夜叉ケ池・天守物語 (岩波文庫 緑27-3)

  • 岩波書店 (1984年4月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (140ページ) / ISBN・EAN: 9784003102732

感想・レビュー・書評

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  • 夜叉ケ池、天守物語、どちらも妖怪が登場する現実と幻想が入り混じった神話のような物語でした。生首を愛でたりグロテスクな描写もあるが、物語は劇的でダイナミズムに溢れていたのでグイグイ引き込まれた。

    読み慣れない文語体、言葉の意味も理解できず手こずったけど、戯曲なので話の筋は大方掴めたので気にせず読み進めました。
    夏目漱石『草枕』もそうだったけど、意味を解釈するのではなく、言葉や言い回しを音楽や絵画のように捉えて読むと、水墨画のように情景が立ち上ってくるような気がした。

  • 天守物語は、姫路の白鷺城天守閣に住む妖精富姫様と鷹匠の道ならぬ恋ですが、なかなか面白かったです。今の姫路城にも獅子頭が展示してある理由もわかりました。
    夜叉ケ池も天守物語も戯曲で短編でしたので、界に入り込めないとイメージがつかみにくく、なれるまで少しずつかかりますかね。

  • 「夜叉ヶ池」は、諸国の物語を聞こうと北国に行った男が、とある理由でその里を離れられなくなり、ミイラ取りがミイラになるように、物語の一部になってしまう話。
    「天守物語」は姫路城の五重塔の最上階に住みつく魔物たちのもとへ、人間の男がひょっこりやってきてしまう話。

    泉鏡花は、醜い人間界と美しい妖怪界を対比させるように描く。人間の中でも、選ばれた心の清い人間だけが、妖怪と心を通じ合わせることができる。

    魑魅魍魎がうごめく世界というのは、どこかに、確かにあるのだろう。そこはわたしたちが想像するようなおどろおどろしい世界ではなく、むしろ心が清らかなゆえに俗世では生きづらい者たちの、溜まり場として存在するのではないかと思わせるような描かれ方だった。

  • 泉鏡花の作品に触れるのは初めてでした。
    現代の文章に慣れてしまい、古い作品ならではの文章に難しさを感じながらも、幻想的な世界観に浸ることができました。
    夜叉ヶ池は、ほとんどが登場人物達のセリフで話が進んでいくところが斬新でした。
    人間世界と、この世ならぬ者の関わりを描いている過程には、湖や池などの水辺が異世界への入口になっていることが多く、現代でもタイムスリップ物などは作中で水が関係していることが多いので、古くから人の中に受け継がれる表現なのではないかと考えさせられました。

  • 泉鏡花の戯曲は読んだことがなかったのですが、うん、読んで良かった。今は亡き澁澤龍彦の解説もいい。

  • 先日観に行った舞台が「夜叉ヶ池」を下敷きにつくられたということで初めて泉鏡花作品を手に取りました。
    なるほど確かに大筋はこれだなと。

    人外・ファンタジー系統が好きなのでどちらの作品もサクサク読み進められました。
    泉鏡花の文体に慣れればより深く理解できそうです。

  • 夜叉ヶ池;1903年(大正2年)、天守物語;1916年(大正15年)。
    貞操を守るため魔性に変じた女達の、愛する者への一途さに心惹かれる。人界で虐げられた者達が、魔界でカタルシスを得るパラドックス。巻末の解説(渋澤龍彦氏による)で詳しく分析されている。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      鏡花と言えば、私の中では、この2作かな、、、
      4月には「新版 天守物語」舞台上演がありますが、、、お金が無いのでパス。。。
      鏡花と言えば、私の中では、この2作かな、、、
      4月には「新版 天守物語」舞台上演がありますが、、、お金が無いのでパス。。。
      2014/03/27
    • 佐藤史緒さん
      私は春昼や歌行灯が好きなんですが、これも凄く好きです。
      舞台あるんですね、いいなぁ。私もお金ないからダメですが(´・_・`)
      私は春昼や歌行灯が好きなんですが、これも凄く好きです。
      舞台あるんですね、いいなぁ。私もお金ないからダメですが(´・_・`)
      2014/03/28
  • 昨年末に姫路城に行き、姫路文学館で紹介されていたので早速読みました。

    戯曲式なので読みづらいところはありますが、
    逆に舞台を思い描きながら読むと大変興味深いです。
    簡単に言うと、妖との恋話。
    強く美しい妖と、悩み追い込まれる男性の話。
    文体こそ古めかしいけれども、内容が今時だと感じました。

