珊瑚集 改版: 仏蘭西近代抒情詩選 (岩波文庫 緑 41-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003104163

感想・レビュー・書評

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  • 文語自由詩への訳出であるが、読み進めるうちに、その雅語的表現が鼻についてくる。
    好みもあろうが、やはり文語は定型詩こそ相応しいと思う。

  • 13/10/15、ブックオフで購入。

  • 言葉の響き一つ一つが美しい。素敵。

  • 流れるように紡がれる言葉
    一度に読んでしまうのがもったいなくて、あるものは音読し、あるものは読み終えてすぐ読み直した。
    いくつかフランス語原詩も眺めたが、フランス語と日本語の間に横たわる奏でられる言葉の響きの差に驚いた。
    彼の中で熟成された、彼なりのフランス詩が投影されたと思うと、とても感慨深い。

  • Amazon、¥525

  • 金沢のオヨヨ書房で買った。
    ゆっくり読んでいる。

  • フランス近代の詩人の作品から、詩を選び、
    日本語にうつした訳詩集。
    この中でも、特に気に入ったのは、
    「ましろの月」
    である。
     ましろの月は
     森にかゞやく。
    という表現と、
     やさしくも、果し知られぬ
     しづけさは、
     月の光の色に浸む
     夜の空より落ちかゞる。
    という表現が素敵だと思った。
    この詩は、全体的に、
    儚さのようなものが感じられ、
    素敵な詩だと思った。
    この本は全体的に見て、
    私が好きな雰囲気の詩が多かった。

  • わが魂などか忘れん、涼しき夏の
    晴れし朝に見たりしものを。
    小径の角、砂利を褥に
    みきくき屍。


    毒に蒸されて血は燃ゆる
    淫婦の如く脚空ざまに投出し
    此れ身よがしと心憎くも
    汗かく腹をひろげたり。


    照付くる日の光自然を肥す
    百倍のやしなひに
    凡てを自然に返すべく
    この屍を焼かんとす。


    青空は麗しき脊髄を
    咲く花かとも眺むれば、
    烈しき悪臭野草の上に
    人の息をも止むべし。


    青蠅の群翼を鳴らす腐りし腹より
    蛆虫の黒きかたまり湧出でて、
    濃き膿の如くどろどろと
    生ける襤褸をつたひて流る。


    此等のもの凡て寄せては返す波にして、
    鳴るや、響くや、揺らめくや。
    吹く風に五体はふくらみ
    生き肥ゆるかと疑まる。


    流るる水もまた風に似て
    天地怪しき楽をかなで、
    節づく動揺に篩の中なる
    穀物の粒の如くに舞狂へば、


    忘られし繪絹の面に
    ためらひ描く輪廓の、
    絵師は唯だ記憶をたどり筆を取る、
    形は消えし夢なれや。


    巖の彼方に恐るる牝犬。
    いらだつ眼に人をうかがひ、
    残せし肉を屍より
    再び噛まんと待構ふ。
    この不浄この腐敗にも似たらずや、
    されど時として君も亦。
    わが眼の星よ、わが性の日の光り。
    君等、わが天使、わが情熱よ。


    さなり形態の美よ、君もまた此の如けん。
    終焉の斎戒果てて、
    肥えし野草のかげに君は逝き
    白骨の中に苔むさば、其の時に、


    ああ美しき形態よ。接吻に、
    君をば噛まん地虫に語れ。
    分解されしわが愛の清き本質と形とを
    われは長くも保ちたりしと。



              『腐肉』/シヤアル・ボオドレエル



    流麗、しかし少し敷居の高い一冊かな。
    ボードレールに関しては堀口大学訳の『悪の華』とは違う印象をたのしめる。




  • 後で書きます。

  • 最後の押さえが、永井荷風です。ご存知の方はあまりおいでにならないかも知れませんね。荷風がフランス詩の訳詩集を出しただなんて、なんとなく「らしくない」感じがしますから。そんな訳で絶版です。困ったもんだ… ただ、私個人は『月下の一群』『海潮音』よりも、ちょっとだけ思い入れは薄い。荷風は詩の言葉を持っている人ではなく、やはり観察者、分析者であったのでしょう。

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著者プロフィール

東京生れ。高商付属外国語学校清語科中退。広津柳浪・福地源一郎に弟子入りし、ゾラに心酔して『地獄の花』などを著す。1903年より08年まで外遊。帰国して『あめりか物語』『ふらんす物語』(発禁)を発表し、文名を高める。1910年、慶應義塾文学科教授となり「三田文学」を創刊。その一方、花柳界に通いつめ、『腕くらべ』『つゆのあとさき』『濹東綺譚』などを著す。1952年、文化勲章受章。1917年から没年までの日記『断腸亭日乗』がある。

「2020年 『美しい日本語 荷風 Ⅲ 心の自由をまもる言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

永井荷風の作品

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