夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 903
レビュー : 109
  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102732

作品紹介・あらすじ

その昔竜神が封じこめられた夜叉ケ池。萩原はただ一人、その言伝えを守り日に三度の鐘撞きを続けるが…。幻想と現実が巧みに溶けあわされた『夜叉ケ池』。播州姫路城の天守にすむという妖精夫人富姫の伝説に取材して卓抜なイメージを展開させた『天守物語』。近年新たな脚光をあびる鏡花(1873‐1939)の傑作戯曲2篇。

感想・レビュー・書評

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  • 泉鏡花の戯曲は読んだことがなかったのですが、うん、読んで良かった。今は亡き澁澤龍彦の解説もいい。

  • 『夜叉ヶ池』雪なす羅、水色の地に紅の焔を染めたる襲衣、黒漆に銀泥、鱗の帯、下締なし、裳をすらりと、黒髪長く、丈に余る。銀の靴をはき、帯腰に玉のごとく光輝く鉄杖をはさみ持てり。両手にひろげし玉章を颯と繰落して、地摺に取る。
    文体の美しさもさることながら、人間の浅ましさを描くこの作品は泉鏡花の有体でない才能を感じさせる。
    白雪の心理描写は、恋が清濁併せ持つことを具現しているように思った。
    残忍さすらも彼が描けば美しい悲劇として映し出される不思議。

    旧い人はどのようにして戯曲を読み、舞台を見て、作品を感じたのだろう。同じ場面で息をのみ、焦がれたのか。そうとまで考えさせる、妖しく艶やかに心に残る作品。

  • 夜叉ヶ池;1903年(大正2年)、天守物語;1916年(大正15年)。
    貞操を守るため魔性に変じた女達の、愛する者への一途さに心惹かれる。人界で虐げられた者達が、魔界でカタルシスを得るパラドックス。巻末の解説(渋澤龍彦氏による)で詳しく分析されている。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      鏡花と言えば、私の中では、この2作かな、、、
      4月には「新版 天守物語」舞台上演がありますが、、、お金が無いのでパス。。。
      鏡花と言えば、私の中では、この2作かな、、、
      4月には「新版 天守物語」舞台上演がありますが、、、お金が無いのでパス。。。
      2014/03/27
    • 佐藤史緒さん
      私は春昼や歌行灯が好きなんですが、これも凄く好きです。
      舞台あるんですね、いいなぁ。私もお金ないからダメですが(´・_・`)
      私は春昼や歌行灯が好きなんですが、これも凄く好きです。
      舞台あるんですね、いいなぁ。私もお金ないからダメですが(´・_・`)
      2014/03/28
  • 1年ほど前に、金沢に一人旅をした。博物館には古文書読解サークル、街中の古民家には純文学朗読サークル、とても文化の香りがする街だった。くわえて、室生犀星が好きなので、泉鏡花は、いつか読みたい作家としてリストアップしていた。

    姫路城の天守閣の主と見目涼やかな武士との恋の話というあらすじに惹かれて、この本が鏡花第一号となったのだけれど。。。想像と違って、それほど、心に響かなかった。
    代表作とされている作品から読まずに、戯曲から読んだのが悪かったのか?
    シェークスピアも谷崎潤一郎もだったので、戯曲スタイルになると、どうもピンと来にくいのかもしれない。

    ただ、嫌いではなく、鏡花の素敵なところは発見できた。天守閣冒頭では、侍女である妖かし達が天守閣から、竿に生じた露を餌に花を釣るシーンがある。これ、ほとんど、本筋とは関係ない。だけど、花を釣る侍女の名前もそれぞれ桔梗、女郎花など花の名前になっており、視覚的に非常に美しい。