    ネタバレになるのであまり内容は書きませんが、好きな方はかなりお好きな内容ではないかなと感じました。

  • 戯曲であるし、語り口も古風であるので読むのに苦労した。おそらく理解できていないことばがたくさんある。
    しかしそれでも美しかった。たおやかというか…静謐な舞台を想像しながら読んだ。

  • 私にとって初めての泉鏡花作品だったが、その世界観に引き込まれざるを得なかった。

    本書は戯曲集で、かつ古文めいた文体(時代的に仕方ないが)なので、現代人には読みにくい文章だ。しかし、それがなんとも心地よい。知らない単語や言い回しを都度調べ、空想を巡らせながら読む至福の時間だった。

    物語の妖怪と人間の対立という幻想的な内容と相まって、この本の妖惑に感服させられた。

    恒川光太郎の世界観が好きな方には強く薦めたい。

  • 幻想的な、とか幽艷と評されることが多い泉鏡花の戯作。確かにそのとおり。主人公は双方とも女性のモノノケだが、モノノケというには美しすぎる女性たちが、愛する者のために思い悩む物語。そのストーリーがまた美しい。昔から日本人は、見えない不思議なものに対して良い意味での幻想的なイメージを持っていると思うが、まさにそういったイメージを描ききっているような。読み終わったときに、何となく現実世界に戻りたくなくなる、そんな感覚になる作品。現実を忘れたいときは、ぜひ。

  • ネームバリューだけで選んだ私が悪いんだけど、戯曲だと知らなくて吃驚。つい最近オンディーヌで戯曲デビューしたばかりだったので、日本の戯曲、、、大丈夫か、、、?と戦々恐々しながら読み進めたが、日本らしい粋な言葉遣いと、色彩豊かで能動的な場面々々に大いに楽しませてもらった。

    特に天守物語は秀逸。舞台場面として天守の第五層を固定しつつ、登場人物の仕草や目線で下層空間を想像させる仕掛けは見事、面白いと思う。なにより、冒頭にて侍女たちが、白露を餌に五色の絹糸で秋草を釣る場面、想像するだに艶やかで美しく、まるで絵巻物を見ているよう。素晴らしい、これが泉鏡花らしさなのかと思わされる一場面だった。

    ストーリー的には特に目新しいものは感じなかったが、あれだけ超常的に描かれている白雪や天守夫人が、元は人間達の欲や我が身可愛さによって、不幸に身をやつし死んでいった人間の女である、という設定に悲哀を感じた。醜い人間社会から外れた、もしくは選ばれた、純真で無垢な人間が、"人間を辞めなければ"幸せにはなれない構造にも同じような悲哀を感じる。

    夏目漱石で身に沁みた筈なのに、「全集」じゃなくて文庫本を選んだものだから、注釈が全くなくて読むのに苦労した、、、(こんなに短いのに!)。本とスマホを行き来するのは辛いから次は絶対に全集にしろ、ということを未来の自分への戒めとしてここに。

  • 鏡花の、人間の驕りを嫌う厭世観みたいなものが出てるのかな。恋心とか真っ直ぐな心根に価値を置いてる感じで、それが美しく、また激しい情念ともなっていく。妖怪?妖精?として描かれる者たちの優美さや残酷さは、大自然のそれとよく似ていると思いました。それにしても、読むのが止まらなかった、面白くて!ユニークだなぁ。澁澤龍彦さんの解説がすごく解りやすくて、さらに味わいが深く感じられます。

  • 鏡花の戯曲二編、澁澤龍彦の解説付。
    夜叉ケ池は百合や晃の清廉さと、妖怪白雪の恋心がせつない。これらを描いた筆力は、戯曲でありながら行間になんともいえない匂いめいたものを感じさせる力を持っている。ただ、彼女らを善、村人を悪に分けてしまうのは少し乱暴だろう。これらは相容れないものだけれど、日照り被害に切羽詰まっているのはどちらか。終わらせ方には救いを見つつも、少し納得がいかなかった。
    天守物語でもそれぞれの場面を想像でき、だが切なさは掻き立てられることなく楽しく読めた。けれどこちらは最後ちょっと拍子抜けしてしまう。澁澤龍彦はこちらに高評価をあてていたが、構造的なことはわからないにしろ、私は夜叉ケ池の方が好き。

