或る女 (前編) (岩波文庫)

著者 : 有島武郎
  • 岩波書店 (1968年1月発売)
4.13
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  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003103616

或る女 (前編) (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ニセコなどを舞台とした作品です。

  • 20代は葉子になりたかった。女として強く生きていく姿にひかれた。後半は読むのが辛かった。

  • 8/4

  • 「その涙の一しずくが気まぐれにも、うつむいた男の鼻の先に宿って、落ちそうで落ちないのを見やっていた。」−読み手の呼吸を操るような、緊張と艶やかさが連続する文章。『白樺』の文豪達が「名人芸」と評す有島節が、美しく残酷で、そして賢しい主人公「葉子」と、彼女を取り巻く情景に血を通わせ、読み手をぞくぞくさせる。

     更にまるで作者が女性であるかのような、女の繊細な心情と肉体の感覚の描写。当の女である私ですら見落としてしまいそうな、女性特有の殊に異性に対する心と体の微かな疼きを、まざまざと印象づける。「葉子」は同性からはそのしたたかさから忌み嫌われ、そして妬まれる最たる女性像であろう。しかし、その実は、賢さ故に社会のスタンダードから弾かれ、強い自立心を持ちながらも、自分への必要に振り回される弱い孤独な女性でもある。私には彼女のように男を手玉に取ることなどとても出来ないが(いや、それほどの男を魅了する美しさと頭を持ち合わせていないと言った方が正しい)、自分の居場所を求めて奮闘し時に空回りするその姿は、自分を重ねるところがあり、実際の生活テリトリーに居れば絶対好意は持ち得ないだろうこの女主人公に、一種の同情と悲しみを感じた。

     また、信仰していたキリスト教の教えに疑問を持ち嫌悪する「葉子」は、作者自身を反映している。この前篇は、いわば「葉子」の不倫愛の序幕であるが、後に不倫の愛から心中した作者の未来をも予告するようだ。作者の現実の「己」が、異性の「他」に投影され、その二つが複雑に溶けあうところに、単なる物語以上の求心力を私は感じるのだ。

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