柿の種 (岩波文庫)

著者 : 寺田寅彦
  • 岩波書店 (1996年4月16日発売)
3.82
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  • レビュー :76
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003103777

作品紹介

日常の中の不思議を研究した物理学者で随筆の名手としても知られる寺田寅彦の短文集。「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」という願いのこめられた、味わいの深い一七六篇。

柿の種 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 科学者・寺田寅彦の随筆集。
    身近な出来事や発見を綴った文章は、2行のものから長いものでも3ページくらいで、気軽に読めました。
    特に猫についての発見を書いたものが微笑ましくて好きです。

    寺田寅彦の物理学者としての視線も芸術家としての視線も味わえます。
    日常の中にもまだまだ不思議があふれている。
    その不思議を1つ1つ発掘していく科学の原点を見せてくれました。
    科学は決して特別なものではなく、誰にとっても身近なものであることに改めて気付かされました。

    面白くてついついページをめくる手が止まりませんでした。
    自序には「この書の読者への著者の願いは、なるべく心の忙しくない、ゆっくりとした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたいという事である」…と書かれていましたが、残念ながら今回の私の読書は寺田寅彦の願いに合った読み方ではなかったですね…。
    次回は1日1篇ずつ噛みしめつつ読もう。

  • 古本で購入。

    「天災は忘れた頃にやってくる」
    と言った(と言われている)物理学者、寺田寅彦の短いエッセイを集めた本。
    「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」
    という著者の願いを無下にした一読者ではあるけれども、夜ごと数編を読んで眠りにつけば、きっとゆったりした心持ちになれるだろう。

    寺田寅彦の「気付き」の鋭さおもしろさに唸らされる。
    いっこうに花の咲かないコスモスに、ある日アリが数匹いた。よく見ると蕾らしいのが少し見える。コスモスの高さはアリの身長の数百倍、人間にとっての数千尺にあたる。そんな高さにある小さな蕾を、アリはどうして嗅ぎつけるのだろう―
    言われてみれば何てことのないような、だけど誰も気にもとめないようなことに、「あぁ、確かに」と思わされてしまう。

    また、俳人でもある彼の目を通して見る東京の日常は、詩情豊かで味がある。
    永代橋のたもとに電車の監督と思しき四十恰好の男がいて、右手に持った板片を振って電車に合図している。左手は1匹のカニを大事そうにつまんでいる。そうして何となくにこやかな顔をしている。この男には6つ7つの男の子がいそうな気がした。その家はそう遠くない所にありそうな気がした―
    読んでいて知らず微笑んでしまうようでいて、どこかせつない感じのエピソードがいくつもある。

    日々の生活に、そうした光景はきっといくつも通り過ぎていくのかもしれない。
    僕の生には詩が足りない。

  • 物理学者である寺田寅彦の随筆集。短いものは1ページちょい、長い者でも10ページに満たない様々な文章が収められており、どれを読んでも楽しめます。
    物理学者であるにも関わらず、文学者のような視点も備えた著者が見た大正と昭和の時代の移り変わり、そして関東大震災後の復興の様子もここから読み取れます。

    体の弱かったらしい著者の、「泥坊のできる泥坊の健康がうらやましく、大臣になって刑務所へはいるほどの勢力がうらやましく、富豪になって首を釣るほどの活力がうらやましい。」という文章には、シニカルで滋味深い著者の力量が感じられます。折りを見てゆっくりと読み返したい本です。

  • のんびりまったり、お茶でも飲みながら読みたい一冊。
    科学者の詩情、風流心、そして諧謔が楽しめる。

    寺田寅彦を最初に読んだときは、「科学者なのに」こんなに文学的な作品が書けるのかと感心したものだけれど、考えてみれば科学と文学って別に対立するものでもないな。この人の場合、むしろ「科学者だからこそ」の視点がよりいっそう文章に趣きを加えているように感じられる。

