- Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003103647
感想・レビュー・書評
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解説:小田切秀雄
カインの末裔◆クララの出家詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「カインの末裔」
北海道の農場で、小作人として働く男
その名を仁右衛門という
身体が大きく、また非常に乱暴で
しかも何かと僻みがましい男だった
なにかあったら平気で人のせいにして逆恨みするような奴だ
農場の規則などまるっきり無視
人の親身な忠告にも耳をかさない
隣の女房と姦通する
弱いものに八つ当たりもする
まあ早い話、巨体まかせで生きてこれたために精神が未熟なのだ
いつか自分の土地を持つ夢もあるが
そんな調子で物事が上手くいくはずはない
いろいろやって追い込まれた挙げ句
他の小作人にいいかっこ見せようと、地主の屋敷に直談判へ向かう
しかしそこで
想像をはるかに超えた地主の暮らしぶりに打ちのめされた彼は
その結果、ほんの少しの謙虚な心を手に入れ
いずこへともなく逃げてゆくのだった
「クララの出家」
クララは裕福な家の娘で
道を歩けば誰もがふりかえる美少女である
しかし、いつもわけのわからない憂鬱に悩まされていた
その憂鬱はある日
路上にて発狂した青年を目撃したことから始まったのだ
しかし青年は後に、聖職者となって人々の尊敬を集めるようになった
そんな彼の姿を見ようと、教会に赴くクララだったが
全裸で説教するそのスタイルに衝撃を受けて
そのまま懺悔室までついていき
そこで、神の花嫁になることを命じられてしまう
…どういうつもりで書かれたものかよくわからないんだけど
とてつもなく淫靡な話のようにも思える
有島武郎がアナーキズムに興味を示していたのは確かなことだが -
流浪者 宗教観
カインの末裔 流浪する人の苦悩ー作中の仁右衛門=有島自身
心理的な側面の描き方が鮮やか。 -
カインの末裔。羨望と嫉妬で身を滅ぼす話かなぁと思ってるのですが、救いまで描かなくていいんだ、って思った。カインのしるしまでかかなくていいの。
クララの出家。あまり集中して読めなかったのはあるけど、文章は美しいけどよくわからなかった。
大学図書館913.6A76 -
久し振りに読んだ。両方とも変な味わい。リアリズム性と観念性とのブレント加減がいかにも有島らしい。ただ、そのブレンド加減が、語り手のポジションの不安定さに繋がっている感も。作家としての方法的模索の一里塚、といった位置づけになるのかな。
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おそらく人生ではじめて読み切った一冊。ヘッセの車輪の下かと迷ったが、やはりこの作品で間違いない。
カインという名を大学のキリスト教概論という講義で耳にするまで、この作品のタイトルを完全に失念していた。
カインはアダムとイヴとの長男で弟を殺したがために神に追われた放浪者である。作中の仁右衛門はこのカインの末裔として、また地上の放浪者として描かれている。初読のとき(中学生)、そのような大きなバックグラウンドがある作品だとは思っていなかった。このことを踏まえて再読して、予想外に楽しめた作品だった。わたしにとっては最初の一冊であり、最高の一冊なんだなと感じた。 -
<カインの末裔>無知で野性的な男の救われない話。
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カインの末裔、生きる喜び・目的って何だろう?と考えさせられた。なぜ仁右衛門夫婦は力強く生きる力があるのか?
クララの出家、クララのその後が知りたい。乙女の一時的な感情の高ぶりではないと言えるのか? -
プロレタリアっぽくないプロレタリア。舞台が村ってのがいっすねー。いつの時代も村はこうあって欲しい。村と言う言葉を形容詞として使い続けるためにも。カインの末裔と言えばベイオウルフのグレンデルなんだけど、たぶん関係ないのよね??