縮図 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102220

感想・レビュー・書評

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  • 全然読めてないなぁ。
    私に読む力が足りていないんだろうと思う。

    この時代(昭和初期)の花柳界がどんな位置付けなのかがイメージしにくい。今の風俗とは違うだろうし、ホステスやキャバ嬢とも違う気がする。
    落籍すというような転向制度もあるように、もう少し、市民の生活と混じり合う部分もあったように感じる。

    社会の縮図を悲観もヒロイックもなく、ありのままをかいているんだろうというのはわかる。
    ただ、主人公の住む世界を私が掴める事ができればもう少し味わえるのにと思う。

    また読む。

    • 本郷 無花果さん
      こんばんは。
      秋聲、最後の作品を読まれたんですね。
      私は未だ積んでおります(汗)
      花柳界(花街)は芸妓衆の世界で、今で言う京都祇園をイメージ...
      こんばんは。
      秋聲、最後の作品を読まれたんですね。
      私は未だ積んでおります(汗)
      花柳界(花街)は芸妓衆の世界で、今で言う京都祇園をイメージすると近くなるかも知れません。
      置屋は芸妓さん達が所属している処。当時の茶屋・待ち合いと言われた処に、お客さんがお酒や食事をしに来て、そこに置屋から芸妓さん達が派遣される。という仕組みになっていました。
      お客さんは三味線や唄、芸妓さんとの会話を楽しみながら、遊女や愛人を待ったりしていたんです。
      秋聲も30歳下の愛人(秋聲は妻と死別。愛人は旦那と離婚していました。)と会う時、ウザったい新聞記者や大衆の目から逃れる為に、待ち合いを利用していた事があります。(『仮装人物』より)
      ザックリし過ぎですが、イメージ掴めたでしょうか?
      里見弴の作品なんかを読むと、よく明治・昭和初期の女遊びの事が書かれています。参考までに。
      長~~~い解説になっていない解説、失礼致しました。
      2024/10/29
    • がんちゃんさん
      本郷さん
      ありがとうございます!
      なんとなくイメージできました。
      しっくりこないところは、もう少し勉強したいと思います。あと徳田秋声の作品も...
      本郷さん
      ありがとうございます!
      なんとなくイメージできました。
      しっくりこないところは、もう少し勉強したいと思います。あと徳田秋声の作品も最初の方から順序立てて読んだ方がいいかもしれないと思いました。

      2024/10/30
  • 徳田秋声の絶筆となった一作。
    一人の芸妓である女性の半生になるが、すごく静かに物悲しい。
    斯くも繰り返しつらい出来事に襲われながらも、淡々と呑み込んで生きていく女性の逞しさと哀しさ。
    ややもすると平板な感じのする作風かもしれないが、ゆっくり読むと起伏を感じさせるストーリーと文体に感じます。
    なにか静謐で美しい本が読みたいな、と思ったらお勧めの一冊です。

  •  1941(昭和16)年、新聞に連載され中絶した秋声のほぼ最後の作品。
     徳田秋声(1872-1943)はあまり文庫化されていないが、実はかなり多作な作家であったらしい。意外にも「通俗小説」も量産した時期があったそうだ。
     私がこれまで読んだ秋声作品は『新世帯』(1908)、『黴』(1911)、『爛』(1913)、『あらくれ』(1915)くらいで、本作『縮図』(1941)はそれらとかなり趣が異なっていて、驚いた。
     淡々と季節が一方的に過ぎてゆく無情な現実を描写していった自然主義時代の作品とは異なって、本作はいきなり時制がねじくれ、飛躍し、構成=コンポジションされているのだ。
     冒頭から登場する夫婦、均平・銀子の日常の描写が続く。そのなかにも、しばしばフラッシュバックのように均平や銀子の過去の道程がふり返られる。
     かと思うと、途中からはひたすら銀子の人生のなりゆきが年代記的に延々とつづられ、そしてその途中でいきなり作品は中断されてしまう。
     冒頭の均平・銀子の情景が「現在」だとすると、その「現在」に二度と戻れないままに、視点は永遠に過去を彷徨ったままなのだ。
     コンポジションの意図が結実しそこねたような態をなしているのだが、この「永遠の未完成」感も秋声の持ち味ではあるか。
     私は『あらくれ』等の秋声が日本自然主義文学の最高の芸術性を示すものと思っているが、どうやらこの作家はそれだけではない奥の深さがあるようで、もう少し読んでみたいと思う。特に私小説ふうだという短編小説も読みたいし、通俗小説だという分野の作もどんなものだか知っておきたい。
     が、どうも秋声は日本文学界で必ずしも高く評価されていないのか、「新潮日本文学アルバム」にも取り上げられていないし、文庫版で短編集もないようだし、接近しづらいものがある。
     古書で全集は手に入りそうだが、旧漢字旧仮名遣いだと読みにくいので、ちょっと迷ってしまう。

