夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
3.91
  • (123)
  • (99)
  • (140)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 968
レビュー : 115
  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102732

作品紹介・あらすじ

その昔竜神が封じこめられた夜叉ケ池。萩原はただ一人、その言伝えを守り日に三度の鐘撞きを続けるが…。幻想と現実が巧みに溶けあわされた『夜叉ケ池』。播州姫路城の天守にすむという妖精夫人富姫の伝説に取材して卓抜なイメージを展開させた『天守物語』。近年新たな脚光をあびる鏡花(1873‐1939)の傑作戯曲2篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 泉鏡花の戯曲は読んだことがなかったのですが、うん、読んで良かった。今は亡き澁澤龍彦の解説もいい。

  • 『夜叉ヶ池』雪なす羅、水色の地に紅の焔を染めたる襲衣、黒漆に銀泥、鱗の帯、下締なし、裳をすらりと、黒髪長く、丈に余る。銀の靴をはき、帯腰に玉のごとく光輝く鉄杖をはさみ持てり。両手にひろげし玉章を颯と繰落して、地摺に取る。
    文体の美しさもさることながら、人間の浅ましさを描くこの作品は泉鏡花の有体でない才能を感じさせる。
    白雪の心理描写は、恋が清濁併せ持つことを具現しているように思った。
    残忍さすらも彼が描けば美しい悲劇として映し出される不思議。

    旧い人はどのようにして戯曲を読み、舞台を見て、作品を感じたのだろう。同じ場面で息をのみ、焦がれたのか。そうとまで考えさせる、妖しく艶やかに心に残る作品。

  • 夜叉ヶ池;1903年(大正2年)、天守物語;1916年(大正15年)。
    貞操を守るため魔性に変じた女達の、愛する者への一途さに心惹かれる。人界で虐げられた者達が、魔界でカタルシスを得るパラドックス。巻末の解説(渋澤龍彦氏による)で詳しく分析されている。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      鏡花と言えば、私の中では、この2作かな、、、
      4月には「新版 天守物語」舞台上演がありますが、、、お金が無いのでパス。。。
      鏡花と言えば、私の中では、この2作かな、、、
      4月には「新版 天守物語」舞台上演がありますが、、、お金が無いのでパス。。。
      2014/03/27
    • 佐藤史緒さん
      私は春昼や歌行灯が好きなんですが、これも凄く好きです。
      舞台あるんですね、いいなぁ。私もお金ないからダメですが(´・_・`)
      私は春昼や歌行灯が好きなんですが、これも凄く好きです。
      舞台あるんですね、いいなぁ。私もお金ないからダメですが(´・_・`)
      2014/03/28
  • 幻想的な、とか幽艷と評されることが多い泉鏡花の戯作。確かにそのとおり。主人公は双方とも女性のモノノケだが、モノノケというには美しすぎる女性たちが、愛する者のために思い悩む物語。そのストーリーがまた美しい。昔から日本人は、見えない不思議なものに対して良い意味での幻想的なイメージを持っていると思うが、まさにそういったイメージを描ききっているような。読み終わったときに、何となく現実世界に戻りたくなくなる、そんな感覚になる作品。現実を忘れたいときは、ぜひ。

  • ネームバリューだけで選んだ私が悪いんだけど、戯曲だと知らなくて吃驚。つい最近オンディーヌで戯曲デビューしたばかりだったので、日本の戯曲、、、大丈夫か、、、?と戦々恐々しながら読み進めたが、日本らしい粋な言葉遣いと、色彩豊かで能動的な場面々々に大いに楽しませてもらった。

    特に天守物語は秀逸。舞台場面として天守の第五層を固定しつつ、登場人物の仕草や目線で下層空間を想像させる仕掛けは見事、面白いと思う。なにより、冒頭にて侍女たちが、白露を餌に五色の絹糸で秋草を釣る場面、想像するだに艶やかで美しく、まるで絵巻物を見ているよう。素晴らしい、これが泉鏡花らしさなのかと思わされる一場面だった。

    ストーリー的には特に目新しいものは感じなかったが、あれだけ超常的に描かれている白雪や天守夫人が、元は人間達の欲や我が身可愛さによって、不幸に身をやつし死んでいった人間の女である、という設定に悲哀を感じた。醜い人間社会から外れた、もしくは選ばれた、純真で無垢な人間が、"人間を辞めなければ"幸せにはなれない構造にも同じような悲哀を感じる。

