一房の葡萄 他4篇 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1988年12月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (114ページ) / ISBN・EAN: 9784003103678

感想・レビュー・書評

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  • 一房の葡萄だけ完読。主人公は絵を描くことが好き。自分の絵具だけでは2色だけ再現できず、クラスメイトの西洋人・ジムが持っている上質な絵の具を盗んでしまう。しかしクラスメイトにバレ、憧れの女性教員のもとに連れて行かれる。そこで女性教員から「後悔していない?」と聞かれ、一房の葡萄をベランダから取ってくれた。翌日、主人公が登校し、ジムは主人公を何故か赦す。主人公から見た教員は母親としての象徴であり、母親から罪を後悔していることを諭された。ジムは教員から、後悔することが一番の「罰」だと伝えられ彼を赦したのだろう。⑤

  • YouTube窪田等の世界
    綺麗な表現を探したく再視聴

    子供の頃の盗みと先生を思い出す話
    教科書や問題文に多く掲載

    《感想》
    良書
    親に欲しいものを欲しいと言えない
    欲望にかまけて物を盗んでしまい後悔する
    子供の頃のストレートでない複雑な気持ちがよく理解できる

    悪いことをした後、大泣きし十分反省した僕を問い詰めなかった先生
    叱咤するか何も言わないかこの加減が難しいのだが、性格を見極めて子供を信じてみようとすることも、大事な大人の務めなのだな

    綺麗な表現
    ・眼がいたいように綺麗でした
    ・空の奥の奥まで見すかされそうに晴れわたった日でした
    ・心からしおれてしまった
    ・頭の中が氷のように冷たくなるのを気味悪く思いながら…

  • 有島武朗による名著一房の葡萄含む短篇集。
    一房の葡萄は短編ながら短い中にハッとさせられることが多い。盗まれた側の1日で許してくれる心の広さは人間力が試されると思う。
    先月はどう説得したかの描写はないが。許すことを説得させた大人は必要なんだと思った。

  • こういうのは雰囲気を作って読んだらますますいいだろうと思ってわざわざ箱根に出かけた。小高い山の上の温泉につかって風に吹かれながら座敷に寝ころびいい調子で読んだ。80年以上前の逸品。著者唯一の単行本。童話。子どもたちの為に残した遺言書なのか。ジムと僕と先生と西洋絵具。そして一房の葡萄。『・・・そういって先生は僕のカバンの中にそっと葡萄の房を入れて下さいました。僕はいつものように海岸通りを、海を眺めたり船を眺めたりしながら、つまらなく家に帰りました。・・そして葡萄をおいしく喰べてしまいました。』今年、夏の思い出の一冊。

  • 絵本のお話のような、美しさを感じる児童向け物語、と感じました。
    どんな本かよく知らず読み始めたので表題の一房の葡萄を読み終えたあと、あ、こういうのかとギャップを感じた。
    たまに退屈する話もあっだけどなんとか読み終えました。
    子どものころからこんな読みやすいのに凛とした、美しい物語に触れて育ったら素敵な感性が育ちそう。

  • 5本の短編童話集。中でも「僕の帽子のお話」が良かった。大人になると帽子一つ無くしたところで、他のものを買おうという気持ちになってしまうが、子どもだからこそ一つの帽子に執着し大切にし、それがなくなるという恐怖心を鮮明に描いていて良かった。
    リアルにエゴイズムが描かれているので子どもができたら読ませたい。


  • 誰しもが成長をする過程で、大人の庇護下における無邪気な残虐性、エゴ、欲望なんかを徐々に受け入れていくものかもしれないけど、受け入れる”勇気”
    をもつのは相当に難しい。

    自分の穢れた部分に名すら分からず、もがき、苦しむ。それが思春を迎える前のイニシエーションであるかのよう。

    それを全て解消しきれずに大人になっている部分もある。
    この童話集はその名も知らない葛藤をありありと
    描くことで「みんなそうなんやで」と安心させてくれる。

    子供に読ませたい一冊であり、大人にも是非おすすめしたい。

    「或る女」と併読

  • 子供時代にしかない感性ゆえの、豊かな表現が色に表れていた。
    誰もが経験する吐露出来ない感情が文字を媒介して伝わってくる。少年時代の苦さ。
    本にこんな表現するのってどうなんだろう、とも思うけど、この作品は可愛い。

  • 取り返しのつかないことをしてしまったときの死んでしまいたいような気持ちを追体験して、読んでいて苦しかった。
    先生が少年を叱らないでくれて良かった。
    色彩のコントラストが綺麗。

  • 子どもの残酷が誤魔化されず描かれていて気味が悪いくらいだと感じたが、作者自身の意図であるという。そのあとに救いがもたらされるのは、なれば、解説に聞いて私が思うに、作者の希望、こうあってほしいという願いなのかもしれない。また原本から一編を敢えて除外したというが、それは、作品それ自体の描写からまざまざと呼び起こされる「子ども≒自分の内部」、「すべて子どもであったものたち」の共感を呼ぶのを怖れたからだろうか。