  • とある食堂で芭蕉と歌麿が一緒に来店するという白昼夢を見る話が何だか面白い。コーヒーを頼む芭蕉と葡萄酒を呑む歌麿と、ぼんやり眺める寅彦。

  • 随筆の名手、寺田寅彦が日々の生活で感じたことを書き留め、それをまとめた本。
    昔の知識人に対して強い憧れを持っているのだけれど、この本は正に知識人の普段の物の見方が分かる貴重な本。ひとつひとつの着眼点にとても感銘を受けた。わびさびの世界についても少し分かるかもしれない。


    友人曰く「寺田寅彦のTwitter」

  • いうなれば明治のTwitter

    ガラスの割れ方や墨の吹流しなど身近な物も日常に限りなく浸透したものを研究してきた、当時としては異端の研究者である寺田寅彦の見たこと聞いたこと思いついたこと、よしなし事を短く綴った小品達。
    漱石の弟子にして物理学者の彼の発想や思想はとても面白いです。猫の尻尾に思いを馳せ、鳥のガラス教育の必要性を考える。

    彼の見た世界を垣間見ることは非常に面白い。毎日一品ずつ、ゆっくりと噛み締めるように味わうべき作品です。

  • 物理学者で、こんなに詩情のある人っているのね(漱石の弟子)
    猫を観察する目の優しさ、関東大震災後に「被服廠の惨劇を見るのは免れたが、木の無数の死骸を見た」話、現実と空想を仕切るガラス、教科書には震災火災や揮発油の扱いなどの大事な事が載っていない。編纂者や為政者を先に教育すべき。思った事を伝えるには、そのまま書いては伝わらないのかも知れない。
    「緑の焔をあげて燃ゆる小蝋燭を点しつらねたようにも見える」これが、白木蓮の若葉の描写ですよ!
    どれも日常を書いて、平易で飄々としていながら、含まれている意味深くおもしろい

  •  物理学者であり、随筆家、俳人でもあった寺田寅彦氏の「短章集」。
     俳句雑誌などに掲載された、かなり短めの文章を随筆集から独立させた形で集めたもの。
     長くても2~3ページ、短いものだと数行で書かれている。
     より個人的な内容とのことで、随筆集等に掲載されている作品よりも「他所行き」ではない感想をそのまま叙述した文章になっているとのこと。
     不勉強ながら、僕はこの方を全く存じ上げておらず、とあるサイトの書評を読んで興味を持ち、本書を手にしたのだが、当たりだったようだ。
     日々の何気ない出来事に対する著者の感じ方、受け取り方がとにかくステキなのだ。
     ものすごい教訓や、とんでもない思考が含まれている訳ではないのだが、何か心温まる、頬がどことなく緩んでしまうような、あるいは少しシュンとしてしまうような、ときには「そうか、そういう考えもあるんだな」と目から鱗がボロボロと落ちてくるような、そんな印象だろうか。
     何気なく肩に置かれた手が予想以上に柔らかくて暖かかった、って感じ。
     大正9年から、著者が亡くなる昭和10年(亡くなるわずか2か月前)までの事柄が書かれているので、その当時の日本の風景等も垣間見ることができる。
     今の付箋紙のルーツともいえるような「不審紙」なんてものがあったのも初めて知ったし、通貨にはまだ「銭」が使用されていたりする。
     中には先の日本のことを予言したような内容もある(まるで日本の敗戦を予知しているかのような内容がある。当時はまだ第二次世界大戦前)。
     また、これが書かれた当時から全く成長していない日本(教育に対する嘆きなんてその最たるものかもしれない)に読みながらハっとさせられたりもする。
     大きな口を開けて、ムシャムシャとほおばって食するのではなく、少しずつ、丁寧に丁寧に口に運んで、ゆっくりと咀嚼しながら味を楽しむ、そんな読み方をお勧めしたくなる作品だった。

  • どこを読んでも、どこから読んでも、いつ読んでも、味わい深い。

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