春昼(しゅんちゅう);春昼後刻(しゅんちゅうごこく) (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 66
  • Amazon.co.jp ・本 (147ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102756

作品紹介・あらすじ

夢の感応に結ばれた男と女の魂の行方は…。うららかな春の光のなかに夢と現実とが交錯しあう鏡花随一の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 「もしか、死んでそれっきりになっては情けないんですもの。そのくらいなら、生きていて思い悩んで、煩らって、だんだん消えて行きます方が、いくらかましだと思います。忘れないで、何時までも、何時までも、」

    美にして艶なる魂の彷徨の物語。

  • 静かで美しい一冊。主な登場人物は四人だが、その周りには祭りがあり、子どもがあり、賑やかなのに、四人だけの世界が低いトーンで淡々と描かれている。結末は急な感じがするものの、短い文章の行間にそれぞれの気持ちが描かれているようで、短編ながら奥の深さを感じる。
    久しぶりに美しい一冊を読了。

  • 題名だけで読み始めたら、春の霞の向こうにゆるゆる展開する怪談だった。この結ばれない恋の禍々しさ! 魔に魅入られて連れていかれてしまったようなものだ。

    背中に△□○を書くシーンがとても官能的でした。

  • 泉鏡花の力はひとえにその独特の文章にあると思う。言葉は交わさなくても、両者に何かしらの感応があってこういう筋立てになるところは、『外科室』にちょっと似てるかも。今まで読んだ鏡花作品の中でもかなり好きな方です。素晴らしい。

  • 春も暖かくなってくると読み返したくなる。自分も菜の花、土の中にいるような、ほかほかと眠くなるような。
    そしていつか逗子~秋谷に行ってみたい、と毎回思いますが、あの辺り聖地すぎるので、軽々しくは行けないのです。

  • 鏡花再読キャンペーン中。この連作は鏡花作品の中でもちょっと特異なポジションな気がする。お馴染みの妖怪変化が出てくるわけではないのに幻想的。

    導入はいつもの鏡花。旅の散策士がふとたちよったお寺のお坊さんから、かつて人妻に焦がれて自殺した書生の話を聞く。思わせぶりにやたらと蛇の類は出てくるけれど、今回は直接関係なし。死の前日に青年が山中で見たという夢のような幻覚のような謎の芝居の幻想性が圧巻。狐狸に化かされたような印象は受けるけれど、焦がれた人妻の夢と感応している。

    後刻のほうでは、当の人妻がやっと登場。自殺した青年の片思いではなく、時間差の心中のような展開に。とりあえず当人はともかく巻き込まれた獅子舞の子供が可哀想・・・。

    解説は川村二郎。

  • 初読時には深い霧の中にいるかの如く全体像を把握し切れなかったが、何度か道を辿り直すことでその景色の美しさに触れることができた。読点を多用し、韻を踏むかの様に句点前の母音を畳み掛けて揃える文体と、聞き馴染みが無くも趣深く色彩鮮やかな語彙によって現実とは切り離された鏡花独自の世界が形成されていく。本書では「春昼」と「春昼後刻」、うららかな日差しの中で微睡みながら散歩を進めてゆく二作の作品が合わせ鏡となることで幻想の世界は乱反射し、彼岸の世界は現実を侵食し始める。日本語の美は彼岸の世界の入口であったのかと感嘆。

  • 金沢に行ったので、読んでみた。美しくも怪しい鏡花の世界。

  • 客人と玉脇みをがそれぞれ別々に夢を見て、その夢の中での縁が元でそれぞれ死ぬことで結ばれようとする。
    客人が見た玉脇みをは、散策子に客人のことを語る玉脇みをは現か幻か…春のうららかな暖かさの中の現実と幻想を美しい日本語で読める幸せを味わえた。

  • 泉鏡花のなかで最も好きな作品。
    春の逗子を舞台に展開される時間差心中の物語。

    鏡花お得意の劇中劇のシーンあり。夢とも現ともつかないこの場面には、ドッペルゲンガーのモティーフが効果的に使われ幻想性をいやがおうにも高めます。

    鏡花の文章は初めて読む人には少々難しいかもしれません。主語と述語がきちんと対応しているわけでもなく、また唐突に場面が変わるので筋を追うのが苦痛に感じることもあるでしょう。しかしこれが物語のめくるめく感を高めるのに一役買っているのだと思います。あまり几帳面に文章を捉えようとせずに、臨機応変に読みすすめていくのをお勧めします。

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著者プロフィール

泉鏡花(いずみ きょうか)
1873年11月4日 - 1939年9月7日)
石川県金沢市生まれの小説家。本名は「泉鏡太郎」。明治後期から昭和初期にかけて活躍。尾崎紅葉『二人比丘尼 色懺悔』を読んで文学を志し、上京し本人に入門、尾崎家で書生生活を始める。師弟の絆は終生切れることがなかった。
1893年、京都日出新聞に真土事件を素材とした処女作「冠弥左衛門」を連載。以降、『夜行巡査』、『外科室』、『照葉狂言』、『高野聖』、『婦系図』、『歌行燈』などの作品を残す。1939年に癌性肺腫瘍のため逝去、雑司が谷霊園に眠る。その後1973年に「泉鏡花文学賞」が制定され、1999年金沢に「泉鏡花記念館」が開館。

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