  • 縮図を読むかぎり、明治から昭和初期にかけての花柳界では帯を解くことも仕事の一部と見られています。芸者になって玉の輿を狙うことは出世の有力な方法のひとつ。ドガの描く踊り子と同じ境遇の女性たちが戦前の日本には少なくなかったようです。銀子の物語は当時の日本社会の縮図そのものだったのですね。

  • 徳田秋声の最後の作品にして、文芸活動の集大成として書かれた長編作品。
    数カ月後には太平洋戦争が開始される1941年6月より執筆が開始され、芸者屋を題材にした内容が"好ましくない"という理由により情報局からの干渉を受けることになり、幾度も執筆を中絶。
    そして、肋膜の癌により作者が他界し、作品は未完のまま終了となっています。

    日本の文学家たちは、戦時下においても創作活動を続けており、古参の作家陣が後の世に残る大作を多く世に送り出していた時期がこの頃となります。
    永井荷風の『濹東綺譚』、島崎藤村の『夜明け前』、志賀直哉の『暗夜行路』などの執筆が同時期で、本作も『黴』や『あらくれ』で既に有名作家だった徳田秋声により書かれました。
    戦時中は戦局の拡大に伴い、日本の戦時思想に沿わない作品を弾圧する、いわゆる国策文学が主流となります。
    本作と、同時期に書かれた谷崎潤一郎の『細雪』がその煽りを食ったことで有名で、連載中に言論統制により発禁処分を受けた作品です。

    均平という壮年の男と銀子という女性が最初に登場します。
    資産家の養子となり芸者上がりの銀子と同棲している均平は、別れて暮らしている娘からの手紙を受け取り入院中の長男を見舞います。
    そして、話は銀子の過去へと遡ります。
    序盤は均平が主役として登場しますが、やがて均平は全く登場しなくなり、以降は芸姑となった銀子が芸者屋を営むに至る半生が描かれます。

    元々芸者になることを嫌がっていた銀子が、千葉の芸者屋に身を売ることになり、そこで栗栖という男と恋愛をします。
    それがきっかけで帰郷し、実家の靴屋の仕事に戻りましたが、その後、石巻にある芸者屋に住み替えをします。
    石巻では倉持という土地の富豪に気に入られ、結婚を申し込まれますが、身分の違いから破綻し、東京に戻るも、今度は若林という女房持の株屋の妾となります。
    やがて銀子は病に倒れ、苦しい闘病生活の最中にも身内に不幸が訪れるという、世俗の荒波に揉まれ、苦しい日々を送るも幸せになれない、そういう日々が淡々と書かれます。

    最後は瀬川という男が登場し、胃腸の弱い瀬川の「一廉の食通であり、」という説明の文章でぷっつり終わり、これより先、銀子がどういう運命をたどるのか、救済されるのか、諦念してしまうのか、わからないままとなります。
    おそらく、銀子の半生を、人生の縮図として見せたかったのだろうというテーマは読み取れるのですが、徳田秋声がどういったものを示したかったのかはわからないままなのが非常に残念なところです。

    自然主義文学の最高峰とも言われる作品で、日本文学史を語る上では重要な作品であることは疑いないのですが、かなり読みにくい作品でした。
    文章が淡々としていて状況がわかりにくく、楽しんで読めるような小説ではないと思います。
    ただ、テーマ自体や、本作が自然主義文学として重要であるということは読んで理解ができたので、読めてよかったと思いました、

  • 「愛欲の悲喜」が描かれた作品らしいが、正直「どのあたりが……? 愛欲……?」となってしまった。「愛欲」と聞くと、ぎらぎらとしたイメージがあるのだが、この作品には、それが感じられなかったのが「愛欲?」となってしまった一因なのかもしれない。
    ヒロイン・銀子の半生を淡々と描く筆力は見事だったが、彼女の過去を負いすぎて「いつ、現代パートに戻ってくるんだ……?」と思ってしまった。絶筆なのが、本当に惜しまれる。

  • とは関係ないが、映画「裁かるるジャンヌ」を見に行くシーンがあるけれど、多分作者はこの映画見ていないでしょう。ジャンヌが甲冑に身を包んで戦うシーンなど、この映画にはまったくないのだから。

  • 「時代の未完」
    まさしくこの時代の縮図といってよい。
    小説って作者の深層心理の縮図ですよね~。

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