濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

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  • 岩波書店
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本棚登録 : 847
レビュー : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003104156

感想・レビュー・書評

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  • たまたま散策していたら「墨東病院」の看板が。
    そういえば永井荷風は読もうと思って読んだことないんだよなー、むか~し映画(新藤兼人監督版)は観たんだけどこの辺が舞台だったのかな~なんて思いながら図書館へ。

    ★★★
    6月の雨の日。初老の小説家大江匡は、隅田川の東、向島の私娼窟で雪という女と出会う。
    雪の商売のための家に大江は日参する。
    季節は変わり、秋になり冬になり、そして通わなくなる…
    ★★★

    永井荷風は家を出てなかなか好きに生きた人のようで、この小説のエピソードも実体験が元になっているようです。しかし文体からはなんとも自然でゆったりとして、作者の奔放さはみえなかったです。ふっと始まって、なんとなく終わった二人の関係がなんとも情感溢れています。
    題名がいいですよね。
    「濹東」は永井荷風の造語で隅田川の東、向島の界隈。
    「綺譚」は、「奇談」「奇譚」でなく、「綺譚」。
    隅田川の東でのちょっと変わったお話を書き綴ってみる…と言う感じでしょうか。

    映画の方は、永井荷風の後半生に「濹東綺譚」でのエピソードを織り込んだ創りでした。
    小説では直接的な艶っぽい描写は描かれてはいませんが、映画では表現され、当時の下町の吉原近辺文化がうかがえます。

    しかし雪役の女優が墨田ユキって名前で配役決めただろう、と思ってたものでした。



    …「濹東」が永井荷風の造語なら、病院名はそこからなんですかね…?

    • だいさん
      >墨東病院
      これ、錦糸町駅の近くじゃないのですか?
      >墨東病院
      これ、錦糸町駅の近くじゃないのですか?
      2014/10/07
    • 淳水堂さん
      だいさん
      こちらへもありがとうございます。

      はい、まさに錦糸町の近く。
      散策してたのはちょっと違う方面で、「墨東病院はこちら」の看...
      だいさん
      こちらへもありがとうございます。

      はい、まさに錦糸町の近く。
      散策してたのはちょっと違う方面で、「墨東病院はこちら」の看板だけ見つけて、家に帰って調べたら錦糸町駅前にあるようですね。
      私は”墨東”とは本当に昔はそういう地名かと思っていたので、「あの映画の舞台はこの辺か、では本も読んでみよう」となったのですが、”墨東”って荷風の造語だったんですね。
      小説からとったならなかなか洒落た命名だなと。

      それでは、他の本へのコメントのお返事はまたゆっくり後日させて下さい。*^^*
      2014/10/07
  • 永井荷風の代表作にして、文学史上に残る有名作。この作家の作品は、今回がはじめてである。読んでみてまず思ったのは、「これは小説なのだろうか?」ということ。これはべつに批判ではなく、主人公・大江匡(=荷風?)が向島や玉の井の界隈を散策するさまが軽快な筆致で描かれており、まるで日記や随筆を読んでいるような感覚に陥る。お雪との逢瀬など、それなりに起伏はあるものの、それだけといえばそれだけで、話らしい話はあまりないともいえ、そういう意味でも「小説」感は薄い。ただ、さすがにこれだけ名が知れ渡っているのにはやはり理由があり、だからといってつまらないなどということはまったくなく、ありのままを噓偽りなく描き出した(ような)世界観は、素朴で快い感情を与え、ヘタな創作よりもよほど率直におもしろさを嚙みしめることができる。また、当時の風俗などを知ることができるため、そういう点も興味深く楽しみながら読むことができた。

  • 学識がある社会不適合者の小説は、面白くないはずがない。

  • 散策中の雨が偶然出逢わせた、歳の離れた男女。暖かく心を通わせだす。

    通う男の洒脱な言い訳は、小説の取材。作品と現実が微かに重なる、夕暮れの季節。

    昭和初期の景色や匂いを感じさせる克明な描写が、心をタイムスリップさせてくれる。

  • 2008年12月23日~24日。
     実は読む前のイメージが「堅苦しい本だったらどうしよう」だった。
     何しろ名前だけは知っているが読むのは初めての作者。
     そんな心配も無駄だった。
     非常に読みやすく、風情のある、美しい文章。
     そして昭和初期当時の風俗が手にとるように判る。
     スーっと読めてスーっと心に入ってきた。

     お話は、やはり切なくて哀しい。
     男も女も切なくて哀しい。
     非常に心を揺さぶられます。

  • 本棚を見ていて「そういえばこれは読んでなかったな」と思い、手にとってパラパラめくるとレシートが挟んであった。
    見ると「湘南堂書店99年7月24日21:05」とある15年の間いわゆる「積ん読」となっているという歴史ある文庫本である。どうせ俺のことだから早くに始まった神保町での呑み会がお開きになった帰りに買ったのであろうが、酒が入っており活字を追うのが面倒くさくて読まずにそのままだったのだろう。

    というわけで、50近くにして初永井荷風。『濹東綺譚』とはいえどこが綺譚なのかよくわからんが、このしっとりした空気感はなんだ。妙に心地がいいじゃないか。荷風はこういう作家だったのか……(晩年だけか?)。
    積ん読だったが、逆にいろんな本を読んだ後の40歳すぎだからこそ、この空気感を味わうことができたのかもしれない。
    鏑木清方の随筆と同じ「旧きよき日本」のにおいがかげた。

  • 短いお話だけれど、なんとも情趣のある話。
    日本人で良かった。

  • これも青空文庫で読む。永井にはまっている。当時の風俗もわかり、実に面白い。

  • お風呂で読んだ。半分エッセイのような趣もあり、のんびり読んでいたが、終盤に向けて切なさが増してきて、どっぷりと引き込まれた。湯冷めしそうになった。

  • 向島を舞台にした小説の中で、向島を舞台にしようと取材している老小説家が、やはり若い女性と交流する筋の小説を書いているという、作中作のような構造を持っている。というより、登場するあらゆる人物はやはり作者荷風自身の像なのであって、正直なところ小説というより、随筆に近いといっていいのではないかと思う。「小説」とする必要性はよくわからないようにも思ったが、それはともかくとして、品格があってすらすらと余裕のある文体は、やはり当時の一流の作家の力量のなせるものだと感じた。恥ずかしいことに荷風先生の作品は他に読んでいないが、おそらく、私が内田百けん先生に対して抱いている感想と同様、この方に関しては小説よりも随筆を得意としているのではないかと感じた。
    また、物語の筋などより、舞台とする場所の選択やその描写にこそ力を入れることによって、劇的な展開に匹敵する感興を読者に起こさせることのできるという、荷風の理論も面白く感じた(理解が間違っているのかもしれないが)。

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著者プロフィール

永井荷風

一八七九(明治一二)年東京生まれ。一九〇三年より〇八年まで外遊。帰国後『あめりか物語』『ふらんす物語』(発禁)を発表。五九(昭和三四)年没。主な作品に『ぼく東綺譚』『断腸亭日乗』がある。

「2020年 『吉原の面影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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