    夏目漱石で身に沁みた筈なのに、「全集」じゃなくて文庫本を選んだものだから、注釈が全くなくて読むのに苦労した、、、(こんなに短いのに!)。本とスマホを行き来するのは辛いから次は絶対に全集にしろ、ということを未来の自分への戒めとしてここに。

  • 鏡花の、人間の驕りを嫌う厭世観みたいなものが出てるのかな。恋心とか真っ直ぐな心根に価値を置いてる感じで、それが美しく、また激しい情念ともなっていく。妖怪?妖精?として描かれる者たちの優美さや残酷さは、大自然のそれとよく似ていると思いました。それにしても、読むのが止まらなかった、面白くて!ユニークだなぁ。澁澤龍彦さんの解説がすごく解りやすくて、さらに味わいが深く感じられます。

  • 鏡花の戯曲二編、澁澤龍彦の解説付。
    夜叉ケ池は百合や晃の清廉さと、妖怪白雪の恋心がせつない。これらを描いた筆力は、戯曲でありながら行間になんともいえない匂いめいたものを感じさせる力を持っている。ただ、彼女らを善、村人を悪に分けてしまうのは少し乱暴だろう。これらは相容れないものだけれど、日照り被害に切羽詰まっているのはどちらか。終わらせ方には救いを見つつも、少し納得がいかなかった。
    天守物語でもそれぞれの場面を想像でき、だが切なさは掻き立てられることなく楽しく読めた。けれどこちらは最後ちょっと拍子抜けしてしまう。澁澤龍彦はこちらに高評価をあてていたが、構造的なことはわからないにしろ、私は夜叉ケ池の方が好き。

  • 歌舞伎座、坂東玉三郎の『天守物語』を観て、この本を読んだ。
    美しい人(男女関わらず)を苦境に追いやる人間たちが妖怪に退治される筋だが、玉三郎様や舞台の残像が残っているせいか、『夜叉ヶ池』までも、背景が思い浮かぶように一気に読んだ。
    台詞の語調も耳に残っているので、目に慣れない文章もすらすらと読め、読むタイミングはとても良かった。
    舞台を観る前だったら、耳にも目にも慣れない表現に難儀したかもしれない。
    玉三郎様がインタビューの中で、
    歌舞伎役者は次々と演目に追われているので、一つの作品をじっくり読み解く、というのは難しいが、舞台にかけている間の1か月間は、毎日声に出して台詞を言っているので、体で読む、『体読』しているようなものだ…
    というようなことを言っていたが、玉三郎様が体読したもを、観客は体で聴く、『体聴』しているようなものかもしれない。
    歌舞伎演目を、初めて通しで文字で読んだわけだが、全部の演目そうしたい。そうすれば、もっと歌舞伎が面白くなるだろうに。
    泉鏡花という作家に関しては、違う作品を読めば、また違う感想を持つと思うので、とりあえず、歌舞伎ネタで感想をまとめてみた。

  • 三島由紀夫と澁澤龍彦の二人がこぞって絶賛している。まさに鏡花戯曲の最高傑作だろう。お芝居は、幕開きの花釣りの場面から美しく、そして幻想的だ。亀姫の訪問と図書之助とのかりそめの恋と、物語のプロットはシンプルなのだが、それが却って幻想性を高めている。舞台は姫路城天守閣第五重。登場する富姫も亀姫も、図書之助も皆ことごとく美しい。とりわけ富姫の妖艶さは、この世のものとも思えない(実はこの世のものではないのだが)。シネマ歌舞伎では富姫に玉三郎、亀姫に中村勘太郎、図書之助が海老蔵と、なんとも豪華なラインナップだった。

  • やさしく甘く妖しい泉鏡花の世界。極上のファンタジーと一抹の末恐ろしさを味わえます。

全115件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

泉鏡花(いずみ きょうか)
1873年11月4日 - 1939年9月7日)
石川県金沢市生まれの小説家。本名は「泉鏡太郎」。明治後期から昭和初期にかけて活躍。尾崎紅葉『二人比丘尼 色懺悔』を読んで文学を志し、上京し本人に入門、尾崎家で書生生活を始める。師弟の絆は終生切れることがなかった。
1893年、京都日出新聞に真土事件を素材とした処女作「冠弥左衛門」を連載。以降、『夜行巡査』、『外科室』、『照葉狂言』、『高野聖』、『婦系図』、『歌行燈』などの作品を残す。1939年に癌性肺腫瘍のため逝去、雑司が谷霊園に眠る。その後1973年に「泉鏡花文学賞」が制定され、1999年金沢に「泉鏡花記念館」が開館。

夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)のその他の作品

泉鏡花の作品

夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)に関連する談話室の質問

夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする