- Amazon.co.jp ・本 (130ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003102756
作品紹介・あらすじ
夢の感応に結ばれた男と女の魂の行方は…。うららかな春の光のなかに夢と現実とが交錯しあう鏡花随一の傑作。
感想・レビュー・書評
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春の昼中のうとうとするような、夢見ごごちというか不思議な気持ちになる。
散策士を通じて「春昼」と「春昼後刻」の2つの物語が結びつく。
○△×の意味を探るために、再び読み返してしまう。
2021年8月18日詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1906年(明治39年)。
春の日中にふと語られる、白昼夢のような幻想譚。目が覚めるから、夢だけれど、いつまでも覚めなけりゃ、夢じゃあるまい――正と狂のはざまに迷い込む。 -
『春昼後刻』長閑で麗で美しいのにどことなくザワザワして落ち着かない、厭な気持ちのする春の描写がすごくいいです。
『春昼』情の露は男の骨を溶解かさずと言ふことなし、をよく表しているかのような、作者特有の暗く煽情的な表現が楽しめます。 -
春麗らかな日に白昼夢を見ている様な感覚に陥る。
ボーッとする瞬間にも胸がザワザワする。
とても不思議だ。
特に春昼後刻が好い。
鏡花の作品の中で一番好きな話。 -
「もしか、死んでそれっきりになっては情けないんですもの。そのくらいなら、生きていて思い悩んで、煩らって、だんだん消えて行きます方が、いくらかましだと思います。忘れないで、何時までも、何時までも、」
美にして艶なる魂の彷徨の物語。 -
静かで美しい一冊。主な登場人物は四人だが、その周りには祭りがあり、子どもがあり、賑やかなのに、四人だけの世界が低いトーンで淡々と描かれている。結末は急な感じがするものの、短い文章の行間にそれぞれの気持ちが描かれているようで、短編ながら奥の深さを感じる。
久しぶりに美しい一冊を読了。 -
題名だけで読み始めたら、春の霞の向こうにゆるゆる展開する怪談だった。この結ばれない恋の禍々しさ! 魔に魅入られて連れていかれてしまったようなものだ。
背中に△□○を書くシーンがとても官能的でした。 -
泉鏡花の力はひとえにその独特の文章にあると思う。言葉は交わさなくても、両者に何かしらの感応があってこういう筋立てになるところは、『外科室』にちょっと似てるかも。今まで読んだ鏡花作品の中でもかなり好きな方です。素晴らしい。
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この人の作品は、どうしても「美しい」と形容したくなる。
でもここで言う「美しい」は、僕が現代の言葉で美しいというときの、純粋で華やかな視覚美という程度の意味合いとは全く違う。泉鏡花の「美しい」は、もっと生々しく具体的な、存在美とでも言うのだろうか。作品世界の中での相対性が調えられて、同じ色一つ、形一つ、動き一つが全く違う、絶対的な鮮やかさを備えている。これぞまさに、正当な芸術性だと思う。すっかりこの「存在美」に魅せられてしまって次々作品を読むことになりそうだ。 -
美しい情景は浮かんでくるものの、私にはちと難解でした。。
レベルを上げて再読したい作品です。