  • 歌舞伎座、坂東玉三郎の『天守物語』を観て、この本を読んだ。
    美しい人(男女関わらず)を苦境に追いやる人間たちが妖怪に退治される筋だが、玉三郎様や舞台の残像が残っているせいか、『夜叉ヶ池』までも、背景が思い浮かぶように一気に読んだ。
    台詞の語調も耳に残っているので、目に慣れない文章もすらすらと読め、読むタイミングはとても良かった。
    舞台を観る前だったら、耳にも目にも慣れない表現に難儀したかもしれない。
    玉三郎様がインタビューの中で、
    歌舞伎役者は次々と演目に追われているので、一つの作品をじっくり読み解く、というのは難しいが、舞台にかけている間の1か月間は、毎日声に出して台詞を言っているので、体で読む、『体読』しているようなものだ…
    というようなことを言っていたが、玉三郎様が体読したもを、観客は体で聴く、『体聴』しているようなものかもしれない。
    歌舞伎演目を、初めて通しで文字で読んだわけだが、全部の演目そうしたい。そうすれば、もっと歌舞伎が面白くなるだろうに。
    泉鏡花という作家に関しては、違う作品を読めば、また違う感想を持つと思うので、とりあえず、歌舞伎ネタで感想をまとめてみた。

  • 某乙女ゲームがきっかけで再読。以前、読んだ時よりはするすると~。
    お百合さんと白雪が可愛いのよねぇ。

    民俗学での境界の区別を考えながら、今回は読んでいました。(初めて読んだ時はいまほど民俗学のことは知らなかったので)

    百合さんがいるところが境界線。白雪がいるところは異世界(神の世界)村人たちのいるところが俗世。

    互いに不可侵を決めていた。それが晃している鐘楼守なのだけれど、その境界線が破られた時に村は瓦解する。

    柳田國男とも交流があったことは知られているけれど、今回はある意味で楽しく読書。

    この2作品は読みやすいし、短いので。
    久しぶりに玉三郎の映画が見たくなった。

  • 三島由紀夫と澁澤龍彦の二人がこぞって絶賛している。まさに鏡花戯曲の最高傑作だろう。お芝居は、幕開きの花釣りの場面から美しく、そして幻想的だ。亀姫の訪問と図書之助とのかりそめの恋と、物語のプロットはシンプルなのだが、それが却って幻想性を高めている。舞台は姫路城天守閣第五重。登場する富姫も亀姫も、図書之助も皆ことごとく美しい。とりわけ富姫の妖艶さは、この世のものとも思えない(実はこの世のものではないのだが)。シネマ歌舞伎では富姫に玉三郎、亀姫に中村勘太郎、図書之助が海老蔵と、なんとも豪華なラインナップだった。

  • やさしく甘く妖しい泉鏡花の世界。極上のファンタジーと一抹の末恐ろしさを味わえます。

  • 人外の姫がメインの二つの物語。誰にも知られず生きている二人の、人間を見下す態度はまるで大自然の意志が形を持ったかのよう。大衆の中では逆に浮いてしまうような善良な人間だけが許されるという展開は、所謂日頃の行いがものを言うということが表されているのだろうか。一握りが助かったことに安堵するということは、多くの人間が犠牲になった悲劇を肯定することになる。そんな自分に気づいたとき自分がいかに愚かで傲慢かを見せられたような気になる。

  • 泉鏡花の中では一番好きな本。
    夜叉ケ池は人間世界の描写が多くて、入り込みやすい。

    天守物語は、化生の世界である姫路城の天守閣だけで話が進むぶん、より純粋に感じる。

    どちらも好きだ。

    どちらも間違った道理が通る俗世と、美しい恋の対比がロマンチックである。

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著者プロフィール

(いずみ・きょうか)
1873年金沢市生まれ。1893年、「京都日出新聞」の「冠弥左衛門」連載でデビュー。主要な作品に、「義血侠血」(1894)、「夜行巡査」(1895)、「外科室」(1895)、「照葉狂言」(1896)、「高野聖」(1900)、「婦系図」(1907)、「歌行燈」(1910)、「天守物語」(1917)などがある。1939年没。近年の選集に、『泉鏡花集成』(ちくま文庫、全14巻、1995-1997)、『鏡花幻想譚』(河出書房新社、全4巻、1995)、『新編 泉鏡花集』(岩波書店、全10巻+別巻2、2003-2005)、『泉鏡花セレクション』(国書刊行会、全4巻、2019-2020)など、文庫に『外科室・天守物語』(新潮文庫、2023)、『高野聖・眉かくしの霊』、『日本橋』(ともに岩波文庫、2023)、『龍潭譚/白鬼女物語 鏡花怪異小品集』(平凡社ライブラリー、2023)などがある。

「2024年 『泉鏡花きのこ文学集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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