すみだ川・新橋夜話 他一篇 (岩波文庫 緑42-2)

  • 岩波書店 (1987年9月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784003104224

みんなの感想まとめ

男女の情の複雑さと、芸者の世界に生きる女性たちの苦悩を描いた作品は、時代背景を巧みに反映しながら、深い感情を呼び起こします。特に、金銭に翻弄される女性たちの悲惨な境遇が胸を打ち、同時に男性たちの悩みや...

感想・レビュー・書評

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  • 明治の終わりから昭和初期にかけた自分では見たこともないはずの東京の風景に対してやけに郷愁を感じてしまうことが不思議です。新奇な事物が次々と生まれる都会だけれど、小路を折れてみるとそこには昔から変わらぬ活の匂いが漂っている。街は未来に向けてどんどん進んで行くものの、多くの人々は心の内にある江戸や明治を忘れることが出来ない。

    そんな移ろいゆく東京の町を、冬の夕陽を浴びながら長吉君と一緒にあてどもなくさまよってみたい気分になるのでした。

  • 花柳界に興味を持てず、作品全体を通しては深く興味を惹かれなかった。深川の唄の時代の雰囲気や、すみだ川の世界観、新橋夜話のうち祝盃は◯
    何冊も読んでいくうちに好きになりそうな作家。

  • 永井荷風『すみだ川』読了。

    地味な話だけど、結構良かった。
    終わり方も良い。

  • いずれの作品も、芸者の世界を背景に、男女の情のおかしさやままならなさを描く。男性も傷つき、悩む。それは確かである。しかしやはり金で買われた女性の悲惨さは、同性であるだけに余計に胸をつく。同時代の男性である作者もそこには思いが至っていないことが筆致から感じ取れるが。女が自活しようと思うと芸者しか術がなかったこと、落ち度のない醜聞で朝鮮行きに身を落としたこと、若いぼんぼんに孕まされ雲隠れされそのまま人知れず流産したこと、軽く流されるディティールの一つ一つに女の苦しさが詰まっている。

  • 芸妓を描いた新橋夜話が余韻を残す切なさがあってよい。
    男女の刹那的な関係の美しさを読みたい方は、ぜひ。

  • 深川の唄
    江戸の情緒に対する思慕と、急速に西洋化していく日本社会への諦念とが、深川ー山手の対比の上に見事に投影されている。

    すみだ川
    失われていく墨田川周辺の情緒あふれる景観に対する愛惜を、長吉が幼馴染お糸を恋慕う物語に込めている。p.93の「いそがしき世は」からはじまる一文は、荷風屈指の名文ではないか。

  •  3つ入っている。
    「深川の唄」「すみだ川」は1909(明治42)年に発表され、これは荷風30歳、4年間のアメリカ、1年のフランス滞在を終えて帰国し『あめりか物語』『ふらんす物語』が出版された辺りである(『ふらんす物語』はただちに発禁)。「新橋夜話」は短編集で、1912(大正元)年にいったん出版されたのちに収録作に異動があったものらしい。最終的には1909(明治42)年から1912(大正元)年にかけての掌編が収められている。
     いずれも荷風の若い頃の作品だ。「すみだ川」は特に若々しい清新さが窺える佳品。「新橋夜話」は主に芸者の登場する花柳小説が中心となっていて、この界隈への荷風の強いこだわりが早くも現れている。なるほどモーパッサンの影響を受けているのかも知れないコントふうの作品や、一幅のスケッチのような作品が入っていて、味わい深く印象的なものも多かった。これらの中では比較的後年のものの方が良いと思った。
     永井荷風の小説世界は叙情的であるが、たとえば佐藤春夫のような薄っぺらさは無く、ほどほどの深まりを見せ、端正なたたずまいを見せる。情緒が浮き彫りとなるものの激情までには至らないおとなしさは、日本的な情緒であるのかもしれない。
     音楽で言うと、地味で目立たないが一つ一つ傾聴するほどに味わいの深い、そして全体としてあくまで均整の取れたサウンドを持つサン=サーンスの作風に似ていると思いついた。もっとも荷風自身はワーグナーやシューマンなど、ドイツ音楽を好んだように思える。
     一応ロマンチックな世界を展開する文学フィールドは、やはり「強い堅固な主体」の維持装置に支えられているに違いなく、そこでは外部の異質性を排除する防衛機制も当然働く。荷風が江戸文化の香りを残す明治前半の雰囲気を愛し、なだれ込んでくる近代化の波を批判し続けて、失われゆく江戸風の情緒をはかなんだのも、こうした自己防衛機制によるものだろう。
     同じように江戸情緒を溺愛し昭和初期においては巷間にあってもはや時代遅れの様相を呈してさえなお、自分の愛する世界を描き続けたという点で、泉鏡花(1873-1939)が想起される。永井荷風(1879-1959)と鏡花、この両者の違いを検討してみるのも面白いかも知れない。
     本書に収められているような瑞々しい愛すべき小品たちが、私は好きだ。

