藤村詩抄: 島崎藤村自選 (岩波文庫 緑 23-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102312

感想・レビュー・書評

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  • 「初恋」「千曲川旅情の歌」などを含む詩集。七五調のリズムが口に出すと心地よく、文明開化の浪漫を感じて(&賢くなったような錯覚で)うっとりしてしまう。今時こんなの口ずさんでたら変な人に思われるから人前ではやらないけど。

     名もなき道を説くなかれ
     名もなき旅を行くなかれ
     甲斐なきことをなげくより
     来りて美(うま)き酒に泣け
     
     わきめもふらで急ぎ行く
     君の行衛(ゆくえ)はいづこぞや
     琴花酒(ことはなさけ)のあるものを
     とどまりたまへ旅人よ        (酔歌)

  • 『若菜集』『落梅集』など、島崎藤村の代表的な詩集から選び抜かれた名詩が収録されている。

    古諸なる…ではじまる有名な詩「千曲川旅情の歌」にいたく感動してしまった。共感と言った方が良いだろうか。自分もこの詩に登場する「遊子」(旅人)と同じだなぁとしみじみ思う。

    人はみな足早に駆けていき、次々と自分を追い越していくのに、私はいつまでこんなところを歩いているのだろうか。
    青春の盛りは過ぎて、もはや目前の田畑は冬の景色さながら、緑は失せ、落ち葉が道を埋め尽くし、私の歩みの邪魔をする。
    濁り酒で気を紛らしても、それはほんの少しの慰みでしかなく、私の漂泊はいつまでもいつまでも続いていくのだ。

    簡単に意訳(雰囲気訳?)してみるとこんな感じだろうか。
    なんというか、これは人間の持つ根源的で不可避な「孤独」というものを、真正面から見つめた詩なのだと思う。なんだか胸が苦しくなって、涙が出てくる。「私はここにいるよ」って叫びたくなるような、そんな衝動に駆られる。藤村の詩はやっぱり凄いね。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/701277

  • 「近代日本の自覚期ともいうべき歴史的青春と、詩人および人間としての人生の青春と、詩の文芸ジャンルとしての若さとが相まって生み出された比類のない青春文学である」
    解説=吉田精一

    この解説の通り、
    詩の黎明期の、記念碑的作品群なんだろうな、というのはそうなんだろうけど、
    いかんせん、いつまでも新しい、というには、
    少し言葉が古びてしまってて、
    読みづらい部分がある、のは、そりゃまぁ、
    かなり昔の物だからしょうがないとして。

    それでも特に、恋の詩には、
    現代でもまるで古びないフレッシュさを放つものがあって、驚いた。
    現代語訳すれば、全然JPOPの歌詞としていけるじゃないか!
    という、新しさ、若干の恥ずかしさがある。

    当時、お堅い時代でしたでしょうから、
    こういう悶々とした恋を、こうして歌い上げるのは、すげぃことだったんだなと、じわりと思います。
    時を越える青臭さ、すげぃです、藤村先生。

    解説に、長い詩は下手、と一刀両断してあるのがじわじわ面白かったです。

    以下、気になった詩とページ番号。

    19序のうた
    61初恋
    62狐のわざ
    65傘のうち
    86ゆふぐれしづかに
    88強敵
    182めぐり逢ふ君やいくたび
    190罪なれば物のあはれを
    193椰子の実

  • 解説:吉田精一
    若菜集より◆一葉舟より◆夏草より◆落梅集より

  • この作品は嫌いではないけれど、どうもある種の嫌悪感を抱いている自分がいる。
    きっとあまりに詩っぽいからでしょうか。ロマン主義に数えられない藤村だが、この多幸的な作品は、ロマン主義の歪さと極端さの要素があるような。全然細かいことはわかりませんが。

  • 藤村初期の詩集。青春の酸いも甘いも感じさせる内容もいいが、文語定形詩でありリズムが心地よい。国語教科書にも恐れずに文語詩を多く紹介したほうがよいと思う。

  • サウンド文学館・パルナス「島崎藤村詩集」『若菜集』『落梅集』『夏草』 より 朗読・柄本明

  • ●若菜集
    胸が苦しくなるくらい想いがぎゅっと詰まった詩。実際にいたらちょっと引いてまうかもしれん。でもやっぱ藤村好きだぁ。彼の繊細さの波長が私のそれとフィットする気がする。

  • 言葉のリズムとか使い方が凄く好き。『思より思をつたひ』『おきく』『強敵』『門出』が好き。今手元に本がなくタイトルうろ覚え。

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著者プロフィール

1872年3月25日、筑摩県馬籠村(現岐阜県中津川市馬籠)に生まれる。本名島崎春樹(しまざきはるき)。生家は江戸時代、本陣、庄屋、問屋をかねた旧家。明治学院普通科卒業。卒業後「女学雑誌」に翻訳・エッセイを寄稿しはじめ、明治25年、北村透谷の評論「厭世詩家と女性」に感動し、翌年1月、雑誌「文学界」の創刊に参加。明治女学校、東北学院で教鞭をとるかたわら「文学界」で北村透谷らとともに浪漫派詩人として活躍。明治30年には第一詩集『若菜集』を刊行し、近代日本浪漫主義の代表詩人としてその文学的第一歩を踏み出した。『一葉舟』『夏草』と続刊。第四詩集『落梅集』を刊行。『千曲川旅情のうた』『椰子の実』『惜別のうた』などは一世紀を越えた今も歌い継がれている。詩人として出発した藤村は、徐々に散文に移行。明治38年に上京、翌年『破戒』を自費出版、筆一本の小説家に転身した。日本の自然主義文学を代表する作家となる。

「2023年 『女声合唱とピアノのための 銀の笛 みどりの月影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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