一房の葡萄 他四篇 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (114ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003103678

作品紹介・あらすじ

有島武郎が生前に残した創作集は『一房の葡萄』ただ一冊である。挿絵と装丁を自ら手がけ、早く母を失った3人の愛児への献辞とともに表題作ほか3篇の童話が収めてある。童話とはいうものの、人生の真実が明暗ともに容赦なく書きこまれており、有島ならではの作となっている。ほかに「火事とポチ」を加えた。

感想・レビュー・書評

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  • 一房の葡萄だけ完読。主人公は絵を描くことが好き。自分の絵具だけでは2色だけ再現できず、クラスメイトの西洋人・ジムが持っている上質な絵の具を盗んでしまう。しかしクラスメイトにバレ、憧れの女性教員のもとに連れて行かれる。そこで女性教員から「後悔していない?」と聞かれ、一房の葡萄をベランダから取ってくれた。翌日、主人公が登校し、ジムは主人公を何故か赦す。主人公から見た教員は母親としての象徴であり、母親から罪を後悔していることを諭された。ジムは教員から、後悔することが一番の「罰」だと伝えられ彼を赦したのだろう。⑤

  • YouTube窪田等の世界
    綺麗な表現を探したく再視聴

    子供の頃の盗みと先生を思い出す話
    教科書や問題文に多く掲載

    《感想》
    良書
    親に欲しいものを欲しいと言えない
    欲望にかまけて物を盗んでしまい後悔する
    子供の頃のストレートでない複雑な気持ちがよく理解できる

    悪いことをした後、大泣きし十分反省した僕を問い詰めなかった先生
    叱咤するか何も言わないかこの加減が難しいのだが、性格を見極めて子供を信じてみようとすることも、大事な大人の務めなのだな

    綺麗な表現
    ・眼がいたいように綺麗でした
    ・空の奥の奥まで見すかされそうに晴れわたった日でした
    ・心からしおれてしまった
    ・頭の中が氷のように冷たくなるのを気味悪く思いながら…

  • 有島武朗による名著一房の葡萄含む短篇集。
    一房の葡萄は短編ながら短い中にハッとさせられることが多い。盗まれた側の1日で許してくれる心の広さは人間力が試されると思う。
    先月はどう説得したかの描写はないが。許すことを説得させた大人は必要なんだと思った。

  • こういうのは雰囲気を作って読んだらますますいいだろうと思ってわざわざ箱根に出かけた。小高い山の上の温泉につかって風に吹かれながら座敷に寝ころびいい調子で読んだ。80年以上前の逸品。著者唯一の単行本。童話。子どもたちの為に残した遺言書なのか。ジムと僕と先生と西洋絵具。そして一房の葡萄。『・・・そういって先生は僕のカバンの中にそっと葡萄の房を入れて下さいました。僕はいつものように海岸通りを、海を眺めたり船を眺めたりしながら、つまらなく家に帰りました。・・そして葡萄をおいしく喰べてしまいました。』今年、夏の思い出の一冊。

  • 絵本のお話のような、美しさを感じる児童向け物語、と感じました。
    どんな本かよく知らず読み始めたので表題の一房の葡萄を読み終えたあと、あ、こういうのかとギャップを感じた。
    たまに退屈する話もあっだけどなんとか読み終えました。
    子どものころからこんな読みやすいのに凛とした、美しい物語に触れて育ったら素敵な感性が育ちそう。

  • 5本の短編童話集。中でも「僕の帽子のお話」が良かった。大人になると帽子一つ無くしたところで、他のものを買おうという気持ちになってしまうが、子どもだからこそ一つの帽子に執着し大切にし、それがなくなるという恐怖心を鮮明に描いていて良かった。
    リアルにエゴイズムが描かれているので子どもができたら読ませたい。


  • 誰しもが成長をする過程で、大人の庇護下における無邪気な残虐性、エゴ、欲望なんかを徐々に受け入れていくものかもしれないけど、受け入れる”勇気”
    をもつのは相当に難しい。

    自分の穢れた部分に名すら分からず、もがき、苦しむ。それが思春を迎える前のイニシエーションであるかのよう。

    それを全て解消しきれずに大人になっている部分もある。
    この童話集はその名も知らない葛藤をありありと
    描くことで「みんなそうなんやで」と安心させてくれる。

    子供に読ませたい一冊であり、大人にも是非おすすめしたい。

    「或る女」と併読

  • 子供時代にしかない感性ゆえの、豊かな表現が色に表れていた。
    誰もが経験する吐露出来ない感情が文字を媒介して伝わってくる。少年時代の苦さ。
    本にこんな表現するのってどうなんだろう、とも思うけど、この作品は可愛い。

  • 取り返しのつかないことをしてしまったときの死んでしまいたいような気持ちを追体験して、読んでいて苦しかった。
    先生が少年を叱らないでくれて良かった。
    色彩のコントラストが綺麗。

  • 子どもの残酷が誤魔化されず描かれていて気味が悪いくらいだと感じたが、作者自身の意図であるという。そのあとに救いがもたらされるのは、なれば、解説に聞いて私が思うに、作者の希望、こうあってほしいという願いなのかもしれない。また原本から一編を敢えて除外したというが、それは、作品それ自体の描写からまざまざと呼び起こされる「子ども≒自分の内部」、「すべて子どもであったものたち」の共感を呼ぶのを怖れたからだろうか。

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著者プロフィール

1878年、東京生まれ。札幌農学校卒業。アメリカ留学を経て、東北帝国大学農科大学(札幌)で教鞭をとるほか、勤労青少年への教育など社会活動にも取り組む。この時期、雑誌『白樺』同人となり、小説や美術評論などを発表。
大学退職後、東京を拠点に執筆活動に専念。1917年、北海道ニセコを舞台とした小説『カインの末裔』が出世作となる。以降、『生れ出づる悩み』『或る女』などで大正期の文壇において人気作家となる。
1922年、現在のニセコに所有した農場を「相互扶助」の精神に基づき無償解放。1923年、軽井沢で自ら命を絶つ。

「2024年 『一房の葡萄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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