家〈下巻〉 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102350

作品紹介・あらすじ

「われわれはどこへ行っても、旧い家を背負って歩いてるんじゃありませんか」「そいつを私はぶちこわしたいと思うんです」-小泉家の家長実は出獄するが国内に職はなく満州へ、神戸で失敗した橋本家の当主達雄もまた満州へ。日本に残された両家の家族たちの生活は、森彦と三吉の二人の肩にかかってくる。

感想・レビュー・書評

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  • 小泉三吉(島崎藤村)が上京後、自費出版した作品(破戒)は
    日露戦争後の開明的な時流に受け入れられてけっこう売れたらしい
    しかしそこに漕ぎ着けるまでの一年間に
    三人の娘たちは次々と死んでいった
    小説では曖昧にされているが、赤貧からの栄養失調が原因といわれる

    一方、あるじの失踪した橋本家では
    その息子の正太(三吉の甥)が後を継いでいた
    しかしどうも、家業の薬屋だけでは収入が支払いに追いつかないようで
    口減らしが必要だったのだろう
    正太は独立した自分の仕事を見つけなければならなかった
    いくつかの失敗を経たのち、三吉の後を追うように上京してきた彼は
    どこで何を吹き込まれたか
    兜町の相場師になることを、心に決め込んでいた

    すでに足がかりを得て余裕の三吉は
    どこか焦っているような正太の姿を見送って
    いちおうその方面の知り合いに連絡はつけるものの
    「まずやりたい仕事があって、儲けはその次と思わなければ」などと
    随分いい気な意見を、妻とかわすのであった
    娘が死んでるのにやぞ
    …とはいえ、三吉のその意見もまったくの的外れではなかった
    正太の場合
    やはり女に貢ぐカネの欲しさが仕事探しのモチベーションだった
    かつての家勢はとっくに衰えたというのに
    父親と同じ生き方を追い求めてしまう正太の悲しさがそこにあった
    そしてその姿は、挫折の果てに狂死したおのが父親の運命を
    三吉(藤村)に突きつけるものでもあった
    いわば血のつながりにまつわる悩み
    それがやがて、最後の長編「夜明け前」執筆の動機付けとなってゆく
    終盤、12年ぶりに訪れる橋本家で
    三吉が「あるもの」を手にする圧巻のシーンが、それを示唆している

    正太の母で、三吉の姉にあたるお種もまた
    おそらくは夫にうつされた性病が原因と思われるにせよ
    ときおり狂躁的なふるまいに出ることがあった
    その晩年の姿は、「ある女の生涯」にしたためられている

  • 7/25

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