者であろうとして結局嫉妬でしかない主人公の滑稽さと、ラストシーンのさじ加減がいいと思う。ラストシーンではなんとなく主人公は自分の滑稽さには気g付いていたのではという気もする。ストレートに読めばむしろそこには盲目で感傷に浸っているように読めるかなと思うので穿ちすぎかとも思いますが。
    30歳では若い女性を待ったくそんな目でみないのは厳しいのではないかという気もする。時代を感じる。

    解説など読んで、むしろ売れてなかった田山花袋が賛否両論ながら注目された作品と知って、実際主人公が横柄に感じられるほどは横柄にふるまっていなかったのかもしれないなと思った。

    あと冒頭で「文学者だけに、この男は自ら自分尾心理を客観するだけの余裕を持っていた」って一応は自分が主人公であるがゆえのメタ的なはなしかとは思うけど、結局自分をコントロールできてないあたりとか感が見るとこの描写も滑稽だなと思う。

    一兵卒は、こういう構成の話大好きだなと思った。戦争文学など触れてこなかったからあまり情景が目に浮かばないのが残念。故郷に残した若い奥さんどうするんだろうなと思った


    成増図書館 岩波文庫

  • 今となっては読む価値があるのか微妙なところだな、これは。時代に取り残されている。

  • みっともない男の内面をこれでもかと見せつけられて、正直いい気持ちのする作品ではありませんでした。なんだかもやもやするのは、きっとこんな言動は恥だと思うからこそ禁じているものの、自分のなかにも時雄に同調、共感できてしまうポイントがあるからなんだろうと思う。
    解説を読むに、その辺りが当時文壇で評価されたんでしょうかね。
    だれも幸せにならない結末ですが、この時代の小説てこんなんばっかりなような…
    ラストシーン、やってることはすごくみっともないんですが、強風に煽られる樹木と部屋に射す光、なぜだか情景描写が胸に刺さりました。

  •  最初は男尊女卑思想に凝り固まった独白に驚く。妊娠中の妻に向かって産褥で死んだらあの美人教師を後添えに貰えるか、女弟子に女は容姿が大事、容姿が悪いと才があっても男に相手にされないよ、など。この人は人間性がよろしくないよ、と思った後に続く、女弟子への欲に走った赤裸々な本音ラッシュに頭を抱える。もう少し包み隠してもいいんじゃないのか、君……。確かに前評判通りに赤裸々だった。 
     外面の良さと本音の落差が酷いが、これが人の本性でもあるよなあ、こういう風になることもあるよなと思えば沁みる。
     文章の流れるような調子や唄うようなところは好きだったので、「田舎教師」他をもう少し読んでみたくなった。

  • 2017/5/17 「一兵卒」読了(評価は「一兵卒」の評価で。「蒲団」は未読)。
    脚気を患い入院していた病院を抜け出し戦場へ向ったものの、痛みが酷くなるにつれ死への恐怖に囚われ始める兵卒の心情がとてもリアル。
    日露戦争時、第二軍の従軍記者だった田山花袋だけあって、同時代の人の世界観がリアルに伝わってくる。 登場人物が豊橋の人で、調べてみたら豊橋の第十八聯隊は第二軍第三師団の所属だったようなので、ひょっとして田山花袋が実際に出会った人物をモデルにしているのかしら?


    なお、「一兵卒の銃後」と同作品である、という解説がしてあるサイトがありましたが、「一兵卒」と「一兵卒の銃後」は別作品です。

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