    本に収蔵されている「夜叉ヶ池」も「天守閣」も妖かしの恋を軸に据えているのだけれど、鏡花が純粋で、儚げなものを愛することが推測できる2作品でした。

  • 鏡花の戯曲二編、澁澤龍彦の解説付。
    夜叉ケ池は百合や晃の清廉さと、妖怪白雪の恋心がせつない。これらを描いた筆力は、戯曲でありながら行間になんともいえない匂いめいたものを感じさせる力を持っている。ただ、彼女らを善、村人を悪に分けてしまうのは少し乱暴だろう。これらは相容れないものだけれど、日照り被害に切羽詰まっているのはどちらか。終わらせ方には救いを見つつも、少し納得がいかなかった。
    天守物語でもそれぞれの場面を想像でき、だが切なさは掻き立てられることなく楽しく読めた。けれどこちらは最後ちょっと拍子抜けしてしまう。澁澤龍彦はこちらに高評価をあてていたが、構造的なことはわからないにしろ、私は夜叉ケ池の方が好き。

  • 歌舞伎座、坂東玉三郎の『天守物語』を観て、この本を読んだ。
    美しい人(男女関わらず)を苦境に追いやる人間たちが妖怪に退治される筋だが、玉三郎様や舞台の残像が残っているせいか、『夜叉ヶ池』までも、背景が思い浮かぶように一気に読んだ。
    台詞の語調も耳に残っているので、目に慣れない文章もすらすらと読め、読むタイミングはとても良かった。
    舞台を観る前だったら、耳にも目にも慣れない表現に難儀したかもしれない。
    玉三郎様がインタビューの中で、
    歌舞伎役者は次々と演目に追われているので、一つの作品をじっくり読み解く、というのは難しいが、舞台にかけている間の1か月間は、毎日声に出して台詞を言っているので、体で読む、『体読』しているようなものだ…
    というようなことを言っていたが、玉三郎様が体読したもを、観客は体で聴く、『体聴』しているようなものかもしれない。
    歌舞伎演目を、初めて通しで文字で読んだわけだが、全部の演目そうしたい。そうすれば、もっと歌舞伎が面白くなるだろうに。
    泉鏡花という作家に関しては、違う作品を読めば、また違う感想を持つと思うので、とりあえず、歌舞伎ネタで感想をまとめてみた。

  • 久々の再読。時々浸りたくなる、幻想世界。

    妖怪は美しく恐ろしく、人間は愚かしく浅ましい。
    妖怪は人を蔑むが、ひとたび愛するようになれば、その情けは人よりよほど深い。妖怪も元は人間であり、人と魔の境界を越えたのは純粋であるが故で、越えて一層純粋性が高められたのかもしれない、などと思う。

  • 三島由紀夫と澁澤龍彦の二人がこぞって絶賛している。まさに鏡花戯曲の最高傑作だろう。お芝居は、幕開きの花釣りの場面から美しく、そして幻想的だ。亀姫の訪問と図書之助とのかりそめの恋と、物語のプロットはシンプルなのだが、それが却って幻想性を高めている。舞台は姫路城天守閣第五重。登場する富姫も亀姫も、図書之助も皆ことごとく美しい。とりわけ富姫の妖艶さは、この世のものとも思えない(実はこの世のものではないのだが)。シネマ歌舞伎では富姫に玉三郎、亀姫に中村勘太郎、図書之助が海老蔵と、なんとも豪華なラインナップだった。

  • やさしく甘く妖しい泉鏡花の世界。極上のファンタジーと一抹の末恐ろしさを味わえます。

  • 人外の姫がメインの二つの物語。誰にも知られず生きている二人の、人間を見下す態度はまるで大自然の意志が形を持ったかのよう。大衆の中では逆に浮いてしまうような善良な人間だけが許されるという展開は、所謂日頃の行いがものを言うということが表されているのだろうか。一握りが助かったことに安堵するということは、多くの人間が犠牲になった悲劇を肯定することになる。そんな自分に気づいたとき自分がいかに愚かで傲慢かを見せられたような気になる。

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