夜明け前 第1部(上) (岩波文庫 緑 24-2)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102428

感想・レビュー・書評

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  • 物語を期待して読むとがっかりする。教科書的な叙述が多いので、歴史に興味のない人には少々きつい作品だと思う。一時期藤村にはまっていた知人もこれだけは読み切れなかったと言っていた。
    『破戒』は内容はともかく文章は読みやすかったので、こちらもすらすら読めると思っていたら甘かった。知らない言葉が次々出てきて。時代劇や時代小説読みなれている人なら大丈夫なのだろうか。註がないので苦労した。
    主人公は己の信念と自身を柱とする家庭の間で揺れる青年半蔵。有能な父親の跡を継ぎ、コンプレックスに悩みつつ家業にいそしむが、渦中の京都へ飛び出していった学問仲間の友人たちを羨ましく思う。
    電話もテレビもインターネットもない時代、世の中が大きく変わりつつあるのを感じるのは街道を通る人間たちのもたらす情報のみ。今でこそ北朝鮮がミサイル発射したというニュースも速報で知ることができるけれど、この時代黒船で揺れる国々の様子は一足も二足も遅れて山中の宿に伝わってくる。半蔵のもどかしさはいかほどだったろう。
    私の住む町も昔の宿なのに、大名行列や街道についてほとんど知らなかった。近くに街道についての本を集めたブックカフェがあるので今度行ってみよう。

  • 歴史に名も残らない、フツーの人視点の幕末~明治のお話です。
    島崎藤村の「夜明け前」って、日本近代文学の傑作ってよく言われますよね~
    でも、その割りに読む人が少ないんじゃないかな・・・面白いのに。

    主人公の若者「俺、学問やりてえ」
    パパン(村のお偉いさん)「なん・・・だと」
    こんな感じで、エキセントリックな国学者・平田篤胤にはまる主人公。
    あまりに急進的な教えのため、幕府の眼が光る!やべえ!
    主人公の家は体制側(幕府)なのに・・・どうするんだよこれ
    でも御一新により、立場逆転。やったね主人公!
    主人公「さあ、神武の世を今に復活だ!」←なんかやばいフラグ立った

    どうかな?気になるでしょ?
    実際のテーマは「日本人とは何か」らしいです。スケールでかい!
    新しいことは、はたして良いものなのだろうか?
    混迷の時代の今こそ、読むべき本ではないかな?かな?
    あ、有名小説なんで、映画化もされてますね(1953年。古い!)。
    この前お亡くなりになった、映画監督の新藤兼人氏が脚色。

    あと、あれですね。
    ブクログ検索で、「夜明け前より瑠璃色な(けよりな)」からここに来た人。
    罰ゲームだ、この本読め。
    真面目系少女も登場だ!

  • 島崎藤村の後期の作品。藤村の代表作の一つです。
    2部構成で、岩波文庫版ではそれぞれ上下巻あり、全4冊、その4冊が全て400ページ前後あり、とても長い小説です。
    藤村の父・島崎正樹をモデルにした、中山道馬籠宿の本陣の主人「青山半蔵」を主役に書かれた小説で、幕末から明治維新までの激動の時代を描き出した作品となります。
    『夜明け前』の"夜明け"とは日本の夜明け、明治維新のことであり、その時代に生きた人々の偶像劇となっています。

    "木曾路はすべて山の中である" という有名な一句から始まります。
    中山道馬籠宿本陣の当主「吉左衛門」と年寄役の「金兵衛」はこの地に生まれ、宿役人として務めました。
    参勤交代の諸大名や日光への例幣使、大坂の奉行や御加番集などが通行する街道に本陣はあり、主人公となる半蔵は吉左衛門の倅です。
    第一部上巻の本作では、本陣としての仕事に忙殺される様子や、半蔵とお民との婚姻などが書かれています。
    また一方で、国学を学び平田門人となったり、鎖国状態の日本にペリーが来航して、日本自体が大きく激動していく様子が書かれるものとなります。