  • 苦しい、心がぎゅーっと辛くなる。
    道徳の教科書を読んだ後のような感じ。
    それ故に、もう疑似体験したくなくて、学生の頃に一度きりしか読まなかった作品。

    子供のいる今、改めて読んでみたら、また別の視点からの切なさでいっぱになった。

    読後感は良くない、好きじゃない、辛いから。
    でも、淡々と書かれているのに、深く深く入ってくる文章。
    活字だけで、こんなに複雑な感情にさせる、
    素晴らしい作品。

  • みずみずしい青春の記憶が描かれた作品。少し古風な話し言葉もリズム感が心地よく、読み終わったあとの清涼感がある。わかりやすい文体で、学生にも読みやすい。二、三十分で読み終わるのでちょっと時間がある時に良い。

  • 少年の心の機微を丁寧に書いていて、気持ちが”私”とシンクロする。人は誰しも誘惑に負けてしまう。その後悔のさまや、それでも食欲などの欲求は自然とあり、最後の先生の白い手が印象に残る。

  • 小学校高学年か中学校の時だったと思うのですが、読書感想文での課題図書の1つでした。31才となった今(読了時点)、改めて読み直したのですが、、、当時の自分には感想文を書くには早すぎたというか、違う面持ちで読みました(童話を子供の立場から大人の立場で読み直したのですから、当たり前といえば当たり前なのですが、それ以上のものがこの作品にはあると感じてます)。

    それにしても、『或る女』でもそうですが、有島武郎の主人公の心理描写の表現能力(「筆力」というべきでしょうか)には感心せざるをえません。『惜しみなく愛は奪う』でも示される思考力・表現能力をみれば、それも納得です。

    なお、個人的には、本書の解説も分かりやすくて納得感もあり、よく出来ているように感じてます。

  • 『小僧の神様』のあとに収録されていたので、気になって読んだ。私はこちらの話のほうがよかった。

    少年は二色の絵の具がどうしてもほしい。友達のを盗み、友達にばれて、先生にもばれる。少年は女性の先生に、嫌われたくない。
    少年の気持ちがよく伝わってくる。
    そして、窓の外になっている葡萄を先生が取るシーン。
    情緒的にすごくよかった。

  • いい先生がいてよかったなぁ…。必ず救いがあるのだけど、切ない気分になる短編集。

  • 「-」

    久しぶりに児童文学を読みました。
    『溺れかけた兄弟』で兄が妹を見捨てるような、児童が読むには強い印象を与える場面もあるとおもいましたが、それこそ現実であるという作者の思いが伝わってきました。『一房の葡萄』では、反省している人に対しては、他罰する必要がない、ということが伝わってきました。これは子どもだけではなく、すべての人が普遍的に心得ることだと思います。

    『火事とポチ』も面白く、想像上では犬をいつくしむ気持ちと、しかし、実際に汚れた愛犬を見ると気味悪く思う気持ちとの対比が、まさに子ども心を表していると感じました。

  • 小学校の、暑くて、風がときおり入ってくる教室にいるような気分になります。有島武郎らしい、あたたかい作品です。

  • 一見すると、とても平凡な才能に感じる。しかし、肝心なのは、文章表面に付着する物語のテクストではないと思う。それは、その文体の内面を流れる虚しさにある。彼にとって、何か大きなものに虚しさを抱え葛藤していたように見える。その深淵は、実はとても深いものがあるものだと感じた。しかしその哀愁は表面上の幸福によって隠されている。しかし、無意識の中に、自然とその彼の哀愁が伝わってくるからこそ、人々に乾いた安らぎをもたらすのだと思う。その安らぎとは、大きなものに絶望した、その中での、小さなものに対する愛情であると思う。

  • 渋くて苦くて、そのくせ飛び切り甘い。瑞瑞しい葡萄の香り。罪を犯しても差し伸べられる温かい手。物を盗んだことを悔い、思い悩むことは同じでも、ヘルマンヘッセの「少年の日の思い出」は内発的、有島武朗の「一房の葡萄」は外発的なもの。そんな違いを比べながら読むと、また楽しいかと思う。

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著者プロフィール

1878年、東京生まれ。札幌農学校卒業。アメリカ留学を経て、東北帝国大学農科大学(札幌)で教鞭をとるほか、勤労青少年への教育など社会活動にも取り組む。この時期、雑誌『白樺』同人となり、小説や美術評論などを発表。
大学退職後、東京を拠点に執筆活動に専念。1917年、北海道ニセコを舞台とした小説『カインの末裔』が出世作となる。以降、『生れ出づる悩み』『或る女』などで大正期の文壇において人気作家となる。
1922年、現在のニセコに所有した農場を「相互扶助」の精神に基づき無償解放。1923年、軽井沢で自ら命を絶つ。

「2024年 『一房の葡萄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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