  • 新橋夜話 は花柳界との交わりがある人間の心情のキビを率直に新鮮に描いており、とても魅力的だ。夜の侘しさ、寂しさ、不安、心に抱えてもなかなか文章にすることが難しいことをセンス良く描き出しているのがよくわかる。耽美派などとひとくくりにせず、この作者が孤高の存在なのがよくわかった。

  • 「すみだ川」の状況は一葉の「たけくらべ」とよく似ている。比較すると面白いかも。

    「新橋夜話」は1ダースの寓話。

    ①掛取り
    銀座の「服部」の前で都電に乗る・・・なんて、やってみたいなあ。電車やバスで行き先違いに乗る、というのはよくやる口なので、このコの二度とお使いに行きたくない気持ちはよくわかる。 ^^;

    ②色男
    芝居の和事だと、断然、江戸の男より上方の男に軍配が上がりますが・・・銀座唐物屋の若旦那の京さんってのがなかなか素敵に困ったおヒトで。女の指輪が抜けなくなって貰っちゃう、なんて。ねえ。「天賞堂」ってこんなに前からあったのね・・・鉄道模型店だと思っていました。

    ③風邪ごこち
    これが一番好き。
    「2月の余寒の夕まぐれ」に、微熱気味の増吉姐さんと旦那の1日。・・・「早かったでしょう。」と小声にいいながら男の肩の上に身体を載せかけた。なんかホッコリ、いいねえ。

    ④名花
    湯島の天麩羅屋の女中お君が芸者小鍛治に成り上がる話。侠気のある姐さんだい。

    ⑤松葉巴
    若いときの恋を忘れられなずに哥沢節へ託す。
    辛いのは遊女側だけでないようで。

    ⑥五月闇
    旦那の意地悪で職質に遭うわ、評判は下がるわ。
    悲惨な最後。でも多分、これが一番リアル。

    ⑦浅瀬 ⑧牡丹の客
    ⑦は歓迎会幹事の雑談。⑧は牡丹見物。しっこしがない~

    ⑨短夜⑩昼すぎ
    ⑨は男女の、⑩主客の対話。これ、ペアで朗読すると面白そう。

    ⑪見果てぬ夢
    「まとまった金をやってもぐずぐずと飲んでしまうだろう」と主人に思われる、車夫の助造の行く末や、いかに。ある意味、究極の自由人?

    ⑫祝盃
    昔、手を出した女中が遠隔地で幸せになっているのを嬉しく思う。無責任っちゃあこの上なく無責任だけど、この時代の旦那方の倫理観はこんなもんでしょうなあ。

  • すみだ川だけ読んでみた。まだ読めない…。

  • 明治から大正にかけての東京が忍ばれました。

  • 深川の唄
    すみだ川
    新橋夜話

  • 11/10/29、神保町・澤口書店で購入。(古本)

  • 読み終わったけど、すでにいま読み返したい。

    活き活きとした江戸、ではなく、滅んでいく江戸の薫り。

  • 泣けるせつない話。どうしようもない人間の心象風景、気持ち裏腹な台詞が、荷風の真骨頂。

  • 冒頭の一篇である「深川の唄」は最初の4行に惹きつけられた。100年前に書かれたのに、主人公の感覚、視線のなんという「今っぽさ」。都市を徘徊する「おひとりさま」エッセイの嚆矢とも言える一篇。全編に描かれる明治の風俗には興趣が尽きぬが、その視点はあくまで現代的。主人公たちを一歩ひいたところから描いているような、「冷めた好奇心」とでも言いたい視線がそこにある。。ガブのお気に入りは「見果てぬ夢」。

  • 新橋夜話内の「風邪ごこち」と「松葉巴」がしみじみと好き

  • 近代文学館名著複刻全集

  • 松葉巴が特に好き。

  •  情緒溢れる短いお話が沢山収められています。とても美しい文章で、読むと穏やかに興奮します。

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著者プロフィール

(ながい・かふう)1879-1959
東京市の現・文京区小石川生まれ。官僚のち実業家の父・久一郎の長男で、早くから江戸・東京の落語、歌舞伎、戯作などに親しむ。文学を志し、広津柳浪に師事して作家活動を始めるが、父の意向で実業を学ぶため1903年からアメリカ、フランスに渡る。帰国後その体験をもとに『あめりか物語』『ふらんす物語』を上梓、注目を集める。実業家となることなく、1910年慶應義塾大学の教授に就任、「三田文学」を創刊。1916年に大学を辞してからは、『濹東綺譚』をはじめとする作品のみならず、実生活も江戸戯作者のごときであった。そのさまは1917年以降の日記『断腸亭日乗』に詳しい。

「2024年 『小説集 蔦屋重三郎の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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