    本書は一部の上巻となりますが、はっきりいって読みにくかったです。
    幕末から明治維新にかけてが書かれたほぼ歴史小説なのですが、主人公の半蔵は歴史に大きく関わった人物ではなく、一介の本陣の主人でしかないです。
    ペリー来航やそれに対応する老中・阿部正弘、困惑する幕府、ハリスの通商条約締結の動きなど、世界が動く様子が書かれますが、それにより本陣の営業に影響が出ることはあれど半蔵自体がそれら事件に関わるわけではないです。
    世界情勢と半蔵の生活が並行で進み、一宿役人が分かる範囲、関わる範囲で世界情勢が変わっていきます。
    攘夷の動きには半蔵も関心を寄せますが、一部上巻ではその程度であり、これから大きな何かが起きるという予感がありながら、日々仕事に忙殺される内容となっています。
    そもそも私自身がこの頃の日本史に関して人一倍疎いこともあって、少し読んでは調べ物をし、調べ物をしては読み進めて首をかしげるを繰り返していたので、非常に難解で読みにくいものと感じました。
    中学歴史レベルの知識を持っている方が読めば、感想が変わるのではないかと思います。
    具体的には、一部上巻時点で、黒船来航、ハリス来日、安政の大獄、徳川家茂が将軍となり、生麦事件が発生、攘夷の意識が高まり反幕府派の動きが活発になりつつあるあたりの歴史知識が必要と思いました。

    歴史小説というにはその動きが主体になく、基本的には半蔵が主役の小説なのですが、先にも述べた通り、動乱の時代で仕事に忙殺される本陣の主人を書いた話になっており、展開としては退屈な文章が続きました。
    ただ、現在一部下巻を読んでいるのですが、だんだん時代と半蔵の日々が交差してきているように感じています。
    一部上巻時点では上記のような感想ですが、作品としての面白さは全て読むまでわからないので、引き続き下巻を読みたいと思います。

  • いやあ、面白いなあ。
    「夜明け前」は、その有名な書き出しとともにタイトルは知られているものの、おそらく読んだ人は少ない。
    中山道馬籠宿の本陣に生を受けた主人公が、国学に傾倒し、しかし幕末の激動の荒浪に揉まれながら、宿の代表として、困難な舵取りをせざるをえない姿を描く。

  • 幕末期での長野出身の主人公。
    武士ではなく庶民視点でのお話。
    生麦事件の詳細も細かく盛り込まれています。

  • 資料ID:C0025251
    配架場所:本館2F文庫書架

  • 明治維新を木曽路の住人の視点から表現。

  • 政治運動に参加できない半蔵の無念が伝わる。

  • 庶民からみた幕末の風景
    まぁ面白いかなぁ
    でも(下)~は読まないかも

  • 「いつかもう一度読み直してみたい。絶対に手放したくない」
    ――こんな本です。
    日本にこれほど壮大な歴史小説があったのは驚きですね。
    【熊本学園大学:P.N.なし】

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著者プロフィール

1872年3月25日、筑摩県馬籠村(現岐阜県中津川市馬籠)に生まれる。本名島崎春樹(しまざきはるき)。生家は江戸時代、本陣、庄屋、問屋をかねた旧家。明治学院普通科卒業。卒業後「女学雑誌」に翻訳・エッセイを寄稿しはじめ、明治25年、北村透谷の評論「厭世詩家と女性」に感動し、翌年1月、雑誌「文学界」の創刊に参加。明治女学校、東北学院で教鞭をとるかたわら「文学界」で北村透谷らとともに浪漫派詩人として活躍。明治30年には第一詩集『若菜集』を刊行し、近代日本浪漫主義の代表詩人としてその文学的第一歩を踏み出した。『一葉舟』『夏草』と続刊。第四詩集『落梅集』を刊行。『千曲川旅情のうた』『椰子の実』『惜別のうた』などは一世紀を越えた今も歌い継がれている。詩人として出発した藤村は、徐々に散文に移行。明治38年に上京、翌年『破戒』を自費出版、筆一本の小説家に転身した。日本の自然主義文学を代表する作家となる。

「2023年 『女声合唱とピアノのための 銀の笛 みどりの月影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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