- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003103838
感想・レビュー・書評
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生い立ちというよりも主に子供の頃の断片的な回想録という感じ。挿絵がいい。
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若き日の帯の如くにその町もかの町も見ゆ浪華思へば 与謝野晶子
今年は、与謝野晶子生誕140年にあたる年である。生家は、大阪府堺市の和菓子商駿河屋。三女に生まれた晶子は、羊かんを竹の皮で包みつつ、また時折は、本を読みながら店を手伝っていたという。
そんな少女時代を回想した大正期のエッセー「私の生い立ち」が、このたび、文庫本で読めるようになった。しかも、雑誌連載当時の竹久夢二の挿画がそのまま掲載され、大正ロマンの風情も味わえる。
さて、少女時代の晶子は、美しい髪形や着物に強いあこがれを抱いていたようだ。というのも、母が厳しかったため、いつも髪は短く、着物も兄のおさがりだったらしい。そのことがよく伝わるのが、「おさやん」という章である。
「おさやん」は、色白で人形のように愛らしい従妹。二人は、当時人気のあった江戸紫の帯を締めていたが、おさやんは上質なちりめんの帯、対して晶子は「メリンス」(毛織物)の帯だった。祖母の家で一緒にお風呂に入った時、ひと足先にあがった晶子は、うらやましさのあまり、思わずおさやんの帯を締めてしまう。すると、おさやんが風呂からあがってきて、「私の帯やわ」と。晶子は、恥ずかしさとともに寂しさも感じ、そのちりめん帯の手触りは大人になっても忘れられなかったという。
掲出歌は、直接にはこのエピソードに関わる歌ではない。けれども、故郷を思う折に「帯」という語が出てくるとは、切ないような、独特の感傷が伝わってくる。(2018年11月4日掲載) -
私の生い立ち
私の見た少女
著者:与謝野晶子(1878-1942、堺市、歌人)
解説:今野寿美(1952-、東京都、歌人)
挿画:竹久夢二(1884-1934、瀬戸内市、画家)