寺田寅彦随筆集 2 (岩波文庫 緑 37-2)

著者 :
制作 : 小宮 豊隆 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 308
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003103722

感想・レビュー・書評

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  • 作者は夏目漱石の門下生のひとり(―というか、教え子なのですがほとんど友人のような扱い―)で、
    漱石と共に文学を語る素養をもっているそのくせに
    東大理学部卒の
    東大理学博士
    とかいうバリバリ理系な上に、音楽にも詳しいという
    ナイスガイ(笑)です。
    『我輩は猫である』に水島寒月という名前で登場したりしてますが、

    シイタケを食べて前歯がかけた

    という経歴を持つ物凄いツワモノっていうかイロモノです。

    そんな寅彦の随筆はやたら面白くて仕方ないのですが。最初に読むならこの2巻がお奨めです。

    明治というか大正時代の昔から、
    「満員電車」というものは存在したらしく「電車の混雑について」
    という一説があります。

    "満員電車のつり皮にすがって、押され突かれ、もまれ、踏まれるのは、
    多少でも亀裂(ひび)の入った肉体と、
    そのために薄弱になっている神経との所有者にとっては、
    ほとんど堪え難い呵責である。"

    分かるよ寅彦!そうだよね!

    "まず停留所に来て見るとそこには十人ないし二十人の
    群れが集まっている。そうして大多数の人は
    いずれも熱心に電車の来る方向を気にして
    落ち着かない表情を露出している。
    その間に群れの人数はだんだんに増す一方である。
    五分か七分かするとようやく電車が来る。

    するとおおぜいの人々は、
    降りる人を待つだけの時間さえ惜しむように先を争って乗り込む。

    あたかも、もうそれかぎりで、あとから来る電車は
    永久にないかのように争って乗り込むのである。"

    いまと全く、まったく同じですね

    文語的言い回しがなんとも好き「落ち着かない表情を露出している」

    そしてトラは、このあと統計をとって、

    「混雑した電車の公式」

    を編み出し、なにやら図表を用いて、更に難しげな関数でもって解いてみせるのです。
    人間に対してはどこまでもツンデレな寅彦の書く「猫」という一説なんて、そのデレデレっぷり(笑)に
    頬が緩みっぱなしで笑ってしまうのですが、最後のほうの言葉にハっとさせられます。

    ・・・・とらひこ!!!!と肩をたたきたくなるような随筆です。
    短編だし繫がりもないので、電車で軽くよむならちょうどいいんじゃないかと思います

  • 『寺田寅彦随筆集 第二巻』(小宮豊隆編,岩波文庫 1947年9月第1刷,1964年1月第22刷改版,2015年5月第87刷)を読んだ感想。
    少しづつ読み進めて第二巻を読み終えた。第一巻では寺田寅彦の視点の鋭さと文章の行き方に舌を巻いてばかりだったが、第二巻は突っ込みどころ満載、真面目なのかふざけて書いているのか判らない箇所も多く、かなり面白い。実際笑える。抱腹絶倒と言うてもさほど大袈裟ではなかろうと思う。
    先づ『比較言語学における統計的研究法の可能性について』を一つのヤマと見ることができる。この編の中の表で、
    beat : butu
    laugh : warahu
    などと比較しているので怪しみつつ見ていくと、
    tray : tarai
    mattress : musiro
    と来た。いやそれはないだろうと思う。
    この辺りが真面目だかふざけているのか判らないところです。
    この編に就いては、雑な研究でも尤もらしい体裁を整えて発表すると真実らしく罷り通ってしまう事を戒める逆説として受け取ったが、どうであろう。
    この編の前後の編にもポツリポツリと「言語比較」が出て来るのが効いているところで第二巻最大のヤマ『ルクレチウスと科学』に差し掛かる。
    この編はルクレチウスの『物の本質について』を読み感銘を受けた寺田によるその解説です。時代を超越するルクレチウスの科学的精神と方法は、科学的知識が増進した当代の我我にも大いに裨益するところがあるとする主旨で、概ね肯けるが、「マットレス―ムシロ」の無理矢理感か頭に残っている事もあり、幾らか贔屓目の無理筋擁護に感じられる。
    『映画時代』にはアメリカの事柄やジャズに就いてさらりと酷い事が書いてある。この辺り寺田の人間味が垣間見られる様で面白い。
    『怪異考』と『化け物の進化』は怪奇現象や妖怪に就いての短い論考で、親しみやすい内容で楽しめた。特に鎌鼬の条、気圧の低下でそう簡単に人間の皮膚がスパスパ切れてたまるかと常日頃から思うて居たので、少し溜飲が下がった。
    他、過去や追憶を描く文章はいつもながらうまい。名品『子猫』も収録。大いに楽しめた。

  •  本書を読んでいる期間中にコロナに感染。どこからもらったのかまったく不明。退職してから,たくさんの人に会うこともないし,せいぜいが喫茶店とホームセンターといつもの商店に行ったくらい。まったくかかるときには罹るんですね。
     そんなわけで,なんとなく記念する本となった寺田寅彦の随筆集の第2巻である。
     この随筆集は,発表年順にまとめられているのだが,本書は,大正11年4月の発表した「蓄音機」から,昭和6年の「時事雑感」が収められている。
     特に興味の持ったのは「蓄音機」,そしてなんといっても「ルクレチウスと科学」だ。他にも寅彦ならではの視点がいっぱいで,読んでいて、大変刺激的だ。
     たとえば「相対性原理側面観」の次の文章は,寅彦しか書けまい。

    私はどんなにむつかしい理論でもそれが「物理学」に関したものである限り,素人にどうしてもなんらかの説明をもする事もできないほどにむつかしいものがあるとは信じられない。もしあったらそれは少なくも物理でないといったような心持ちがする。/少なくもわれわれ素人がベートーヴェンの曲を味わうと類した程度に,相対性原理を味わうことはだれにも不可能ではなく,またそういう程度に味わう事がそれほど悪い事でもないと思う。(74ぺ)

  • 1巻と比べて科学的なものが中心になっている。
    科学者として見た世界。様々な疑問に理路整然と議論を投げかける。
    当時の知識人に見られたありきたりな社会批判も幾つか散見される。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784003103722

  • 科学的なエッセイが中心。

  • 「電車の混雑について」で書かれていることは今でも適用できそう。

  • 随筆集で長く読めるっていうのは非常に貴重だと思う。科学的な視線から日常の徒然を観察したり、その逆に日常の観点から科学を再考したり、相変わらず気付きが多い。1巻と併せて繰り返し読みたい。流石に3巻以降はダレるんでしばらく後でいいやw

  • 「電車な混雑について」は出色。80年以上前のエッセイなのに新しい。

  • 請求記号:テラダ
    資料番号:010757375

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著者プロフィール

1878–1935
東京に生まれ、高知県にて育つ。
東京帝国大学物理学科卒業。同大学教授を務め、理化学研究所の研究員としても活躍する。
「どんぐり」に登場する夏子と1897年に結婚。
物理学の研究者でありながら、随筆や俳句に秀でた文学者でもあり、「枯れ菊の影」「ラジオ雑感」など多くの名筆を残している。

「2021年 『どんぐり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

寺田寅彦の作品

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